第二十六話 #クールな狼は配信者好き
「よしよし、ランキングに載って無いAランクが五人も…………これはまたまたトレンド入り果たすな」
「ねえクロ、突然なんで集合写真なんか撮ったの?」
俺が会議に入ってくるなり写真を撮ったことにタマが疑問を上げた。
「バズるため」
「はい?」
「あ、みんな、今撮った写真SNSに上げてもいい?」
写真を撮った理由? そんなのもちろんバズる他ないだろうが!
三回配信を行い、チャンネル登録者数が五十万人を超えた。
が、最近企画が思いつかなくてちょっと悩んでいたのだが、こんな身近にいいネタがたくさんあるとは。
ランキングの空席が、今この場に五人も居るなんて珍しいがすぎる。
それを写真に収めてSNSに載せれば、バズること間違いなしだ。
しかも、その後の対抗戦とかいうビックな配信ネタもあるし、こりゃまた話題になること間違いなし! うゆ、我ながら素晴らしい思いつきだ。
本当は炎帝とか韋駄天(笑)とか、探索者じゃない人にも有名なAランク呼びたかったけど忙しいから仕方ない。
「ええー、SNSって狂犬のクロのやつか? んー、俺は載せてもいいよ」
「SNSって何なんだ? まあ別にいいぞ写真くらい」
「インターネットで人が文字や写真とかで交流する場所のことたぜェ。ああ、だから撮る時ドックタグ見せる様に指示出したンか。あと俺は反対だァ、オレは探索者であってお前みたいな配信者じゃねェンだ」
「おっけー、じゃあセイローの顔だけモザイクかけとくわ」
「それオレ犯罪者みてェな雰囲気にならねェ!?」
「他に嫌な人いる?」
「おい無視すんなクロォ!」
「わたしは反対じゃないよー、むしろ賛成! Aランクの仲良しアピール見せつけちゃお〜」
「ボクはクロの都合のいい女の子だから、どんな頼み事でも受け入れるにゃ。なんなら夜の方がどれだけニッチなアレでもボクは受け入れるにゃ」
「じゃあ載せるねー、サンキュー」
「あれ、僕だけ許可取られて無い……」
Aランク探索者会議NOW、という一言にさっきの写真をペタリ。
すぐさま元が青い鳥のSNSで投稿だ。
ドックタグが皆写っているし、探索者や有識者はこれらが全員Aランクというのが分かるだろう。
つか全員イスに座ってるだけなのに全員座り方が違うの個性があっていいな。
……うん、個性つか自我強すぎてエゴの塊みたいなのばっかだけど。
「で、本題です! 俺とマジノコと一緒に対抗戦に出てくれ」
机をバンッと叩き、こちらに注目を集めて俺は言った。
今日、この場にこいつらを集めたのは写真を撮るためではもちろんない。
あ、いやいつか撮れたらいいなとかはずっと思っていたから、それがたまたま今だっただけだが。
用も無いのに呼び出したらブチギレそうなのが二匹ほど居るからな。
今回は伝えたいことがあったからそのついでに撮っただけだな。
……さっきからスマホが震えているな、投稿の通知がいっぱい来ているのかもしれない。こりゃあとで反応みるのが楽しみだな!
「ボクはいいよ、クロにどこまでも付いていくにゃ」
「詳細ぐらい聞けよ……対抗戦ってメールで来たやつのことか?」
「そ! メールで通知された通り対抗戦を全世界を巻き込んで開催するみたいなんだ。で、みんなにはそれに出て欲しいってワケ」
「あー、なんか来てたねー。それって確かクロと田中は強制参加だったよね」
「そうそう。俺とマジノコは確定で、今の所タマ、で他三人は出ます」
「俺も出るよー」
「よくわかんないが俺も出るぞ! 全世界で対抗戦とか楽しそうだしな!」
「わたしもー!」
「なんで全員こんな参加に前向きなんだァ……」
「セイローはどうする?」
「オレはなァ……」
セイローの方を見ると、めんどくさそうな顔をしていた。
はっはっは、想像通りだぜセイローさんよォ。
お前のことだからどれだけいっても参加しないことは分かっていたぜ、めんどくせェとか言って。
しかしこちらにも考えがあるんだ、お前特攻の最強のカードがな。
今すぐお断りを入れてきそうなセイローの肩を組み、周りに聞こえないように部屋の端まで行き耳元で小声で言った。
「セイローが参加した暁には俺の姉に会わせてやろう」
「クロ、オレァ参加するぜ」
セイロー特攻のカード、それは俺の姉に会わせることだ。
極度のおもしろチャンネルのファンであるセイロー。
姉との初コラボ配信で一番驚いていたのはコイツだった。
次の日すんごい顔で俺に詰め寄って来て一言。
お前と愛莉ちゃんが血縁なワケがねェ!!! と。
その時初めてファンだって知ったんだよな。
意外と配信とか見る感じの人だと知って、若干共感が生まれて仲良くなった気がする。
気難しいと思ったら、意外にもツッコミ派だしチョロい。
口が悪いが、なんだかんだ俺はコイツのことが好きである。おもろいから。
「じゃあ全員参加ってことでいいね!」
「意義なーし!」
「いいぜー」
大賛成ーとみんな手をあげてくれるので、全員参加の意思ありってことでいいな。
いやー、ありがたいな。
普段全員人の話聞かんやつばっかなのに協力してくれることはありがたい。
「また後日連絡するからよろしくー、じゃあ解散!」
そう言うなり、みんなぞろぞろと会議室から出ていった。
これで日本の主力メンバーが揃ったと思う。
他の国ではどれだけのAランクが出てくるか分からんが、ひとまずはこれでオッケーだろう。
あとは数だな、対抗戦のルールがまだわからないが、上限が設定されていないってことは、かなり大規模な戦闘になると思う。
開催日まではまだ二月間もあるし、人を集める考えもある。
そうだな、善はいそげ、家に帰ったら配信の準備をするとしようか。
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