「修理する権利」が制限されると、リーズナブルに修理できなかったり、緊急時に迅速に直せなかったりします。「じゃあ新品を買えばいい」と考えることもできますが、それで本当にいいのか? と考えさせられる本です。
「修理する権利:使いつづける自由へ」(著:アーロン・パーザナウスキー、訳:西村伸泰、青土社)という本を読み進めています。なぜ修理が必要なのか、人間がモノを修理してきた歴史、修理するよりも買い替える方がいいと思わせる手法が登場した背景、修理に関わる知的財産や法律などが解説された本です。
最近、みなさんは何か修理しましたか。自分で手を動かしたものでも、修理業者に持ち込んだものでも構いません。私はデパートの時計修理コーナーで、腕時計の電池交換と内部のクリーニングをお願いしました(これも広義の修理です)。しまい込んでいた腕時計が復活したことで、腕時計を新たに購入するよりも安価に腕時計が使えるようになりました。
このように、修理の第一のメリットは新品を買うよりも安いということです。また、修理できるということは、捨てる前にまだ使えるものが増えるということでもあり、二次流通(中古品)の市場を活性化させます。また、修理のために製品について調べ、知識を身に付けることは豊かな体験であるとも著者は訴えています。
修理は、新品を製造するよりも環境負荷が軽減できます。また、今のところリサイクルよりも修理の方が経済的で環境にも優しいと著者は主張します。「それはそうだろうな」と思う一方で、この本では新品を製造するための環境負荷の大きさと重さが生々しく描かれています。
修理する代わりに新品を手に取ることで、資源採掘でどのような環境汚染が発生し、どれだけの人がその環境汚染に苦しんでいるか。資源を採掘する地域が経済的な恩恵を受けられずに、どのような厳しい環境に置かれているか。そんなエピソードを読んでいると、考えなしに新品を購入することに罪悪感さえ覚えます。
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