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非国民通信

ノーモア・コイズミ

どの戦争から80年なのか

2025-03-30 21:22:48 | 政治・国際

 今年は「戦後80年」なのだそうで、諸々のメディアで特集が組まれていたりします。確かにアメリカとの戦争終結から80年が経過したことには違いないのでしょう。ただ日本が加担した戦争は80年前のそれだけではなく他にも色々とあるはずです。太平洋戦争は「悲惨な戦争」として語り継がれているわけでもありますが、それ以外の戦争をどう思っているのか、私は常々疑問に感じるところです。

 明治以降の外国との戦争としては、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、シベリア出兵、日中戦争から太平洋戦争、イラク侵攻、アフガニスタン侵攻などが挙げられるでしょうか。ここで反省の対象として想起されるのは専らアメリカとの戦争に限定されているところですが、その他の戦争と何が違うのかを考えることは日本が何を過ちとしてきたかを測る基準になると言えます。

 ではアメリカとの戦争は他の戦争と比べて何が違うのか。まず第一は「負けたこと」です。他の戦争は勝ちきれなかったとしても日本国内へ攻め込まれるまでは至らないものでした。そしてもう一つは「アメリカが相手であること」ぐらいですかね。だからアメリカとの戦争に限定された日本の反省とはすなわち「二度と敗北はしない(攻撃あるのみ)、二度とアメリカには逆らわない」という誓いなのだと解釈することが出来ます。

 しかし80年前の戦争以外にも、反省すべき点はないのでしょうか? 今の世論は80年前の鬼畜米英が鬼畜中露に変わっただけ、たしかに「アメリカとは二度と戦わない」という強い決意こそ窺えるものの戦争そのものへの忌避感は見られません。むしろ満蒙ならぬ台湾は日本の生命線と語る政治家も出るなど「暴支膺懲」の方は盛り上がっており、「陣営を間違えないように」という思い以外は皆無のようです。

 原爆やパレスチナ問題で顕著なのは、その攻撃がアメリカやイスラエルによって行われたものである場合、専ら主体をぼかして伝えられることです。あたかもそれは天から突如として降ってきたように語られる、加害国への非難に繋がらないような「配慮」が窺われます。それほどまでに日本の「陣営」に対する意識は強い、「敵」と見なした国への憎悪や蔑視とは裏腹に、「味方」と見なした国をかばう意識もまた深く根付いていると言えるでしょう。

 トランプは、アメリカ以外の国にとっては概ね良い大統領だと私は思います。「概ね」と留保したのは中東の国々にとっては前任者と同レベルという話で、逆にネオコンのアメリカの靴を舐めることに悦びを見出してきた国──日本など──にとっては良い機会を与えてくれる存在です。これまで日本はアメリカの世界戦略における不沈空母の役割を担っていましたが、その重要性を当のアメリカ大統領が理解していない今以上に日本が自立するチャンスはないはずです。

 アメリカと戦い敗れた80年前の戦争を唯一の反省対象として回顧し続けるのか、それとも他の戦争をも悔悟するのか、これは完全な分岐点であるように思います。80年前の戦争だけしか反省していないから、日本が攻める側の戦争、アメリカの側に付く戦争に対しては(昨今のウクライナを傭兵とした戦争のように)専ら官民あげて賛同の声しか聞こえてこないような有様になるのではないでしょうか。

 一方でネオコン達の本尊であった当のアメリカではトランプという異端者が大統領となってしまい、ヨーロッパでは「アメリカへの追従」から「自国の軍拡」へと舵が切られ始めています。4年後にはどうなるか分からないにせよ、少なくとも大きな転換点であることは間違いありません。では日本はどうするのか、このまま対米追従を続けるのか、80余年前の軍拡路線に回帰するのか、それとも隣国との協調という初めての道へと踏み出すのか、選ぶべきチャンスは今まさに訪れています。

