シニア層の再婚件数が増加中
厚生労働省によると、夫婦の4組に1組は再婚で、とくに近年はシニア層の再婚件数が増えています。世代別の再婚件数を見ると、50代以上の比率は夫が30%以上、妻が25%以上となっています。
春香さん(仮名)は30代で、大手企業に勤務する多忙なキャリアウーマン。就職後は実家を離れ、いまは関西の支社に配属されています。
春香さんが就職して5年後、持病を抱えていた母親が亡くなりました。その後は父親がひとり実家で暮らしていましたが、単身赴任の経験のある父親は、まめに料理を作ったり、庭の手入れをしたり、問題なく日常生活を送っていました。また、学生時代の趣味だった写真撮影を再開し、撮影仲間と日々交流するなどしており、遠方で忙しく暮らす春香さんも安心していたといいます。
ところが去年の秋口、父親から突然「とても大切な話がある」との連絡が入りました。
「なんだろう、もしかして相続の話かしら…?」
春香さんはそれ以上を語らぬ父親に不安を覚えながら帰省したところ、玄関に見慣れぬ女性用の靴がありました。
「ただいま、お父さん…?」
父親がリビングの扉を開けると、奥のソファに父と同じ年恰好の女性が腰かけており、春香さんを見て軽く会釈しました。
「お父さん、どなた…?」
すると父親は照れくさそうにモジモジしながら、
「お父さん、再婚しようかと思うんだ…」
と切り出しました。
女性は春香さんの父親の2歳年下で、12年前に離婚しているとのこと。2人の息子が結婚して独立したことから、自分の時間を楽しもうと参加した写真サークルで、春香さんの父親と出会い、意気投合したというのです。
春香さんは想定外の展開に面食らい、その場ではなにもいえないままでした。
ざわざわした気持ちで帰りの新幹線に乗った春香さんは父親に、
「再婚っていろいろ大変じゃない?」
「しばらくは気軽なお付き合いをしたら?」
とLINEしました。ところが父親からは、
「ありがとう、お父さんなら大丈夫!」
「いい人だろう?」
などといった、かみ合わない返事が来るばかりです。すっかり舞い上がっている父親に春香さんの心配は届かないようでした。
ところが1ヵ月後、なんと父親から再婚の報告が届いたのです。出会ってからたった半年という、電撃再婚でした。
父親からLINEで送られてきた写真にはタキシードを着た父親と白いドレスを着た例の女性が顔を寄せ合い、満面の笑みで写っていました。
「お父さん…」
春香さんは、複雑な気持ちで写真を見つめました。