第30話 家族団欒

 次の日の朝、鐘がなったので俺はベットから飛び起きる。


 何故なら、今日はお出かけするからだ。


 楽しみで中々寝れなかったけど、元気は有り余ってます。


「おはよう、セリス」


「ははうえ、おはようございます!」


「……ふふ」


 すると、母上がクスクスと微笑む。

 そして、俺の頭を撫でる。


「はぇ?」


「もう、そんなに張り切っちゃって。きちんと寝れたのかしら?」


「元気! ……ははうえは?」


「平気よ、今日も調子いいわ」


「やったぁ! これでお出かけできるね!」


「ええ。さあ、リビングに行きましょう」


 俺は母上の手に引かれ、部屋から出る。

 そしてリビングに入ると、すでに皆が揃っていた。


「おはようございます!」


「まあ! 今日も元気で可愛い!」


「んぎゅ……姉さんも元気そうです」


「もちろんよ。朝から、可愛い弟に会えたんだから」


 すると、兄さんがため息をつく。


「さっきまで眠いとかだるいとか言ってたくせに……」


「へっ? ナンナ姉さんがですか?」


 あっ、でも……物語上の設定では、朝起きるのが苦手だったっけ?

 あと基本的に引きこもりで、研究ばかりしてたって。

 ……今の姉さんとは、全然違うね。

 すると、姉さんが兄さんに詰め寄る。


「はぁ? アンタ、昨日課題を手伝ったのは誰かしら?」


「お、お姉様です!」


「そうよね? それで、何か言うことは?」


「さっきの言葉は気のせいです!」


「はい、よろしい」


 さすかの兄さんも、ガチギレの姉さんは怖いらしい。

 ……俺も怒られないように気をつけなきゃ。

 全員が揃ったので仲良く朝食を食べる。

 今日は朝からお肉があり豪勢だ。


「朝から新鮮な肉が食えるとはな。これも、セリスのおかげだ」


「ほんとよね。あの冷蔵庫のおかげで、生の食材が長持ちするもの」


 作った者の特権として、うちには既に冷蔵庫が置いてある。

 といっても木製で出来た、昭和初期にあったような感じだけど。

 氷魔石と風魔石を上段に入れ、それを中段と下段に行き渡るような仕組みだ。

 それでも、食材の保ちは全然違うみたい。


「それによって、食材のロスも減る。何より、皆の仕事の負担が減ったのが大きい」


「そうよね。廃棄するのだって大変だし、その日の食べ物のために作業しなくちゃいけないもの」


「その通りだ。前日に仕込んでおけば、翌日は調理しなくていいのも大きい」


「えへへ……役に立ってよかったです」


 二人からべた褒めされ、少し照れくさい。

 でも、めちゃくちゃ嬉しい。

 これで、破滅回避に近づいたよね?


「セリスってば天才ね!」


「お手柄だな! 流石は俺の弟だ!」


「わぁーい! 褒められた!」


 すると、ホルンが咳払いをする。


「みなさん、楽しそうなのはいいですが早く食べないと時間がなくなりますよ」


「「「「「はっ」」」」」


 俺達は顔を見合わせ、慌てて食事を再開するのだった。

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