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自由律俳句11

2025-03-29 22:51:23 | 文芸欄

 

「おたがいさま」は 一方通行

― 管 理人 ―

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誰でも出来る仕事

2025-03-24 21:10:47 | 雇用・経済

 「良い大学」みたいに言われたとき、それは何を指しているでしょうか。要素としては色々とあるわけですが、最大公約数的な評価は「偏差値が高い(入試難易度が高い)」ところに落ち着くかと思います。偏差値が高く、入学するのが難しい大学ほど世間での評価も上になる、この辺は滅多なことで揺らぐものではありません。

 昨今ではそんな入試難易度の高さを誇る大学も推薦枠が増える一方で、真っ当に入学試験を受けて合格する人が少数派になりつつあるなんて話も聞きます。大学の世評は一般入試の難易度の高さによって担保されているにも関わらず、そこに推薦枠で潜り込む人には「ただ乗りだ」とのやっかみの声も聞こえるところ、これは分からないでもないでしょうか。

 ともあれ「入るのが難しい大学」の卒業生ともなれば就職活動における肩書きとしては圧倒的、そんな大学に推薦枠で入り込むような要領の良い生徒ともなれば名高い大企業からも引く手あまたかも知れません。一般入試枠が引き上げる偏差値によって大学の威光を高め、これを上手く利用した推薦枠の生徒が就活のジャンプ台として飛び出して今度は大学の就職実績を稼ぐ──みたいなスパイラルもありそうです。

 そして次なる「良い就職先」もまた然りで、これは大学以上に様々な要素が入り交じりますが結局は「入るのが難しい会社」、「就くのが難しい職業」に落ち着く部分もあるのではないでしょうか。入るのが難しい大学ほど世評が高くなるのと同じように、就職先もまたそこに至る難易度が高ければ高いほど世間で重んじられる、そんな傾向は見て取れるように思います。

 逆に言えば「入るのが簡単」だと世間的には価値の低いものと見なされるわけです。大学なら入学後の教育をどう頑張っていようと誰でも入れるような偏差値の低いところは軽んじられる、就職活動でもプラスにならなかったりしますし、就職先であれば尚更のこと、それは給与水準に強く反映されるものでもあります。しかし当たり前のように続いていた現状が持続可能なものであるかは別の話、というのが私の意見です。

 賃金水準は何によって決まるのかと考えたとき、それは「就職難易度」が最も当て嵌まりやすいのではないでしょうか。例えばビジネスの収益性はどうかと言えば、行政や軍事、警察や消防など全く稼いでいないはずの職業は別に低賃金ではありません。医者だって収益性は一部の悪徳を除けば国の定める医療費次第なのですから、この辺は「稼げるかどうかよりも」政治的に必要と見なされているかどうかの違いでしかないわけです。

 では社会的に必要と見なされているかどうかは賃金に影響するのかというと、福祉や清掃、運送や建設といった分野の賃金は他業種に比べて低い水準にあります。この辺は世の中に必要不可欠であり、もし従事者がいなくなってしまえば我々の社会は破綻してしまうわけですが、だからといって軍や警察のように採算無視で維持されるようなことはなく、各事業者と従事者の踏ん張り次第となっているのが実態です。

 一方で世の中に不必要どころか害しかもたらさないような職業、例えばコンサルタントなどは高給を得ているケースが多かったりします。社会に不必要でも誰かが高値を付けることはあるのですが、それがどこから来ているのかと考えたときに根源として「就職難易度」が大きく関わっている、就くのが難しい仕事は高い対価が支払われるのにふさわしいと信じられている……というのが私の説です。

 この対極として「就職難易度が低い」仕事は軽んじられる、世の中に必要不可欠であっても「誰でも就ける仕事」は給与水準を低く据え置かれる傾向にあります。ところが「誰でも就ける仕事」は就職が簡単なだけで業務内容自体はむしろ負担が重い、必ずしも「誰でも続けられる仕事」ではなかったりする、この違いを有識者として扱われている人ほど理解できていないのではないでしょうか。

