百円玉を手にしたことから始まる物語は、少女の目線で進んでいく。
この百円玉、少しおかしい。なぜなら触れる時、指にねちゃっとするような感覚があるからだ。
だけど指に異変はなく、臭いもない。そうして百円玉を手放す時は「ほっ」とするのである。
それが間を置かずに続けて起きたことから、少しずつ、少しずつ、何かが変わっていく。
この物語は、誰にも知られない「わたしたち」の物語だ。
誰も知らない。知られない。
何故なら「わたしたち」には……と核心に触れてしまうのでここまでにしたい。
物語を読み終えた時、主人公が百円玉に触れたときの、ねちゃっとする感覚が未だにある。主人公と違うのは、この百円玉は手放したとしても「ほっ」とすることはない。
ただ、彼女達を思う時、物語は指先にねちゃっとした感覚を思い起こす。
この物語はホラーであり、ミステリーでもある。これは物語を通して読まないと分からない。
だから最後まで読んで欲しいと思う。
物語を読み終えた時、「わたしたち」には何が出来たのだろうか、と思う。
百円玉は日常の中にあり、呪いは静かに横たわる。
キャッチコピーの「わたしたちのことをみんな知らない。」が読み終えた後に深く深く残る物語でした。