厚生労働省は今年4月18日、「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」を開き、医療事故調査委員会(医療事故調)の取りまとめ案を提示しました。
日本内科学会、日本外科学会、日本病理学会、日本法医学会は2004年、診療行為に関連した患者死亡事故が起きた場合、中立的専門機関に届け出る制度の創設を求めて共同声明を発表しました。それを機に始まったのが、医療事故の原因究明と再発防止を目的とした医療事故調の創設議論です。ところが、議論は迷走を極めました。
2008年には厚労省が「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」をまとめましたが、医療者から大きな反発を受けた上、2009年に政権が自民党から民主党に交代して頓挫。民主党も同年に対抗案を示しましたが、政権に就いて以降は後期高齢者医療制度の廃止や年金問題、東日本大震災などへの対応を優先したため、目立った動きがなくなっていました。
今回それが具体化され、医療事故調の枠組みが示されたわけです。取りまとめ案は同日の検討部会で大筋了承されました。医療事故の刑事・民事事件化が医療崩壊の大きな一因となってきた中、遅きに失した感は否めませんが、ようやく光明が見えてきたといえるでしょう。
「第三者機関中心」から「院内事故調中心」に
取りまとめ案をみると、厚労省がこれまでの議論の進め方の失敗から、様々な立場の意見をどう反映すべきかに苦慮した跡がうかがえます(表1)。その一つが、「医療事故の調査をどこに担わせるか」です。
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