 「就職するだけなら」介護の仕事は簡単かも知れません。ただ就職した先の業務は、決して誰にでも続けられるものではないわけです。にもかかわらず「就職難易度」が賃金の決定要因となっているが故に仕事はきつくても給料は低い、こうなると人が集まらなくなる、人が集まらない業界は採用のハードルを下げざるを得なくなる、しかし採用のハードルを下げることで輪をかけて就職難易度が下がって世間的に軽んじられる──そんな悪循環が出来上がっているように思います。

 就職難易度ではなく社会的な必要性に基づいて賃金が定められ、そうした仕事には軍や警察と同様に採算性を考慮せず行政がお金を出せば、介護士や保育士、ドライバーや建設作業員の不足も今ほどではなかったことでしょう。しかし現実には、仕事の負担の割に賃金が低いので人が集まらない、人が集まらないので採用のハードルが下がる、それで就職難易度が下がって「誰でも(就職)できる仕事」として低賃金も当然と扱われる、負のスパイラルから抜け出すことが出来ていません。

 市場原理に任せてしまえば、低賃金⇒就職難易度低下⇒世評の低下⇒低賃金という連鎖を断ち切るのは難しいです。それが滅んでも構わない職種であるならば問題ないのですが、往々にして悪循環に陥っているのは社会に必要不可欠な仕事であることが多いのではないでしょうか。こうした社会に必要な=公益性の高い仕事は政治的に予算を割り当てる以外にあり得ないのですが──そのためには我が国の主要政党と財務省に蔓延る家計簿的な財政観を破壊していくことが前提になるのかも知れません。

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野党共闘

2025-03-23 21:18:33 | 政治・国際

福岡知事に服部氏の再選確実 与野党相乗り、3新人破る(共同通信)

 任期満了に伴う福岡県知事選は23日投開票され、無所属現職の服部誠太郎氏(70)=自民、立民、国民、公明、社民推薦=が、無所属の弁護士吉田幸一郎氏(45)=共産支持、諸派の政治団体代表新藤伸夫氏(76)、無所属の自営業藤丸貴裕氏(48)の3新人を破り再選を確実にした。

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ウクライナの独立を願う

2025-03-17 21:30:59 | 政治・国際

 トランプ政権に変わって隠し立てにされることは少なくなりましたが、昔から日本はアメリカより多くの干渉を受けてきました。日米合同委員会や日米経済調和対話といったアメリカの要望を一方的に聞く仕組みも確立されていますし、そうでなくともアメリカがどこかの国を敵と認定すれば日本もこれに倣う、アメリカが制裁措置を決めれば日本も同調する、もちろん韓国と対立したり遠洋での捕鯨に固執したりと例外はありますが、総じて日本はアメリカの意向に沿って国の方向を決めてきたわけです。

 もし仮に、我々は独立国であり他国の干渉を受ける謂れはない、として独自の全方位外交へと方針を転換したらどうなるでしょうか? 治外法権を認めず米軍兵士を日本の法律で裁いたらどうなるでしょうか? さらには日本から外国の軍隊を退去させたらどうなるでしょうか? アメリカとの関係は悪化することが必至ですが、逆に中国やロシアといった隣国からは歓迎されることでしょう。日本が独立国であることを望んでいるのはどこの国か、逆に望んでいないのはどこの国か、そこは意識されるべきと思います。

・・・・・

 通貨安競争や投機マネーの流入出によって左右されるところはありますけれど、為替レートは国の経済力によって調整されるものです。ところが多国間で通貨を統一してしまうと域内での調整が利かなくなり、強い国はより強く、弱い国はより弱くなる方向に力が働きます。典型的なのが一時期のドイツとギリシャの関係で、本来なら自国通貨が高くなって輸出が不利になるはずのドイツが制度の恩恵を受け黒字を積み重ねる一方、本来なら自国通貨が安くなって輸出が有利になるはずのギリシャは赤字を積み重ねました。

