第8話 感じたものの正体

その後、再びホームルームが始まり、クラスの係などを決めた。私と青茶色の髪の少年、名前はリニーは入試の成績が同率一位だったことから、強制的に学級委員になり、男爵家の嫡男スクローはというと自分が一位ではなく三位だったことに腹を立てて、自分たちを睨んできた。

私だって目立たないようにと、何問かわざと間違えて満点は避けてたのに、一位だなんてどういうこと、と疑問に思っていた。もしかしたら、スクローはあんなに貴族だと豪語していたのに、そこまで勉強を頑張っていないのかもしれない。それでなきゃ、貴族の教育していたら満点くらい取れるでしょ、と少しマウントを取ってさっきのをスッキリさせている自分がいた。今まで比べる人がいなかったから、私は人と比べたりしなかったのかもしれない、という考えが頭に浮かんだ。

今まで苦手だった令嬢達もこんな気持ちなのかもしれないね。


そして、男爵家の嫡男はというと、どうせなら一番楽な仕事をやってやると言って配布係を選んだ。プラシは特になんでもよかったっぽく、余った植物係になっていた。


「学級委員の2人はこの後仕事があるから、終わったら職員室に来てくれ。それでは諸君、また明日。」

と言って、先生は教室から出て行った。私はとりあえず、この後仕事があるから先に寮に戻っていて、とプラシに言ってから、青茶色の髪のリニーと一緒に教室を出た。正直、さっき感じた気品の正体が気になっていて、あれからずっと話してみたかった。もしかすると、スクローが言っていたみたいに、彼の父親が騎士だから気品があるのかもとも思ったけど、聞いてみたかった。

「知ってるかもだけど、僕はシーア・トーク。改めてこれから学級委員同士よろしく、リニー。ねえ、君の家ってどんな感じなの?」

と、自分的にはできるだけ当たり障りのない感じで話しかけてみた。

「こちらこそよろしく。急に家の話なんてどうしたの?さっきの男爵みたいに、僕の家は特におもしろいことなんてないよ。普通の平民の家さ。そっちこそ、なんか特別な感じなの?」

と、さっきの去り際に感じた冷酷さはなく、普通に答えてくれたので嬉しかった。

「いや、僕の家も特に普通の一般的な家庭さ。さっき、男爵家の話聞いてたら、みんなの家はどんな感じなのかなって気になって。僕は今まで、同い年の話せる知り合いが全然いなくて気になってさ。」

「なるほどね。確か、さっきの会話で聞こえてきたけど、家はここから遠いって言ってたから、人があまりいないところなのか?」

「まあ、そんな感じかな。そっちはここの近くに住んでいるの?」

「ああ、この近くの村が僕の故郷さ。全寮制じゃなけりゃ、家から通いたいくらいだよ。」

と、何気ない会話をしている中でも、やっぱりさっきの男爵家長男たちの会話とは何か違うオーラを感じた。キリッとした横顔と何か感じさせる雰囲気がとてもマッチしていて、見惚れそうだった。その後、職員室のドアを開ける時も、先生からもらった書類を受け取る時も、一つ一つの動作が洗練されているように感じた。その後、寮まで一緒に帰り、廊下で別れた。

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