京の片隅に佇む菓子屋で、地味でおとなしい女中として働く少女・心(うら)。しかし裏ではくノ一として暗躍し、巧みな機転と卓越した剣術で数々の任務をこなしていきます。彼女がその正体を明かすことは決してありません。
ある日、帝からの密命を受けた心は、宮廷の裏に渦巻く陰謀を察知します。任務の遂行か、それとも己の正義か──揺れ動く心の中で、彼女は自らの信じる道を選び取ります。宮廷の権力争いが絡み合う中、彼女に目をつけた所司代の青年・牛若彦との心理戦が緊張感を生み出します。そして、帝に影響を及ぼす公家・申泉成親の策略が、彼女の運命を大きく揺さぶります。
俊敏な動きを描く躍動感と、テンポの良い文体。戦闘シーンは映像を見ているようなスピード感が際立ちます。心の独白がユーモアや冷静な思考を際立たせ、彼女の人間らしさを際立たせています。雅やかな宮廷と忍びの世界の陰謀が巧みに絡み合い、作品の魅力となっています。
華麗なる剣技と機転を駆使しながら、己の信念を貫く少女。まるで時代劇映画を観ているかのような迫力。夜の闇を駆け抜ける忍びの生き様に、心を掴まれる作品です。