 ここで独立した国であれば積極財政によって国の経済を立て直すことも出来るのですが、EU加盟国の場合は国と言っても実際には帝国内の自治体の一つに近い、自国の財政方針を自国で決めることが出来ず、EU帝国の差配に従うことが求められてしまいます。結果ギリシャは国外投資家の資産を守るため緊縮財政を強要され、経済を破綻させる結果に陥りました。そうでなくともEU加盟で手放さなければならない主権は財政に関わるものだけではなく、諸々の分野においてEU基準の遵守が求められる、自国だけの意思では物事を決められなくなるわけです。

 このEUにアメリカを加えたNATOも然りで、これに加入すれば「敵」と「味方」はNATOが決める、国内には外国の軍隊を駐留させることにもなります。自国の外交上の主権はNATOに上納せねばならなくなってしまうのですが、それでも加盟を望む国があるのは、例えるなら反社に加わりたがる人がいるのと同じようなものでしょうか。暴力団に入ることで失う自由もあるのは言うまでもありませんけれど、しかし組の看板でブイブイ言わせたい人もいるわけです。NATOに入れば「俺に逆らったらバイデンの親父が黙っちゃいねぇぞ」みたいに振る舞える、そう期待されているのでしょう。

・・・・・

 とりわけロシアは、アメリカの意向に付き従うばかりの国──日本を独立国ではないと批判しています。これはもっともな話ですが、ロシアの批判はもう一つの隣国にも向かっていることは意識されるべきでしょう。つまりウクライナとの最大の争点はNATO加盟の是非であり、これに反対する側がロシアでした。現実にはNATOの「予約済みの」国家としてウクライナは主権の少なからぬ部分をNATOに譲り渡してしまった節がある、3年前には停戦でまとまったはずのイスタンブール合意がイギリスの横槍で一方的にキャンセルされ、今はトランプへの代替わりで右往左往している、こうしたNATO諸国の意向次第のウクライナを最も嫌がっているのはどこの国かは考えられてしかるべきです。

 バイデンが思惑を隠して正当化のための装いを十分に整えて行動してきたのに対し、トランプは何もかも隠すことなくアメリカ側の欲望を表に出しています。いずれもウクライナから自国の利益を引き出そうとしている点は変わりませんが、そこで評価を異にしてしまう人がいるのはバイデンの象徴するネオコンの論理に飲み込まれているから、でしょうか。いずれにせよウクライナの資源はアメリカ陣営によって収奪される運命にある、ウクライナの平和を守るためとして実質的にはNATOがウクライナを支配しようとしているのが現状です。

 問題はこれが、当のウクライナ政府によって招かれた事態だと言うことです。経済的に弱い国がEUに加盟すれば「強い国」に富を吸い上げられる、「敵国」と隣接する国がNATOに加盟すれば前線基地として自国民は鉄砲玉にされる、いずれも上部団体の意向が優先となり自国だけでは物事が決められなくなる、EU/NATOに加盟するとはそういうことです。「自分が停戦を実現させた」という実績を作りたいトランプとは異なり、先代組長の意志を継ぐマクロンやスターマーなどの舎弟達はウクライナが戦争を続けられるように支援を強化すると息巻いていますけれど、その結果はどうなるのでしょうか。

 反対にウクライナがEUやNATOの支配に服さない「独立した」国であることを最も望んでいるのは、言うまでもなくロシアです。そしてアメリカに付き従う日本を批判し独立国であることを求めるのと同じように、ロシアはウクライナにも独立国であること=NATOに加盟しないことを求めているわけです。ウクライナを鉄砲玉に仕立て上げたいEU/NATOと、NATOの杯を貰ってブイブイ言わせたいウクライナ政府、隣国に独立国であることを求めるロシア、こうした観点で物事を捉え直してみると、真に望ましい着地点もまた見えてくるように思います。

