概要
このさき危険 立ち入り禁止 が出ます
京都府北部にある山の話をします。その山の看板にはこうありました。「このさき危険 立ち入り禁止。 松茸 がでます」……そんなの普通じゃないですか。松茸の何が危険だと言うのでしょうか。私は不思議でなりませんでした。しかし看板をくくりつけてある鉄柵は、山の奥へとつづく道を厳重に塞いでいます。私は嫌な予感がして、引き返しました。するとその夜、宿のご主人が、あの山の看板に関して、胸を引き裂くような話をしてくれたのです。
いつも読んでくれてありがとう。ギフトは仔犬のごはんにします
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!読むべき
"このさき松茸が出ます"という一つのアイデアから広がる奥行のある物語。
これは山に関するマナーを入り口にしたすごく澄んだ尊厳に関する話。
もちろん山やレジャーに関するマナー啓発にも価値はあるし、ホラーとして読むのも面白いのだけど、本質はそれよりもずっと素晴らしいものです。
距離感が良い。木彫りのような無骨さと柔らかさを持った主人公がまずよくて、親子、妻、娘、若者、どれも単純なアイコンで終わらずにそれぞれ呼吸を感じます。そして各シンボルが意識を持って各々を満たすために行動しています。そのためこの話は単なる啓発やホラーに収まらずに土地の境をヒントに「自他の領域」や「人間の関わり」について良…続きを読む - ★★★ Excellent!!!じわじわ迫りくる恐怖。悲しみをたたえたモダンホラー
「このさき危険 立ち入り禁止」
どこにでもありそうな注意書きの看板が、一歩一歩、不気味で異様な物語へと読者を誘います。『空白』は、淡々と進む筆致の中に、深い悲哀と恐怖を湛えたモダンホラー作品です。その静かな迫力と緊張感に、ページをめくる手が止まらなくなることは間違いありません。
主人公が入る京都府北部の山。最初は何の変哲もない山道ですが、進むごとに嫌な予感が募り、空気が徐々に変わっていく様子が淡々と描かれます。
徐々に明らかになっていく過去。この山で起こった出来事、そして「松茸」の意味が明らかになるにつれ、読者は物語の背後に広がる深い悲哀と恐怖を知ることになるのです。決して直接的…続きを読む