第8話 夜の通り雨

 移り代わり行く季節の中で

命を失い空へと登って行く魂を私は知っている


 この時が流れる

この時間に生まれ来る

大切な産声も知っている


 力の限り泣いている声は

悲しみではなく喜びを与えてくれる


 それは産婦の疲れ果てても見せる笑顔を見れば

誰も否定することを許されない生命を歌う笑顔


 多くの人が喜びの涙を流している

その幸せの中で生まれることができたなら

天空に舞い上がる前に

それ以上に惜しまれる生き方をしたい


 降り始めた雨は通り雨だと思っていたが

落雷がゼウスの怒りのように空を切り裂き

轟音が耳を襲う


 これから暖かな季節になろうとしているのに

雨の日の夜の冷たさに震え

空が白く光る天空へ

大地を揺るがすような轟音に

私は喜びよりも悲しみの顔を雨に晒してみれば

強く激しい雨が心を洗い

いつの日にかこの人生を

美しく綾どれるだろうと

一瞬の強い光と轟音に誓いながら手を合わせてみる

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