もう、あれから5年経ったと思うと、月日が経つのは早いと実感いたします。
あれから、生活は元に戻ったとおっしゃる方もいますが、
あれ以来、確実に我々は生き方が変わりました。
具体的に……今日偶然、昔の映画を見たんです。
あるシーンでものすごい違和感を感じて、何度も巻き戻して……ようやく違和感の正体に気がつきました。
男が、人前で堂々と咳をしている。それに対して、目の前にいる男は特に気にするでもない。
これだ。
咳に対する印象が全く変わってしまったんだ。
そんなことを思い出しながら、この物語を読んでおりました。
主人公の一家離散の原因は、言うまでもなくコロナでございました。
父親が感染、幸い軽症のようで、家族たちにも感染はしてはいなかった。
なのに、恐ろしいのはウイルスではなく、ウイルスを怖がる人間の方だった……。
結果、主人公は一度全てを失いました。
良くも悪くも、我々はものすごい時代を生きているのだと思います。
コロナも戦争も、後世に語る責任があるのだと思います。
忘れてはならない。後世への教科書として残しておきたいです。
2020年、あのウイルスが流行っている時、2人の高校生の日常がガラッと変わってしまう。
2人は恋人同士で、お互いの両親にも紹介して認められている仲。放課後一緒に勉強したり、たまに会ったりしてコロナ禍の中なりの方法で青春を謳歌していた。
しかし‥‥‥
この物語が、単なる物語なのか、ノンフィクションなのかはわからないが、コロナ禍初期の激しい差別のような事件は、今となっては当事者以外には忘れ去られているようだ。
実際、私の周りでも、転居を余儀なくされた人がいたという事実を、これを読んで思い出した。忘れてはいけないのに!
差別。それは他人事ではない。自分に責はなくともどんな状況で自分が巻き込まれるか、誰にもわからない。
この物語は、そんな不安定な現実に危険信号を示してくれた作品です。
いまいちど、あの悪魔のような2020年を振り返って、自分が当事者だったら、どう振る舞えたかを考え直してみても良いのではないでしょうか。
そんな思いに至らせてくれる秀作です。是非、ご一読を!