読後、悶絶しました。
だって、だって、だって。
「か」から始まるあの言葉で作者を誉めたくなってしまうのです。
だけど、もしそんなことをしたら……。
困る。万が一にも作者が食べられちゃったら、なにより愛読者の私が困る(笑)
ああ、でも言いたい、誉めちぎりたい。「か」から始まるあの言葉で~!!
……と。
それくらい、面白い作品です。
着眼点の面白さ、デザイン性、奥行きのある展開、どれをとっても秀逸。
なによりバランス感覚が優れて良い作品で、結果、とても品の良いホラー短編に仕上がっていると思います。
え? 大袈裟ですって?
まあ、まあ。騙されたと思って読んでみて欲しいです。
だけど約束してください。
「か」から始まるあの言葉だけは決して口にしないことを……。
まあ、オブジェクトクラスはketerでしょうな……。
主人公は、なにやら複雑な事情を抱えております。
日曜は、おそらく友達とも会わずに、母親に連れられてあちこち回っているそうです。
「おやすみプンプン」だね……。
そしてそんな主人公は、『神』という言葉を嫌うようになります。
そんな時に現れたのが、この、『神を咀嚼する入れ歯』というSPCなんですがね。
……ほんと、なんで入れ歯なんだろう?
そいつのいうことを聞くと、『神』を食ってくれるんだそうです。
しかし、まあ、『神』って名詞は漠然としておりますからな。
こやつが食うのは、『神』と名前がつくものです。
本当にそうなんですよ。
地名で言ったら『神戸』『神田』『神保町』まあ、『神楽坂』もそうなのでしょうな。
言葉で言ったら、『神展開』『神ムーブ』『神対応』などです。
はては、犬がひっくり返ったらそれも食われちゃうんだそうですよ。
人命もです。『神崎くん』『神山くん』もアウト。三代目山の神の『神野大地』くんもアウトでしょうな。
こんな、理不尽な相手にマークされてしまった主人公。さて、どうやってこの難局を乗り越えるのでしょうか。
……
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……
ええ、さて、
ところで、現在カヌレ先生の、何かのスーパーバイザーを請け負わせていただいております私から、みなさまに重大発表がございます。
この物語の続編もカヌレ先生は考えており、明日にも投稿される予定でございます。
この物語から、主人公は奇跡的な生還を果たし、
奇跡的に『神経』と『精神』は守ったものの、
『アキレス腱』『仙骨』『喉仏』を失ってしまった主人公。
もはや立ち上がれず、声も出せません。
世界では、フランスがそのまま姿を消してイギリスが統合し、
地味なところで数字からは、『八百万』が消え申した。
どうも、「やおよろず」という言葉を変換すると八百万になるのだとか。
こんな姿になっても、「オーマイガ!」という事もできず、
「ガッデム!」もアウト。
「ホーリーシット」は精査段階でしたが、まあ、アウト。
「最悪だ!!」も、「最悪」が、「災悪」と変換されて、
災いの悪ならそれはもう神だろう!という理屈でアウト。
まあどのみち喉仏のない主人公は喋れない!!
こんな理不尽2割マシの神作品を投稿されるご予定です!
先生の新作にご期待ください!
突如として遭遇してしまった『入れ歯』の怪物……『神』にまつわる言葉が概念ごと食われていく描写が秀逸で、少しずつにじり寄ってくる恐怖に背筋が冷えました。
最初は不遇な少年が「救われる」ところから入るのが、物語として巧妙を感じる部分。まさに「上げて落とす」ことで生じるギャップが、明に恐怖感へと繋がっていきましたから……!
個人的に怪物を『入れ歯』という想像しやすいビジュアルに持ってきてくださっているのが、更に面白く感じるところ。頭に思い浮かべやすく、そして実際、なんだか単品で見ると怖かったりするんですよね、『入れ歯』……! 分かりやすさと納得が両立する、面白い試行!
本当に多くの「神」を含む言葉が食われていくので、たまに「その言葉も食われるんかい!」と笑ってしまうこともあるのが、また緩急の使い方が上手く感じます。
食われた言葉によっては、県の成り立ちなどにも大きな影響が出たり、バタフライエフェクト的な作為にまで触れられて「なるほど、そうなるかも……!」と思えるのは、興味深さすらあります。
約6000字の短編ながら、多くの驚きを与えてくれる、言語を駆使した見事なホラー。是非とも読んで頂いて、この驚きを共有したいです……!
どうなるのだろうと、思うのです。
本作を読んでいる時には、ずっとその考えが頭の隅にありました。
小学校からの帰り道で遭った『入れ歯』みたいなモノ。
その問いかけに〝うん、いいよ〟と答えた僕。さあ、僕はこのあと大変な事態に陥ります。
ここまで読み進めた読者の方は、本作の思考の迷路に放り込まれますね。きっとね。
〝どうなる? どうする?〟と文章を追いながらもすっかり惑うことになると思います。
でもそれはきっと、楽しい惑いです。
どうぞ、存分に不安に陥りましょう。
不条理と不安に彩られたホラー作品である本作。
ただし一番怖いのは作者である黒澤カヌレさんの発想、かもしれません。
小学6年生の小林ユキオはある日、「ねえ、君の『神様』食べさせて」と言ってくる、謎の入れ歯と出会う。
信仰心の強い両親にうんざりしていたユキオは、神様なんて消えてしまえばいいと考え、「うん、いいよ」と返答してしまう。
はじめは両親の宗教的な行為に付き合わなくてよくなったため、喜んでいたユキオだが、神に関することがどんどん消えていくうちに、まずいと焦りだし、あの入れ歯をなんとかしようと考える……。
だいたい、そんなかんじの物語です。
最初の方は正直全然怖くなかったんですけど、神という字がついたものがどんどんなくなっていくにつれ、じわりじわりと恐怖を感じるようになっていきました。
まさかこれほど恐ろしいことになるとは……。
でも、一番恐ろしいのは、こんなすごい物語を思いついてしまう、この作者だと思います。
終盤にはそうきたか、と唸らされるような展開もあり、さすがは黒澤カヌレさんといったかんじです。
文章から緊迫感が伝わってきて、どうやってこの入れ歯に対処するか、主人公と一緒に考えさせられました。
今までにない、とても斬新なホラー作品だと思います。是非この小説を読んで、衝撃を受けてください。