他所様のブログを見て知ったのですが、かの産経新聞がホワイトカラー・エグゼンプションを巡ってwebアンケートを実施していました。この辺を記事にしようかと思っていたら、すでにアンケートは締め切り済みでした。 昨日の段階で投票だけはしておいたのですが、投票期日を確認しておけばよかったかも。
・3K新聞アンケートコーナー
web上での結果発表は1月1日の予定だそうで
・際限なき労働を可能とするホワイトカラーエグゼンプションにノーを!
情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士様、アンケート項目とホワイトカラー・エグゼンプションの解説があります
さて、結果が楽しみです。さすがに労働者に直接の収入低下を招くこの法案、これが国民の支持を得るとしたら、日本人は重度のマゾヒストだと思いますね。危険な香りのする国、ニッポン!
同じくweb上の調査ではこの制度を知っている人はサラリーマンの9%しかいないというデータもあります。知られていないのなら賛成も反対もない? でも、わざわざ産経新聞のサイトまで行ってアンケートに答えるような人なら制度を知った上で回答しているでしょうか。
私には納得できないのですが、御上の手綱捌きがうまいのか貧困層の中には特権階級ではなく中産階級に怒りの矛先を向ける人が少なくありません。一見すると中産階級サラリーマンを狙い撃ちにするかに見えるこの制度、中産階級への怨恨に満ちあふれた血迷える貧困層からはむしろ歓迎されるかもしれません。
しかしホワイトカラー・エグゼンプション(長い!)、先行するアメリカでは年収10万ドル超の富裕層を対象としていたはずですが日本での当初案は年収400万円がボーダーラインでした。うわ、日本人の平均所得を下回ってる! それが正式に提出される段階となると具体的な数値は盛り込まれず、そして今月20日の段階では「管理職の平均的な年収水準」、そして翌日の厚生労働省の報告に曰く「対象者の年収要件の具体的な額を労働基準法の中には盛り込まず、政省令で規定するとした」。要するに政省令次第でどうにでもなる?
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/20061221a4790.html?C=S
以前にも書きましたが国旗・国歌法が制定された際に当時の首相であった小渕恵三氏はこう言いました。「法制化にあたり、国旗の掲揚等に関し義務付けをおこなうことは考えておらず、したがって、現行の運用に変更が生ずることにはならない」「義務付けを考えていない」「運用の変更を考えていない」。その結果はごらんの通り、最初は影響は小さいとして油断を誘い、そこからなし崩しに範囲を広げていく、ホワイトカラー・エグゼンプションの適用範囲も際限なく拡大すると見た方がいいでしょう。
国民に不利益な政策を続ける政府を断固として支持し続ける献身的で忠実な、臣民としか呼びようのない国民も人も少なくないだけに不安はありますが、それでも今回のアンケート、反対の回答が多数を占めるのではないかと予想しています。しかし、もし反対意見が多数派を形成したとしたら、何か影響力を行使できるでしょうか。
以前、毎日新聞のこれもやはりwebアンケートコーナーで、中国と仲良くすべきか?と言うのがありました。これは回答者の男女比が大きく偏ったアンケートでしたが、仲良くすべきでないとする意見が多数を占めました。この結果にコメントをつけたのが石田衣良氏、「今回のこたえは数字のうえでは「しなくていい」派が圧倒的だったけれど、応募しなかった多数のサイレントマジョリティを考慮にいれて決定させてもらいます。中国・韓国とは仲良くしたほうがいい。」
この「サイレントマジョリティ」論はネット上ではボロクソに言われました。まあたしかに強引な論法なのですが、ヘイトスピーチ系のブログがここぞとばかりに飛びついて笑いものにしていたものです。
しかし、日本のサイレントマジョリティ論には偉大な先達がいるわけです。安保闘争に日本が揺れていた時代、当時の首相であった岸信介は言いました。「今回のデモは規模のうえでは「安保反対」派が圧倒的だったけれど、デモに参加しなかった多数のサイレントマジョリティを考慮にいれて決定させてもらいます。安全保障条約は締結したほうがいい。」
・・・いや、口調はさすがに少し違います。実際に岸信介が口にした言葉はすなわち「声なき声を聞く」でした。でも要するに、反対意見が多数派を閉めているけれど、声を上げていない人は賛成している、そんな人たちを考慮に入れれば賛成派が多数派なんだと、そう取り繕っているわけです。どこぞやの作家がサイレントマジョリティ云々というのはどうでも良いことですが、一国の首相がそんな論法を使っちゃお終いですね。
さて、安倍晋三首相が元祖サイレントマジョリティ岸信介の孫であることは周知の通り。そこでもし、ホワイトカラー・エグゼンプションには反対が多数派であるとの結果が出たらどうするでしょうか。「今回のこたえは数字のうえでは「導入に反対」派が圧倒的だったけれど、応募しなかった多数のサイレントマジョリティを考慮にいれて決定させてもらいます。ホワイトカラー・エグゼンプションは導入したほうがいい。」う~ん、間抜けですが、奴なら言いかねない・・・
ちなみにトヨタは先走って制度導入の模様、それはまだ合法じゃねーぞ。
トヨタ自動車は26日、事務系企画職社員を対象に、実際に働いた時間と関係なく、仕事の成果に応じて賃金を支払う裁量労働制を来年4月から導入することを明らかにした。技術系に続く導入。松下電器産業、日立製作所なども導入しているが、国内有数の大企業であるトヨタの導入で、仕事を成果で評価する動きが加速しそうだ。
同社が導入する裁量労働制は非管理職向けで、事業運営にかかわる仕事をする従業員が対象。当初は東京本社で自動車業界の情報を収集する渉外業務を担当する10人程度の社員を対象にする。メンタルヘルスや長時間労働が恒常化していないかなど問題がないことを確認し、対象職場を広げる。