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- ★★★ Excellent!!!「梶井基次郎の変奏曲」としての時代劇
『桜の樹の下には』は梶井基次郎の有名な掌品だ。
「桜の樹の下には屍体が埋まってゐる!」という冒頭の一文が特に有名だが、同じセリフを作中の登場人物玄馬と小一郎も口にする。
この(超)有名なフレーズの使い方が見事だ。
玄馬は病(おそらく結核)で死を目前にしている。
現実の梶井基次郎も結核で若くして死んだ。
玄馬の望みを聞いた小一郎は彼の望みを叶える。
梶井の『桜~』は一種の幻想譚だが、『桜花の武士』はそれよりずっと爽やかだ。
「世の中になにも残さずに死ぬ」玄馬の無念は、カクヨムに爪痕一つ残せない底辺作家の胸に深く刺さる(!)。
玄馬の無念が大きい分、彼の最期の望みに応えようとする小一郎の友情…続きを読む - ★★★ Excellent!!!侍の話。それが如何にも侍らしい話。でも、人間らしい話かな。
当然の事だけど、桜の咲き具合が本作品の通りに落ち着いて、良かった。もし、違っていたら、枯れた哀愁漂う作風が台無しになるところだった。
その作風に感情移入する読者が老人には多いと思う。私も玄馬の想いは能く判る。自分が生きていた痕跡を何か残したい、と思うものだ。
玉手箱を開けた後の浦島太郎。小一郎の気持ちとは、そんな感じだったのではないかと思う。終末を目前とした者の達観とでも言う感情か。
でも、西村京太郎のインタビュー記事を読んでいたら、「年老いても欲は枯れないね」だって。所詮は「老人は枯れるもの」なる思い込みの産物なんだろう。
短編にはMAX2つが信条ですが、星3つ付けました。