この物語は、ファンタジーを織り交ぜた寓話のような短編です。
けれど描かれているのは、育児や浮気、子どもへの愛といった大きなテーマから、誰もが抱く素朴な願いのようなものまで——。
幅広く、普遍的で、そして切実な「生きづらさ」を詰め込んだ作品でした。
SNSを見ていると、夫の不貞や、子どもを母乳で育てるかどうかといった“理不尽”や“正しさ”が押し付けられ、それに疲弊している人たちをよく見かけます。
しかも、そうしたものから完全に逃げ切ることはできず、結局のところ、頑張って耐えている人ばかりなのだと思います。
多かれ少なかれ、状況も程度も違えど、みんなが何かを我慢していて、だからこそ弱音すら吐きづらい——そんな時代です。
そんな中で、この物語が深く刺さりました。
裏切られ、寒風にさらされながらも、ただ必死で卵を抱きしめる主人公の姿に、どうしようもなく心を動かされます。
そして願わずにはいられません。
——いつかまた、私たちが「空」へ羽ばたける日が来ることを。
ままならないこの世界で、きっとこういった物語こそが必要なのだと、強く感じさせてくれる作品でした。
おすすめです。