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野党共闘

2025-03-16 21:16:19 | 政治・国際

千葉県知事選挙 現職の熊谷俊人氏の2回目の当選確実(NHK)

開票状況について、選挙管理委員会の発表はまだありませんが、NHKの事前の情勢取材や16日に投票を済ませた有権者を対象に行った出口調査などでは、自民党、立憲民主党、日本維新の会、公明党、国民民主党のそれぞれの県組織と市民ネットワーク千葉県が支持した現職の熊谷俊人氏が、共産党が推薦した小倉正行氏(72)らを大きく引き離して極めて優勢です。

また、期日前投票をした人への調査でも熊谷氏が小倉氏らを大きく上回っていて、熊谷氏の2回目の当選が確実になりました。

 

千葉市長選挙 現職の神谷俊一氏 2回目の当選確実(NHK)

開票はまだ始まっていませんが、NHKの事前の情勢取材や16日に投票を済ませた有権者を対象に行った出口調査などでは、自民党、立憲民主党、公明党、国民民主党のそれぞれの県組織が推薦し、日本維新の会の県総支部が支持した現職の神谷俊一氏が、共産党が推薦した新人の寺尾賢氏(48)らを大きく引き離して極めて優勢です。

また、期日前投票をした人への調査でも神谷氏が寺尾氏らを大きく上回っていて、神谷氏の2回目の当選が確実になりました。

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これが大陸の制度であったら非難囂々

2025-03-15 21:24:52 | 編集雑記・小ネタ

 ウクライナを舞台にしたロシアとNATOの戦争が浮き彫りにしたことの一つには、大半の人は歴史を知らないし知ろうともしないことが挙げられると思います。ほんの10年前の経緯すら理解せず、ただ場当たり的に一方の陣営に都合の良いプロパガンダを並べるだけ、大学教員もそこに嬉々として加担するのが現状です。こんな有様なだけに日本では韓国や台湾の歴史も知らない、それぞれがいつまで軍事独裁政権を築いていたかも知らない、ただ「西側」に属しているが故に「民主主義国」と扱っている人が大半なのではないでしょうか。

 

台湾、軍事裁判制度を復活へ 頼総統が発表 中国の浸透やスパイ活動の脅威に対応(フォーカス台湾)

(台北中央社)頼清徳(らいせいとく)総統は13日、現役軍人の犯罪行為を裁く「軍事裁判法」を全面的に見直し、軍事裁判制度を復活させると発表した。国軍に対する中国の浸透やスパイ活動の脅威に対応するためだと説明した。

(中略)

台湾では2013年に軍事裁判法が改正され、同法の適用範囲が「戦時」のみに限定された。そのため、平時では軍事裁判制度は運用されていなかった。

頼総統は、軍事裁判制度を復活させ、軍事裁判官を第一線に戻し、捜査機関や司法機関と協力して現役軍人の反乱や利敵行為、機密漏えい、職務怠慢、命令に背く(抗命)などの軍事犯罪の刑事事件を処理すると説明。今後、陸海空軍刑法に抵触する現役軍人の軍事犯罪事件は軍事法院(裁判所)で裁くとした。

 

 昨年は州じゃない方のジョージアで外国政府の資金で活動する組織を規制する法律が可決され、これが「ロシアの法律」と呼ばれて日米欧各国からの強い非難を呼びました。ただし同様の法律はロシアだけではなくアメリカにもカナダにもあります。そして今回の台湾総統府による軍事裁判の復活はどうでしょうか? 台湾は「西側」と見なされているが故に「民主主義を守るため」として特に問題視されてはいないようですが、逆に中国など欧米の支配に服さない独立した国で同様の制度が敷かれた場合は、世間の反応も異なるはずです。

