まず、儚げで美しい文章と和風の世界観にぐっとひき込まれました。
主人公の涙茉は誕生日、一瞬にして自分を取り巻く世界が変わってしまいます。
実の姉から虐げられる日々が始まりますが、その光景がはっきりと目に浮かぶ程で、思わずぞくりとしました。
心が限界となった彼女はやがて家から逃げ出しますが、死に場所を求めた先で出会った相手こそが、運命とも呼べる存在でした。
涙茉の傷付いた心にじわり、じわりと沁み込むように、二人の間にゆっくりと柔らかな熱が生まれていく過程は、読んでいるこちらまで温かな気持ちになりました。
否定され続けた二人だからこそ、その傷は二人にしか分からない。
それゆえにお互いの存在こそが心の傷を癒し、深く愛すのだろうと、これからの二人の未来を祝福せずにはいられませんでした。
読了後にもう一度、読み返したくなる、そんな素敵なお話なので、ぜひ!!
蓼食う虫も好き好きという言葉がある。もちろんこの言葉は皮肉めいたものがあるものではあるが。
例えば〈花〉にとっては、誰かにとっては忌むべきものであったとしても、それを好む誰かにとっては何にも変え難いものとなる。
さてでは、この物語は――などと説明するのも無粋な話だ。そこはぜひ、読んで確かめていただきたい。
どのようなものにも繋がる縁はある。この世の中で生物というものは、網のように、鎖のように、繋がっていくものなのだから。
このふたりはある意味で、とても強固な縁で繋がっているのかもしれない。
そんなことを思いながら、この物語を閉じました。
忌まれた彼らの行く末はいかに。
ぜひご一読ください。