ASCII Power Review 第269回
AFは上位モデル譲りの被写体検出に3Dトラッキングも搭載です
14万円で買えるニコンの最新ミラーレスカメラ「Z50Ⅱ」実写レビュー
2024年12月03日 10時00分更新
ニコンがAPS-Cミラーレス機の新製品「Z50Ⅱ」を12月13日に発売する。Zマウント初のAPS-C機だった前モデル「Z50」が2019年。その後クラシカルデザインの「Zfc」(2021年)にVlog向け「Z30」(2022年)と続いたが、フルサイズと比べると製品サイクルは少々のんびりだ。
初心者向けカメラではあるが、今回実に5年振りのフルモデルチェンジということで期待しているニコンファンも多いはず。発売前の試作機をニコンから借用できたので前モデルとの違いも含めチェックしていこう。
ボディデザインは最新のZ
背面ディスプレーは縦位置表示可能に
「Z50Ⅱ」の量販店価格はボディー単体で14万5200円、「NIKKOR Z DX 16-50mm F3.5-6.3」とのレンズキットは16万6100円。「NIKKOR Z DX 50-250mm F4.5-6.3」をくわえたダブルズームキットが19万8000円。さらに「NIKKOR Z DX 18-140mm F3.5-6.3」とのレンズキットも19万9100円で用意されている。
ボディーデザインに大きな変化はないが、スペックでみるとサイズは一回り大きくなっている。
ただグリップやEVF接眼部の形状が改良され、おかげで構えてみるとサイズアップは特に気にならず、APS-C機らしいコンパクトさは保たれている。
上面には「ピクチャーコントロール」を呼び出せるボタンが新設されたが、それ以外の配置は変わらずだ。シャッターボタン後の3つのボタン(動画・ISO・露出補正)がEVFを覗きながら操作すると区別が付きにくく、できればボタンごとに突起と付けるなどの工夫が欲しいところである。
「ピクチャーコントロール」は風景やポートレートなどのシーン向けや、セピアやブリーチなどのフィルター系が計31種類(オートを含む)プリセットで用意され、さらに自身でカスタムしたり、専用サイト「Nikon Imaging Cloud」からダウンロードも可能。
背面の操作ボタル類の配置は前モデルから一新されているが、これは「Z8」や「Z6Ⅲ」になど最新のZシリーズに合わせたからだろう。フルサイズのサブ機として使いたいというニーズもよく聞くので、併用したときに操作系が近いのは有難い。
EVFは236万ドットと変わらないが、輝度が2倍に向上した。従来から定評のあるクリアな光学系と合わせて視認性は優秀に感じられた。
背面液晶はチルト式からバリアングルに変更され、縦位置にすると縦向きに表示されるようになった。ただ不意に表示が切り替わってしまうこと(特に再生時)もあり、気になるようなら設定でオフにすることもできる。
端子類ではUSBがようやくType-Cに変更され、充電にくわえ給電にも対応した。またヘットフォン端子はリモートコード端子も兼ねていて、同時に発売される「MC-DC3」(4400円)が使用できる。
内蔵ストロボも引き続き搭載。最近ではあまり使うことは無いかもしれないが、マニュアル発光も可能なので外部ストロボを同調させるといったマイアックな使い方もできる。
バッテリーは少しだけ容量がアップした「EN-EL25a」になり、実際にはRAW+JPEGで270カット540枚したあたりで残量警告マークが出た。ボディーサイズからすると十分なスタミナだ。なお前モデルのバッテリーとも互換性があり、多少撮影可能枚数は減少するが使用可能だ。
画素数据え置きだが
APS-Cとして満足の画質
撮像素子は2151万画素と据え置き。現行のライバル機と比べると物足りなく感じるかもしれないが、一眼レフ時代のAPS-Cフラッグシップ機「D500」から受け継がれた撮像素子で、撮った写真を見てもZマウントレンズによるキレのある解像感に最新の画像エンジンによるヌケの良い発色や豊かな階調再現など画質的には文句なし。
使用レンズ「NIKKOR Z DX 16-50mm F3.5-6.3」・焦点距離16mm・絞りF3.5・シャッタースピード1/800秒・ISO100。
(以下記載ない場合以下設定は共通。JPEG FINEサイズL・ホワイトバランスオート・ピクチャーコントロールオート・アクティブDライティングオフ・ヴィネットコントロール標準・回折補正オン)
高感度も優秀で、ISO6400までは高感度であることを感じさせず、ISO12800を超えたあたりからノイズが見えるがISO25600でも常用範囲内。高解像度フルサイズ機と同等の画質といえる。
高感度で撮影した写真の一部を拡大して比較。左上からISO1600・ISO3200・ISO6400・ISO12800・ISO25600・ISO51200・以下拡張感度ISO102400・ISO204800。ノイズ処理は標準で撮影。
このように画素数こそ控えめだがトータルバランスがよく、個人的には現状のAPS-C機のなかでは一番好みの画質だ。
ただ手ブレ補正はボディー内への搭載は見送られ、レンズに頼ることになる。キットレンズの「NIKKOR Z DX 16-50mm F3.5-6.3」では広角側で1/2秒、望遠側で1/8秒が安全圏といったところ。とはいえZマウントは手ブレ補正非搭載のレンズが多いので、その場合は高感度画質をいかし、できるだけ速いシャッタースピードでの撮影を心掛けた方がいいだろう。
AFは上位モデル譲りの被写体検出に
3Dトラッキングも搭載
大幅に進化したのが動体撮影性能だ。AFは「被写体検出」や「3Dトラッキング」などの追随機能を強化。連写は電子シャッターで画質がJPEG NORMAL Lサイズに限定されるが、最高秒30コマにシャッター直前にさかのぼって記録する「プリキャプチャー」が可能になっている。
実際に飛ぶ鳥を撮影してみても予想以上にしっかり追随してくれていた。さすがに上位モデル「Z9/8」と比べると検出や追随がワンテンポ遅れることや電子シャッターの動体歪みもあるが、このクラスとしては十分満足できる動体撮影性能だ。
飛行中の鳥を撮影。途中でピントを外すこともあったが、エントリー機とは思えない動体撮影性能だった。使用レンズ「NIKKOR Z DX 50-250mm F4.5-6.3」・焦点距離250mm・絞りF6.3・シャッタースピード1/2000秒・ISO360・JPEG NORMAL。
電子シャッターのため背景の建物が歪んでいるが、気になるほどではない。使用レンズ「NIKKOR Z DX 50-250mm F4.5-6.3」・焦点距離250mm・絞りF6.3・シャッタースピード1/2000秒・ISO14000・JPEG NORMAL。
飛び立つ瞬間もプリチャプチャーなら楽々撮影できる。ただしバッテリー消費は激しめ。使用レンズ「NIKKOR Z DX 50-250mm F4.5-6.3」・焦点距離80mm・絞りF10・シャッタースピード1/2000秒・ISO900・JPEG NORMAL。
高速連写&プリチャプチャーではJPEG NORMALになるが画質的には不満は感じない。使用レンズ「NIKKOR Z DX 50-250mm F4.5-6.3」・焦点距離250mm・絞りF8・シャッタースピード1/2000秒・ISO800・JPEG NORMAL。
豊富なフルサイズ用レンズをつけて撮ってみた
「NIKKOR Z 35mmF1.4」
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