かつて祖母が語った「琴線に触れる」という言葉。その時確かに祖母と私の間には双方向の会話と認識があり、お互いがそこにいた。
けれど、認知症というものは、それを奪ってしまう。その病が誰にとって残酷なのか、それを協議することは難しい。ただかつて双方向であったものは一方通行になり、そして、ここにいるはずの私は、そこからいなくなる。
それを思うと、この主人公が何を思うのか、それを考えるだけで切なくなるのです。
それでも、かつての思い出を大切に。
今は今ではない時間の中へ行ってしまった人へ。
優しさと、もどかしさと、切なさがぎゅっと詰まっていました。
ぜひ、ご一読ください。