概要
手術室での医療のお仕事の話を緻密に描きながらも、どこかコミカルに語られる作品です。
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『サージカルキャップとマスクの間は、絶対領域だ』
……これは救急部に所属する、人を観察するのが趣味な、レミ・コスト医師の迷言である。
そんな彼には思い出せない過去がある。
8年前に起きた『大災害』。この時の記憶がすっぽり抜け落ちてしまっているのだ。
自分がどこで何をしていたのか。
その時何が起きたのか。
8年経った今でも、思い出せない。
だけど、そこには自分がちゃんとした医師になると決意した出来事があるはずで……?
思い出せない過去に悶々としながらも、日々の現実を生きるレミ先生。
そんな今日も、お仕事です。
彼は今日も『絶対領域』を観察しているようですが…
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!極限まで明かしつつ、何かを隠していて
本作は多数のファンを持つ長編「◆Ave Maria◆」のスピンオフに当たります。
描かれるのは、とある手術の準備から執刀を経て終了に至るまでの流れです。その描写は緻密です。作者自身が心臓の弱い(これは病気ではなく精神的にビビりという意味)人は一部を読み飛ばすよう促すほどに。
読むと現代における手術の流れがよく分かります。いや、評者には医学知識がありませんから、分かったつもりになるように騙されているのかもしれませんが。
あれ? この構図、どこかで見たことがあります。手術のスタッフの中に、神業と称される技術を持ち、何かを隠しているような人物が……
分かったような気になるけれども、何か隠さ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!『絶対領域』について語られる
医療従事者の方が書かれた作品ですので、医療現場、手術室でのやりとりがとても説得力があります。
専門用語や論文のような難解な読み解くのに苦労するようなお話ではなく、わかりやすくリアルになりすぎないように注意しつつも、医療系のドラマとしてしっかりと綴られています。
その匙加減が絶妙だなぁと思いました。
緊迫の中にも笑いあり。
患者に対して真摯に向き合う方々、毎日いかに注意してくださっているのかが……読み終わった後は感謝の念でいっぱいになりました。
色々と教えてくださってありがとう。という気持ちです。
◆Ave Maria ◆のスピンオフ作品。
本編の方は現代ファンタジーで、魔法などの話もでて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一文字一文字が見逃せない。医師の神聖な側面を見事に体現した作品。
本作は、《医術の神・アスクレピオス》の話から始まり、医師という職業の神聖さを感じさせてくれる物語です。医師といえば、人の命を救う尊い仕事。そのイメージを活かしつつ、医療の現場ならではの緊張感がリアルに描かれています。
手術は時間との戦い。作中でも時間の経過が刻々と示され、読んでいるこちらも思わず息を詰めてしまうような緊迫感があります。一文字一文字が見逃せない――そんな印象がありました。
ところで、主人公は『サージカルキャップとマスクの間は……絶対領域だ』という迷言を吐いてしまう若い医師。そんな主人公ですので、作品全体の雰囲気を適度に和らげてくれました。
さらに本作は、長編 ◆Ave M…続きを読む - ★★★ Excellent!!!その手術室には、運命と誓約と使命がある
ステンドグラスのような透明感のある筆致で綴られる医療ドラマに交え、ふたりの医師の過去の邂逅と現在の心の交流が描かれています。
物語は医師レミの語りから始まり、医神の再来と称される卓越した技能を持つ医師リアムの述懐で幕を閉じます。
自らの外見や年齢を懸念し豊かな感情表現を見せるレミと美麗な容姿を持ちながらも、それ意に介さない感情表現の乏しいリアム。
対照的な描写が作中のふたりの存在感を際立たせています。
最終話で、孤高の性格に思えたリアムの内面がつぶさに描かれ、彼の自覚する使命が表題の意味を教示します。
本作は、美しくも巧みな構成をもつ物語です。
どうぞ、ご覧ください。 - ★★★ Excellent!!!手術現場を体験できる、傑作医療短編!!!
本編『Ave Maria』に登場するレミ先生の視点で描かれる本作は、ファンタジー色の強い本編とは違い、手術現場を実感することのできる本格的な医療短編小説となっております。
手術についての知識がとにかく凄いです!
あの有名なポーズ、衣服について、看護師の手渡しする行為、そして先進医療のシステムにまで言及がなされています!
短編小説としての形式ながら、リアリティのある手術現場に立ち会わせていただける感覚です。
そして魅力的な登場人物たち。
特に、本編でも最重要人物であったリアム先生の描写は、本当に神々しい!
マティス教授の仕事ぶりも必見です。
是非ともご一読ください!