5月
1-9. 5月……勉強しよ?(1/4)
前回までのあらすじ。
俺、
その数日後に俺は美海と連絡先を交換できたのだった。
俺だって、やればできる……って、正確には俺じゃなくて、美海が先に切り出して言ってくれたんだけどな……。ほぼ同じタイミングだったから、まあ、被ったってことで! 仕方ない!
というわけで、無事に連絡先を交換できた俺は一安心……のはず?
もーいーくつ寝ーるーとー……1学期の
ゴールデンウィークが明け、部活の仮入部期間が終了して、本格的に部活動開始と思いきや、1学期の中間テストが5月の中旬にある。それでさらに、テストが始まる1週間前はテスト勉強週間で部活動停止というイベントが起きる。
いや、運動部は頑張る1年生だとゴールデンウィークあたりから本格参加するとか聞いたけど、俺には関係ないからよくは知らないし、聞いてもあまり興味が持てない。
ちなみに、美海とは部活が違う。美海は美術部にするらしい。俺は……まあ、俺の話はいいだろう。
「……どうするかな」
俺は終礼が終わって、ばらばらと動き出す同級生と似たような動きをしながらそう呟いていた。
話を戻すと、中間テストのテスト週間は選択肢が3つあるので、どれを選ぼうかと脳内会議をしたいところだ。
「お、まっすぐ帰るのか。またな」
「あぁ、まだ決めかねているけど、ぷらぷらして決めようかなってな。じゃあな」
「きをつけてな」
そう言ってクラスメートと無難な挨拶をして別れる。
選択肢の1つは帰って勉強する。もちろん、これが一般的な感じ。まあ、この選択肢を取る奴なんて、本当に帰って真面目に勉強するやつが2割いればよくて、どこかで遊ぶやつが8割以上だと思う。
ちなみに、そこそこに田舎だから遊びに行くなら、自転車が圧倒的に強い。電車はない。いや、あるけど、正直、この高校からだと遠すぎる。で、バスでどこかへ行こうとすると、ある程度タイミングを見て、待たなきゃいけない上に、一斉に乗るから正直混んでいてうんざりするし、遊ぶ場所に直行できるわけでもないから最寄りのバス停で降りざるを得ない。遠回りルートだと自転車の方が早く着くこともある。
話がズレすぎたな。
そう思っていると、
「金澤、どうせ家に帰っても勉強しないだろう? オレに付き合わないか? 教室自習組の様子を観察するつもりなんだが」
いや、どんな誘いだよ。
「いや、どんな誘いだよ。まったく。言っておくが、勉強はするつもりだぞ? こまっちゃんと違って、俺は勉強しないと点取れないからな」
もう1つはいくつかの教室が見張り教師付きの自習スペースになるからそこで勉強する。見張り教師は教室ごとに異なる上に日替わりらしく、担当教科であれば分からないところの質問にも答えてくれる。だから、それを狙って自習する予定の同級生も多いらしい。
と言ったって、1年の1学期のテスト範囲なんてたかが知れているし、質問するほどの難問が出るのかどうかさえ分からない。
「そうか、そうか、つまり君はそういうやつだったんだな」
懐かしっ。
「おいおい、急にエーミールになるなよ……懐かしいな。ってか、誘いを断ったからって、悪者にされる覚えはないが?」
「はっはっは、クジャクヤママユは潰してないが、誘ったオレのメンツは潰してくれたからな」
「無理くりに上手いこと言おうとするなよ……」
このままだと長引くかとも思ったが、こまっちゃんは時間を大事にするタイプなので引き伸ばし作戦など一切なく、次の瞬間にはこまっちゃんの手が軽く振られていた。
「さて、では、引き留めるのも悪いな。それにオレも忙しい。またな」
「あぁ、またな」
さっさと自習教室へと向かっていくこまっちゃんの背中を見ながら、いよいよ教室を出る。
すると、廊下に美海が立っていたことに気付いた。
美海は自作であろう英単語帳をぶつぶつと呪文のように唱えている。
どうでもいいけど、紺色のナイロン製スクールバッグが美海には大きすぎるように見えた。やっぱ、美海って見た目が中高生よりも小が……こほん……失礼なことを思うのはやめておこう。
「あ、仁志くん!」
美海が俺に気付いて、すごく嬉しそうな顔で若干そわそわしながら近寄ってくれた。
うん、かわいい。
「美海、もしかして、俺のことを待っていてくれたのか?」
「うん。一緒に勉強したいなって思って」
俺が中学生のときに妄想した『彼女がいたらしてみたいこと TOP10』にランクインしている『学校で彼女と勉強会、できればそわそわしつつもなんだかんだでちょっとくらいイチャイチャしちゃうよね』がイチャイチャなしだろうけど、早くも達成されようとしている。
うん、彼女じゃないけど、女友だちって括りだけど、自分で告白断っちゃったバカですけど!
……最近、この自虐が俺の自戒になっている。美海からまた告白される可能性は低いから、美海が敬遠するガツガツ感を出さずに俺から告白するしかない。
しかし、良い雰囲気になったら……俺からの告白いけるか? ムードによる気もするが。
「あ、そうなのか。自習教室か?」
「ううん、図書室に行きたいなって思って」
そう、選択肢の3つ目、最後は1階にある図書室だ。最初の校舎案内のときに入ったくらいしか記憶にないが、1階の玄関前、下駄箱ゾーンを通り抜けてすぐの場所にあるため、その存在感は下手な移動教室より大きい。
たしか、そこまでの広さはないものの蔵書数はそこそこで、読書はもちろん、自習ができるような長机がいくつかある。そのためか、秋冬、つまり、2学期と3学期は3年生の先輩優先で利用される場所と説明を受けた覚えがある。
「俺はいいけど、図書室に何かあるのか?」
「ううん。図書室がいいってわけじゃないんだけどさ。さっき見たら、1年の自習教室はもうだいぶ埋まってて……仁志くんと隣どうしで勉強できなさそうだったから」
美海が少し恥ずかしそうにもじもじとして答えてくれたので、俺の鼓動がドキドキドキと速くなった。
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