概要
永遠に繰り返す、春
文芸部員である多治見妃華は、今日も部室でひとり本を読んで過ごす。
憧れの部長である秋山陽翔に認められたい一心で詩を綴る彼女だったが、ある日起こった事件から人生が狂いだす。
憧れの部長である秋山陽翔に認められたい一心で詩を綴る彼女だったが、ある日起こった事件から人生が狂いだす。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!荒れ狂う風に引き裂かれ、心掻き乱される
文芸部員の妃華は、部室でひとり本を開く。そこは部員同士があまり干渉しない、静かな場所だった。
でも中には妃華に話しかける存在がいて、それによって彼女は密かに好意や憧れを抱く。特に後者については、次第に抑えきれなくなり、どうしようもなく心掻き乱され……
吐き出すものがなくなっても、湧き出るものを外に出さずにはいられない。
妃華の認めてもらいたい欲求も、二人だったからこその衝撃も、衝動も。説得力があったし、読んでいて私の情緒も刺し貫かれました。
醜い汚物というけれど、私はそれを生きるために必要なとても大事なものだと思うし、祝福せずにはいられません。
春が巡ってくるたびに、引き裂き引…続きを読む - ★★★ Excellent!!!時効のない罪は永遠に――
三月の卒業の頃、17歳の主人公・多治見妃華は忘れることのない罪を犯します。
相手に思いを託した部員の手紙に手をかけてしまうのです。
両手に刻んだ罪悪感。
とめどなく流した感情と涙。
記憶に棲まうあの時のにおい。
心の奥底に眠らせて誰にも打ち明けないまま時を過ごしたくなる彼女の気持ちにどこか共感を覚えます。また、冬眠を経た記憶が、春の訪れとともによみがえる再燃的な印象を受けます。
うららかな色彩に落とす影が対比的かつ周期的で、心情の再現性を想起させる文体と展開方法に作者様の器量を感じます。
巡る季節――
今年もまた光と影が心にわだかまるのか。
春がなくならないように、罪もまた永遠に。