近未来。ヤドリギの変種の寄生によりほぼ全人類が〝ウィードマン〟へと変貌をとげる事態となり、人類文明は終焉を迎えた。
その世界に生き残っている少年、雨霧優斗。
彼は荒廃した街を彷徨い歩く。
その行動を眺める読者は、彼と共に終末世界の日々を体験する。
食料のある地点から次の食料のある地点へ。
過酷な状況のなか淡々と生き残ろうとする者の視点から、終ってしまった世界への絶望が伝わることだろう。
────そして物語は突然に結末を迎える。
殺伐さと閉塞感に満ちたストーリーは同時に人が必死で生きようとした物語でもある。
確かな状況描写は、きっと読む者の感情を揺さぶることだろう。
ぜひ御一読されたし。
中国でウィードマンという植物に寄生された人間が現れる。
ウィードマンは人々を襲い中国は全滅する。
ウィードマンは日本にも出現し、主人公の若者以外の人間はほぼいなくなる。
昨日から偶然カクヨムに書かれた「終末もの」をいくつか読んでいる。
終末世界は日常をかけ離れた詩情があるから書き手はそこに惹かれるのだろう。
グロテスクなはずのゾンビ映画にもその詩情はあるし、この『ヤドリギの花は咲かない』にもある。
孤独な主人公の思考や行動が青春小説の登場人物のようで、その若々しさがおもしろくて且つ痛ましかった。
中国に出現したウィードマンがコロナのメタファーになっていると思った。
コロナの記憶が、ゾンビパニックものにぶきみなリアリティを与えている。
コロナの登場は人々の世界観に重大な影響を与えたと思う。
もちろん作者のかぬりすさんも影響を受けている。
コロナの流行を生き延びた若者の感慨や絶望を作品から感じてそこも興味深かった。
生存者の置手紙の使い方が絶妙だった。
ゾンビ映画が好きな人におすすめの好短編です。
人々が植物に寄生されたことで滅びた世界
本作品は、たった一人で生き抜くことを強いられた主人公の物語である
たった八千字強の短編であるにも関わらず、くどくない範囲で「何故世界が滅んだのか」という設定が描かれており、世界観に没頭しやすくなる
ポストアポカリプスの無常感が存分に表現されており、主人公の目的が「生き残った誰かに出会うこと」にシフトしてからは、行動範囲が広がるので余計にそう感じた
結末もまた、本作品に相応しいもので、最初から最後までテーマに沿い、一貫した物語になっている
ごく短い良作なので、食わず嫌いをせずに読んでみよう
※アカウント利用停止措置を受けたため、本レビューは再投稿となります