障害年金不支給倍増に疑念 福岡大臣「実態調査し公表」
2025年05月19日 福祉新聞編集部障害年金を申請して不支給と判定された人が、2024年度に急増したとの報道が波紋を広げている。収入の少ない障害者にとって支給可否は死活問題であり、複数の障害者団体が「看過できない」「制度への信頼を大きく揺るがす」など疑念や不安の声明を発表。国会でも取り上げられ、福岡資麿厚生労働大臣は実態把握に向けて調査し、1カ月後に結果を公表すると表明した。
事の発端は4月28日付の共同通信の報道。24年度に障害年金を不支給とされた人は、23年度から倍増以上の約3万人に上るとした。23年10月に日本年金機構障害年金センター長が交代してから要件が厳しくなり、センター職員が判定医に不支給になるよう誘導している可能性にも言及している。
これを受け、全国手をつなぐ育成会連合会、発達障害当事者協会は厚労省に対し、報道の事実確認と結果の迅速な公表を求めた。
障害年金の認定件数は、同機構が集計して毎年9月に「障害年金業務統計」として公表されているが、福岡大臣は8日の参議院厚労委員会で大椿裕子議員(社民党)の質問に「抽出調査を行うよう同機構に指示した。結果は1カ月後をめどに公表できるよう作業を進める」と答えた。
判定基準の明確化を
障害年金は提出された診断書などをもとにセンター職員が事前審査を行い、委託を受けた判定医が職員とやりとりをして支給可否や等級を決めている。
しかし、その仕組みには恣意的、属人的な意向が入る余地があり、十分な客観性も担保されていない。そのため、全国精神保健福祉会連合会、障害年金法研究会を含め4団体が訴えるのが、判定基準の明確化、審査プロセスの透明化だ。4団体の中には、弁護士、精神保健福祉士らによる合議制と、申請者の生活、就労状況の訪問調査の導入を求める声明もある。
また、22年の国連障害者権利委員会の総括所見で、障害年金の支給額について障害者団体と協議するよう勧告されていることから、早急に協議の場を設けるよう要望。厚労省の社会保障審議会年金部会で障害年金の議論が置き去りにされてきたため、専門の会議体の設置も求めている。