マサチューセッツ州にあるハーバード大学(Pixabayからの画像)

中国人留学生を公然と標的に

 米トランプ政権の意向に沿った「改革要求」を拒絶したハーバード大学に対する制裁措置がエスカレートしている。

 トランプ政権は、ハーバード大学がキャンパスでのパレスチナ支持をめぐって暴力的デモや反ユダヤ主義を助長した責任を問い、不穏な学生の取締り強化や入学選考での多様性重視の方針を改めるよう要求した。

 大学側がこれを拒絶したとして、22億ドル(約3100億円)以上の複数年にわたる補助金凍結、6000万ドル相当の契約停止を決定。

 大学側が方針を転換しない限り、さらに70億ドル(約1兆円)が打ち切られる。

 ハーバード大学は直ちに、法的措置をとった。

 これを受けて、ボストンの連邦地裁(バラク・オバマ第44代大統領に指名されたアリソン・バローズ判事)は、トランプ政権の制裁措置を一時差し止める判断を示した。

 だが、これはあくまでも暫定措置。

 その後、トランプ政権はハーバード大学に対し、1億ドル(約140億円)相当の連邦政府との残りの契約すべてを取り消すと通告。

 さらにトランプ政権は、ここぞとばかりに、現行法内で行政府ができる留学生・リサーチャーを対象にする「留学生・交流訪問者プログラム」(SEVP)資格を取り消した。

 米国務省は5月28日、一部中国人留学生のビザ取り消しを開始した。

 中国共産党とのつながりのあった「重要な分野での研究をしている中国人留学生」を対象にしている。

 ところが、米連邦地裁は5月29日、トランプ政権がハーバード大学の留学生受け入れ資格を取り消したのを受けて、同大学の資格については一切変更を加えないよう国土安全保障省と国務省に命じる方針を示した。

Trump administration must let Harvard enroll international students, judge rules - The Washington Post

 裁判所での白黒決着には時間がかかると見たトランプ政権は、とりあえず現行法内で行政府が出せる制裁カードを切り、連邦地裁はトランプ政権が投げたボールを打ち返したわけだ。

 しばらくは裁判所とのイタチごっこが続きそうだ。