 この辺は制度の是非ではなく、純粋に「どちらの陣営に属しているか」次第で「国際社会」の受け止め方が違う、同じ法律でも「民主主義を守るため」であったり「民主主義を脅かすもの」であったりするわけです。こうした扱いは公正なものではありませんし、不公正に扱う側がどれだけ屁理屈を重ねて自らの立場を正当化したところで、不公正に扱われた側がそのことを忘れることはないでしょう。日米欧が「国際社会」と呼んでいる排他的仲良しグループに属する国と、「グローバルサウス」とレッテルを貼っている国々の意識の差は、こういうところから生まれていると思います。

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ウクライナの法律

2025-03-09 21:37:23 | 政治・国際

 トランプ政権が発足して色々とバイデン体制からの転換が図られているわけですが、これまで嬉々としてアメリカの靴を舐めてきた日欧の政治指導者達が挙って反トランプに転じているのを見るのは痛快と言えるでしょうか。アメリカ第一主義の泰斗である岸田文雄前首相は「これまで米国が主導してきた自由で開かれた国際秩序を変えてしまう可能性がある。それが私たちがめざした世界の姿だとは私は考えない」と語ったとか。こうした自国民を顧みない政治家の理想世界が破壊されて行くこと以上に、世界人類にとって喜ばしいことはありません。

 

トランプ米政権、英語が「唯一の公用語」初指定 スペイン語排除が加速(産経新聞)

トランプ米政権は1日、英語を米国の唯一の公用語に指定する大統領令に署名した。米メディアによると、30以上の州が英語を公用語にしているが、連邦レベルで指定されるのは初めて。これに伴い、英語を使用しない住民に対する言語上の支援などを政府機関に義務付けた従来の大統領令は撤回される。

トランプ政権は公用語指定に先立ち、ホワイトハウスの公式サイトやX(旧ツイッター)でのスペイン語の使用を停止していた。スペイン語を排除し、中南米からの不法移民に圧力を強める動きがいっそう加速しそうだ。(時吉達也)

 

 一方こちらの大統領令は、他の話題に埋もれ気味のようです。まぁ日本の場合は英語を公用語に指名する企業もある、大学では教授言語の英語化が推進され、英会話学校のまねごとや語学留学の斡旋で世評を高めているところも珍しくないだけに、あまり抵抗がないのかも知れません。英語こそが世界の共通語なのだ、誰もが英語を話せるようになるべきなのだ、という認識はむしろ日本でこそ根付いているところもあるでしょう。しかるに現実のアメリカには英語以外、特にスペイン語を母語とする居住者が少なくないわけです。そうした人々の排除がトランプ政権の狙いと考えられますが、さて──

 昨年、州じゃない方のジョージア(以下グルジアと略)では外国からの資金提供によって活動する組織を規制する法律が可決され、西側メディアからは専ら「ロシアの法律」として報道されました。曰く「ロシアにも同様の法律があるから」とのこと。ただ補足するのであればアメリカにも同様の法律は古くから存在していますし、カナダでも同年に同様の法律が可決されました。アメリカの法律はアメリカの法律、カナダの法律はカナダの法律として何ら問題視されない一方、グルジアの法律は「ロシアの法律」と呼ばれ「民主主義の後退」などと非難されたわけですが、これぞ「自由で開かれた国際秩序」というものなのでしょう。

 本陣たるアメリカと衛星国であるカナダの場合、外国からの資金で活動する団体は「敵」であり、それに対する防衛のための法律は民主主義を守るものと位置づけられます。一方、調略対象であるグルジアや香港の場合、外国からの資金で活動する団体とは第一にアメリカの「民主化」工作機関ですから、これを阻止されることは好ましくないわけです。2014年のウクライナではアメリカの国務次官補も公然と参加した「革命」によって選挙で選ばれた大統領が追放されたりもしましたが、それを他国でも続けたいアメリカ陣営と、阻止したいグルジア政府との間で意見が一致しないのは当然のことと言えます。

