宇宙に飛び出した人類は、あちこちの星で定住するようになった。 そんな時代の中、主人公は恋人と喧嘩して衝動的に地球へ行くことにして、ふとかぐや姫の話を思い出す―― 淡々とした簡潔な文体で語られる、短くもよくまとまった良作のSFです。SFをあまり読まない方にもお薦めです。
かぐや姫を題材にしたSFはいろいろありますが、これはまた余韻のある料理の仕方だと思いました。地球と因縁のある主人公が思いを馳せる。ほろ苦いロマンチシズムを満喫しました。
読み終わって800字と気づいて二度見。800字の中で遥かな未来の歴史と過去のおとぎ話が重なる旅路。主人公の瞳に映る地球や月。親しみや不安やなつかしさが綯い交ぜになった眼差しが伝わってくるような素敵な短編でした。
恋人と喧嘩した。だから、地球へ。はるかな未来、それくらいの手軽さで、人類は他の星へ行くのかもしれませんね。宇宙船もない時代、では、かぐや姫はどうだったのか。そんな途方もなく、それでいて身近な物語。