第4話 ラノベ入りUSB事件
話を聞いていなかったわたしのために透子ちゃんはもう一度、より詳細にことのあらましを教えてくれた。
透子ちゃんが部長を務める文芸部には透子ちゃん含め部員が四人。
透子ちゃんと同学年、つまり三年女子生徒の
今、文芸部では部誌に掲載する小説原稿の締め切りが明後日にあり、部員それぞれが一万字の小説を一作提出することがノルマだった。未提出の部員は残るところ二人。三年女子生徒の高坂さんと、二年男子生徒の安岐くんだ。
そんななか今日の放課後、透子ちゃんが部室へ行くとUSBを持っている安岐くんを発見。文芸部には部員ならば誰でもアクセス可能の共有クラウドがある。今までも今回も部員全員がクラウドに原稿を提出していたのだが、透子ちゃんはもしかしてと思い「そのUSB、部誌の原稿ですか?」と安岐くんに問うた。すると安岐くんは肯定。
部誌を編集するのは部長である透子ちゃんの仕事。透子ちゃんは安岐くんのUSBを預かろうとする。しかしそこで、「そういえばトーコ。さっきイワ先が職員室来いって呼んでたよ」と高坂さん。
「でしたら天音先輩。先輩の机にUSBを置いておくので用事が終わり次第、確認をお願いしてもいいですか?」
安岐くんは透子ちゃんの席の机にUSBを置き、そう提案した。透子ちゃんは了承し、職員室へ。
用事を終え、部室へ戻ると透子ちゃんの机には置いてもらっていたはずのUSBがなくなっていた。
安岐くんは確かに先輩の机に置いたはずだと証言。それは透子ちゃんもしっかりと確認済み。だとしたら盗まれた? けれど部員全員、透子ちゃんが部室に帰ってくるまでUSBがなくなっていたことに気づいていなかった。
しかもUSBがなくなると発覚するまでの間、部室には透子ちゃんしか出入りしておらず、その部室内には3人も部員がいた。USBは衆人環視のもとにあり、いわば密室状態だったわけだ。
にもかかわらず、USBは盗まれた。音もなく目撃者もなく、USBは忽然と消えた。当然、場は大混乱。
盗まれた張本人である安岐くんは、バックアップもしてあるし犯人探しには及ばないという。しかし、USBが突如自然になくなったわけもなく犯人は間違いなくこの部員の中にいる。そんな状態を部長であり責任感の強い、しっかりものの透子ちゃんが見過ごせるわけもない。
そういうわけで透子ちゃんは、数々の校内の謎を華麗に解いてきた実績のある『名探偵とその助手』。
つまり葵とわたしに犯人探しを依頼しに来たというわけなのだ。
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