概要
そこは傾いた街。心の傾きに背を押され転がり落ちた者たちの街。
街の真ん中にぽっかりと残された小さな沼には、ヒヒルさまが祀られている。
カタブキに流れ着いた女子高生テコナはフードルのマユと共に生きたいと思った。
それだけだった。
※この物語はフィクションです。実在するいかなる個人・団体とも関係ありません。
※この作品は法令に違反する行為を推奨するものではありません。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!居場所を持たない少女の行き着く先
現代社会の中にありながらも、それらから隔絶されたかのように独自のルールを持つ街・カタブキ。
そんな街にやってきた〝蝶の見える少女〟テコナ。
家から出てきたテコナには居場所がありませんでしたが、このカタブキが彼女の新たな居場所になっていきます。
親しい友人もできて、序盤に比べるとどんどん明るくなっていく……のですが、テコナの思考は常にどこか危うさが感じられるのです。何か一つのものに依存してしまっているような、大事なもの以外どうでもいいと思ってしまっていそうな……それがテコナ本来の人間性かもしれませんが、同時にカタブキという街に染まっていっているからかもとも思えてしまいます。
それでもテコナ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!2025の写鏡としてのカタブキの界隈性。闇ファンタジーを生き延びる少女
ニュース番組では繁華街にたむろする少女たちが映り、SNSでは扇情的な装いの女の子が流れていきます。君子危うきに近寄らずじゃないですけど、あっち側のことだと思ってました。そんなアンダーグラウンドな現代社会の闇。でもこのダークファンタジーは読者をそんな近づけない危ないところに連れて行ってくれます。
そしてそこにいる人たちは僕たちの知り得なかった様々な事情を抱えて現在があり、僕たちと同じ血の通った人間なのだと思わされるのかもしれません。
表の世界から逃げた二人の少女は蝕まれてしまうのでしょうか? 過去の呪わしい事件と今そこにある怪異、追跡劇。どうか、この小説が終わる時、二人の少女に寄り添える居場所…続きを読む - ★★★ Excellent!!!危うい均衡の上に成り立つ拠り所で正常に狂っている迷い子たち
訳ありな主人公の少女が、ソトとは違う理で回る街・カタブキに流れ着き、生きる話。
言葉で語るよりも、心で感じて、そのまま自分の中にしまっておきたい作品だと思いました。
でもちょっとだけ言葉にしてみます。
夢の中のような足元が覚束ない感じがするのは、きっとテコナの過去やカタブキでの現在に「未知」が多いからというのもあるでしょう。蝶が幻想的なのも。少し暗くて、ねっとり肌にまとわりつくような空気やホラー特有の気持ち悪さなども感じることができました。
各登場人物に謎を持たせたり、カタブキがどんなところなのかわかっていったりの情報の出し方が巧みです。レイティングシーンも。常に興味を引かれました。…続きを読む