鵺を見る

読了したので書きます。

タイトル通りに『鵺』が主軸になっている作品です。各章のネームも鵺を構成する動物になぞらえて設定されており、多くを語らないところがこれまた興味を惹きます。

しかも、舞台は夜の山。何かあると思わせるに十分すぎるほどに恐怖を掻き立てます。

何処までが現実で、何処からが幻想なのか。未だ神秘が根付く世界は人知を超えたところにある。

付けた紹介の意味も最後まで読んでいただければ自ずと分かっていただけると思います。

待っていますよ。鵺は…。

　ふとした折に思い出す出来事は、きっと何方にもおありでしょう。幼い頃にした強烈な体験は時間と言う熟成を経て、まろやかで淡く優しい色合いになっているかもしれません。

　ですが、このお話では。
　いつまでも、思い出す度にくっきりと。

　褪せる事のない恐怖を、是非。

各章の題目が鵺のパーツになっておりとてもクール。

鵺は有名な怪異であるが、掴みどころがなく得体の知れないもの、を表する言葉としても使われたりもしていたかと思います。

今作の怪異以外にも、鵺といえるような怪異にこのお寺さんのご兄弟たちは遭遇しているのではないだろうか。

山の中の廃屋って、好奇心をくすぐります。ましてや、子供であれば、冒険心をわしづかみにされ、探検し、秘密基地にし、親の目を盗んではたびたび潜伏したりするでしょう。

明らかに荒れ果てていたその残骸へと、ある日、住民と称する存在に案内されたなら？　こっそりのぞいた襖の奥には誰かが臥せっており、ただただ不穏な気配がうずまいていたとしたら？

気配だけが密度を増し、読み手の想像力を掻き立てていきます。山の中で鵺の声を聴くのは、マジで怖いですって。

うっそうとした山中にあるとある場所。
明るい日差しの中では、子どもがドキドキする秘密の場所……が、茂みに濳影をひとたび踏んでしまうと、一体どうなるのか？

この作品から漂ってくるのは、緑や木の香りだけでなく、どこか闇を漂わせる「薫り」に満ちています。

これ以上は踏み入れてはいけない領域に、狭間にふと足を踏み入れた主人公を覆うのは、一体なんだったのだろうか？

あまねく全てを覆いつくすそれは？　ぜひ一度、こちら側の世界をご覧あれ……鵺が覆う世界を……

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（286文字）

山下の廃屋で恐ろしくも悲しい人の性を見る
幽明境を異にすれば
その狭間で鵺は鳴くだろう

それを目撃したものは児童。
後に語られるのは悲劇。
作為したのは、人か人以外か。

静謐でいて沈鬱な語り口は、ときに比類なく美しく、悍ましい。
物語の中に折に触れて響く音。
その音像が読む者を幽玄な世界へ誘い、取り込める。

読書による幻想的な恐怖体験がここにあります。
浸ってみてはいかがでしょうか？
とても……楽しいですよ？

山中の一軒家。それはただの廃屋か呪われた迷い家か異界の入口か。
家が朽ちていくほどに怨念は深くなるのか･･･
鵺は･･･怖い