剣士としての第一歩

 ゼファーの下での過酷な修行を乗り越え、レオンの身体と精神は確実に鍛えられていた。


 ある日、ゼファーは静かにレオンの前に立った。


「今日から、お前は試験に入る。これまでの修行が本物かどうか試させてもらうぞ」


 レオンは木刀を握り、深く息を吸い込んだ。目の前のゼファーはまるで大木のように動かない。


「来い、レオン」


 師匠の言葉とともに、レオンは初めて本気で剣を振るった。


 一撃、二撃、三撃。今まで教わったすべてを込めた攻撃。しかしゼファーは、それをまるで遊ぶかのように受け流していく。


「力任せではダメだ。流れを読め。敵の動きを見極めるんだ」


 ゼファーの声に、レオンは瞬時に体勢を変えた。無駄な動きを削り、一撃にすべてを込める。


「――ッ!」


 次の瞬間、レオンの剣がゼファーの防御をかすめた。


「ほう……」


 ゼファーが小さく笑う。


「合格だ、レオン。お前は、ようやく剣士としての第一歩を踏み出した」


 レオンの胸に、これまでにない確信が生まれた。

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