大切なものを失ったことをきっかけにして絆を築いた彼らは、もしもう一度やり直せるとしたら何を選ぶだろう?
きっと彼は、彼女との出会いを失ったとしても、彼女が望む世界を守ろうとするのでしょう。
それが叶わないと知っているから、自分ができる精一杯の思いで彼女との関係性を築き続けています。
彼の行動動機は、同情や庇護欲、奉仕欲みたいな「大人の役目」なのかもしれないけれど、実際に子どもと暮らすのは大変なことばかりです。一人で生きる方が、自堕落にはなるにせよ楽なものです。
お互いの心身を守りつつ、衣食足りることはルンタッタ、もとい礼節を育む基本になります。
礼節は対人関係の基礎を育み、生き続けるための確率を上げます。
そんな生活を築く礎を作ることができたのも、彼がこの世界で彼女と共に生き抜く覚悟を決めた結果ということなのでしょう。
終盤に彼は、彼女と出会えたことを感謝します。
戻らない過去を嘆くよりも、変えられる未来に向かって共に歩く事を喜べる、そんな彼の誠実さにどこまでも胸を打たれました。
そして、一読者として、彼に恥じない大人になりたいと決意するのです。
さて、この物語は一旦終幕となり、彼らの生活を伺う手段は喪失しました。
ですが読者と本作の絆は創出されたのです。
この絆はきっと、再びこの世界へ続く扉の鍵になるでしょう。
壊さずの解体屋?
解体屋なのに?
そんな疑問を抱きつつ読み進め、納得。
いやあ、実に日本人的というか、日本の人が転生してきた、という感じがして、何故か少し嬉しくなってしまいました。
そして、世界観も独特というか、一見洋風なファンタジーと思いきや種族の名前や、その特徴的な姿や行いからでしょうか、無国籍なメルヘンさを感じました。
これもまた、この作品の魅力でしょう。
そして最後。
人は簡単に変われない。でも変わろうとしている限り、何か後押しがあれば変われる。
だから、その変化のきっかけを与えてくれた存在への感謝、思いが温かい。
不思議な世界の生活ファンタジーを読みたい方、おすすめです。
ああ、この物語が好きです。
様々な異世界ファンタジーがあるけど、僕はこの物語がとても愛おしく感じます。「殺さずの解体屋」って、ちょっとどっきりするタイトルだったので、少し構えて読み始めましたが、とても好きになりました。
そして今日、第15話を拝読させて頂き、泣きそうになってこのレビューを書いてます。
異世界ファンタジーだけど様々な要素を欲張る事無く、すごくシンプルでまっすぐで、素朴でたまらなくほっこりして、優しくて温かくて愛おしい、そんな物語です。
僕は小説というものは、どんな世界を書こうと、どんなストーリーを書こうと、どんなキャラクターが現れようと、大事な事はもっと別な所にあると思っています。
それは「読み手の心に触れる事」
お勧め致します。
きっと、きっと、皆様の心にこの物語は触れます、震えます。穏やかで優しいこの世界、是非、是非、楽しまれて下さい。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)