 このウクライナの2014年クーデター後にはナチス協力者の名誉回復など様々な転換が行われました。そうした一環で「ウクライナ語を唯一の公用語とする」ことも定められたのですが、いかがでしょうか。アメリカでは同様に「英語を唯一の公用語」とする大統領令が署名されたとのこと、グルジアの例に倣えば、これを「ウクライナの法律」と呼んでも過言でははないように思います。ともするとウクライナ側に厳しい、ロシア寄りであるなどと偏った人々から悪罵されるトランプですけれど、決してそんなことはない、ウクライナに歩調を合わせている部分もある、今回のウクライナと同質の大統領令などはその表れだ、と言えます。

 アメリカでスペイン語を母語とする人が多いのは移民が多いから、ウクライナの場合は元々ロシア系住民が多数派の地域(ハリコフやオデッサ)を拠点とする共産主義陣営がキエフを征服してウクライナ・ソビエト社会主義共和国を形成し、その国境線のまま分離独立してしまったからと、両国では事情が少なからず異なります。ただ現在の国境線を維持する限りは国内で別の言語を母語とする人々とも共生しなければなりません。自国の最大版図を維持しつつも単一民族・単一言語の国家を目指せば反発は当然、内戦が起こっても致し方ないと私は思います。

 ウクライナでは歴史的経緯から、ソ連崩壊後もロシア語が事実上の第二公用語として定着していました。それがクーデター政権によって明確に否定され、行政サービスなど公共の場からロシア系住民の排除が図られたわけですが、トランプ政権もまた同じことをやろうとしていると言えます。ウクライナが手本としていたであろうエストニアやラトビアでも同様に、エストニア語やラトビア語を話せないロシア系住民には国籍を与えないなどの排除措置があり、結果として両国は目出度くEUとNATOへの加盟を果たしました。そして今、トランプは英語を話さない住民の排斥を進めようとしていますが──これぞまさにヨーロッパの普遍的な価値観をトランプが共有していることの証と評価されるべきではないでしょうかね。

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労組の役割

2025-03-03 21:25:23 | 雇用・経済

 さて巷では「春闘」が始まっていると伝えられています。一部の人にとっては重大事のようですが、大多数の人にとってはどうなのでしょうか。昔はいざ知らず現代は労組加入者も多数派ではなくなり、組合の存在しない大企業も珍しくなくなりました。そこで組合のある企業だけが賃上げを勝ち取り、組合のない企業は賃金据え置きのまま──という状況であれば労組や春闘の意味も疑う余地はありません。しかし実態は、せいぜいアクティブファンドとインデックスファンドの違いくらい、といった印象です。短期的にはアクティブファンドが成功を収めることもあるのですが、しかし長期的に見ると???

 実際のところ、昨今で目立って賃金が上がったのは「新卒」です。仮に労組の働きによって組合員の賃金が上がった会社はあるとしても、それ凌駕する上昇幅で新卒者の賃金を引き上げる企業が相次いでいます。結局は市場原理の力が大きい、企業が希少な若年層を奪い合えば新卒者の給料は劇的に上がる、雇用側が社員を囲い込もうとすれば賃金は上がる、逆に誰も採用したがらない年代の社員であれば賃金を下げても大丈夫、それが現実ではないでしょうか。組合潰しで悪名高いヘンリー・フォードが従業員の給与を倍増させることで熟練労働者を確保していたことは、まさに象徴的です。

 私が今の勤務先に入社した頃、「組合の強い会社だよ」と言われました。確かに、御用組合の強い会社なんだなと今では実感しています。事実上のユニオンショップ制で採用時は人事の手ほどきにより組合へ全員加入、会社が決めた労働条件の変更にも組合が全従業員を代表して同意することで社員の不満を封じ込める、それが労組の役割となっています。もちろん春闘などでも猛々しい言葉を並べて会社に要求を突きつけるフリをしてはいますが、結局は同業他社に及ばない賃上げ率で「苦渋の決断」を下すのが恒例と、もっぱら「プロレス」と呼ばれているのが現状です。

 組合の役員なんてのもPTAの役員と同じで、誰かが志を持って引き受けるのではなく罰ゲームのように持ち回りで扱われていたりします。誰もが組合に不満を抱きつつも、それを変えようとするのも難しい、と言ったところでしょうか。これを思えば日本の議会選挙なんてのはマシな方なんだな、とも思います。投票という負担ゼロの行動によって支配層の力関係が変わる、こんな手軽な仕組みは労組の世界にはありませんから。政治の世界には投票という意思表明の手段がある、しかし労組の世界では自分が矢面に立って本業そっちのけで行動しないと何も変えられない、日本の政治も大概ですが、労組はもっとまずい気がしますね。

 前々から、労組の世界の政権交代も必要だと私は主張してきました。共産党の影響を排除すべく作られた御用組合の「連合」が多数派として労働者を代表する権利を与えられているのが現状ですけれど、その結果として賃金の上がらない時代が長らく続いてきたわけです。そして組合員でも何でもない実績ゼロの新卒者の給与ばかりが大幅に引き上げられたり等々、労組が期待されている役割を果たしてこなかったことに議論の余地はありません。これが政治の世界であれば与党「連合」は支持を失って下野しても良さそうなところ、しかし労組の世界に政権交代の仕組みは……

 やるとすれば、まず連合傘下の御用組合から脱退する、その上で会社と戦える組合に加盟するか、自分で組合を作るかですね。この過程では必然的に、御用組合とも戦わねばなりませんし、その同盟者である会社の人事とも戦うことになります。選挙で野党に票を投じるような、そんな生半可な気持ちで出来ることではないでしょう。ことによると真に「民主化」が必要なのは労組の世界、野党に投票するぐらいの軽い気持ちで執行部の人事を入れ替えられるような、そんな仕組みが時代に求められているのかも知れません。

 何はともあれ、春闘を前に勤務先の組合からは「時間外拒否闘争」の指令が下されています。読んで字のごとく「時間外労働を拒否する」ということなのですが、これに意味があると思っている組合員は誰もいないことでしょう。ストライキのように本当に会社に打撃となるような取り組みであれば、会社からの譲渡を引き出すだけのカードになりますけれど、では時間外の拒否で会社が苦しむかと言えば、そこは職場次第、少なくとも私の勤務先では会社が困るようなことは全くなかったりするわけです。

 社員に時間外労働させて増産に取り組んでいる最中の工場などであれば、確かに時間外労働の拒否は会社の痛手となります。しかし経営側が残業代の削減に取り組んでおり、残務があれば社員が自分で対処しなければならないような職場では、時間外の拒否など会社から見て痛くも痒くもありません。工場労働者が中心の時代であれば、組合が指示するような方法でも会社への圧力となったことでしょう。しかし現在の産業は工場労働からは大きく様変わりしたものが多数派を構成しており、むしろ時間外の拒否は社員の首を絞める要素の方が強いとすら言えます。

 春闘期間において本当に会社へ圧力をかけたいのであれば、やるべきことは逆のはずです。雇用側も歓迎する時間外の削減など、「闘争」からは全く相反する試みでしかありません。だから反対のことをやる、積極的に残業する「生活残業闘争」の方が戦術としては正しいわけです。会社が賃上げに応じないのであれば、組合員はダラダラと会社に居座って残業代を請求する、早く帰れと言われても仕事が残っていると主張して応じない、こうなれば会社側も何らかの譲歩を考えざるを得ないことでしょう。もし労組が本当に会社と戦う気があるのなら、組合員には積極的に残業させるべきですね。それをやらない組合は、労働者ではなく雇用主の方を向いています。

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