女子学生の就活は本当に悲惨?それとも楽勝?
優秀でも門前払いを食らう「女性差別」は今も健在か(DIAMOND online)
私は就職内定状況調査よりも文部科学省が単独で実施している学校基本調査を信用しています。同調査は全大学を対象としており、就職率は卒業生ベースで算出しています。
この調査によると、2010年3月卒業者の就職率は60.8%、男女別では男子56.4%、女子66.6%。あれ?こちらは10ポイントも差がついています。
前年の2009年は、全体68.4%、男子64.6%に対して女子は73.4%とこちらも上。
就職率の推移をみていくと、2000年以降、11年連続で男子学生就職率を上回っています。
これは就職率データだけでなく、採用担当者の実感ともほぼ合致しています。
「黙って評価ポイントだけ積み重ねていくと、女子学生が上位を独占して男子学生は入ってこない」
(中略)
優秀な女性社員が増え、転職市場が活発になり、男性社員の勤続年数も短くなれば、女性採用を排除する理由はどこにもありません。まして、採用時点では女性の方が上と言えます。
これは多くの採用担当者が証言していますし、私も取材していますと、女子学生の方が、上だなと思えてしまいます。優秀という方もいますし、優秀でなくても男子学生に比べて元気が良く、もし採用担当をして一緒に働きたいと思わせるに十分な方が多いのです。
ところが、企業からすれば、女性社員ばかりを増やすわけにはいきません。そのため、男女比のバランスを取るため、評価ポイントの低かった男子学生に点数調整をかけ、評価ポイントの高かった女子学生を落とす、いわゆる逆差別も水面下では相当あると言っていいでしょう。そこまでやっても、男子学生の就職率は女子に負け続け、2010年は史上初めて10ポイントもの差が付きました。もうちょい、がんばれ、男子学生。
2000年以降、11年連続で女子学生の方が就職率が高いのだそうです。いかに嘘八百の週刊ダイヤモンドとはいえ、このデータ自体は文科省が出しているものですから、たぶん正しいのでしょう。ではどうして女子学生の方が就職率が高いのか、しかも2010年卒業にいたっては10%に到達するなど差が開くばかりなのは何故なのか、その辺を考えてみたいと思います。引用元では「採用時点は女子の方が上」と一括りに断言したあげく「がんばれ、男子学生」などと結んでいるのですが、これでは就職難を個人の責任に帰そうとする筆者の意思を露わにしているだけです。まぁ経済誌ならそれで済まされるのでしょうけれど……
考えられる要因は色々とあります。今や自分1人の稼ぎで家族を養えるような甲斐性のある男を捕まえることが著しく困難な時代となっただけに、女性が就業へと駆り立てられるようになったこともあるでしょう(20代の女性は上の世代よりも専業主婦志向が強いという調査結果もありますが、それは就職「せざるをえない」現状への反動でもあるはずです)。男性側でも「女は家庭」という考え方は薄れ、「女も働け」という方向にシフトしつつあります。就業機会の問題もさることながら「就業圧力」とでも呼ぶべきものの強まりもまた、少なからず影響しているように思われます。
ただ明らかになっているのは就職の「率」であって「質」ではないことにも注目すべきです。本当に望む先へと就職できたのか、20年後、30年後も安心して働ける職場に就職できたのか、そこを問わずにただ就職「率」だけを並べることで見落としてしまうものも少なくないのではないでしょうか。昨今では数値上の就職率を引き上げるべく、本人の希望など無視して中小ブラック企業へと学生を押し込めようとする動きが随所に目立ちます。これがもし「率」は低いはずの男性は出世コース、「率」が高く見える女性は使い捨て雇用に偏っているとしたら、「がんばれ、男子学生」などとおちゃらけている場合ではないはずです。
雇用の二極化が進んだことが、女性の就職率を引き上げている可能性は考えられないでしょうか。昔から総合職と一般職のように、出世コースと十年後までには寿退社していることが既定路線のコースなど、同じ就職であるにしても未来は分かれていたわけです。そして昨今では、正規採用が抑制される一方で非正規雇用ばかりが増大したり、中核業務に携わる人間が絞り込まれる一方で、周縁的な業務にしか触れさせてもらえず、「仕事に必要なスキル」とやらを身につける機会を得られない立場に置かれる人も急増しています。定年まで勤めることを想定した採用が抑制される一方、使い捨てにすることが前提の採用機会ばかりが増えた、その辺りが男女の就職率にどう影響しているか等々、色々と考える余地はありそうです。
総合職の門戸は、狭いながらも女性にも開放されてきました。その一方、一般職は今なお男子禁制の領域であったりします(参考)。引用元記事が伝えるところとは裏腹に、今なお管理職は男性、女性は末端の業務という考えは根強いのかも知れません。そして管理職候補としての採用が減って、末端の仕事を担う人ばかりを増やそうとすると――結果的に女性の就業機会が増えるわけです。派遣でもそう、日雇い系や肉体労働系はいざ知らず、事務系の派遣ともなりますと完全に女性優先の世界です。ホワイトカラーの領域では派遣が増えれば増えただけ、男性よりも女性に就業機会が増えます。将来的な昇給や昇進の機会に乏しいポジションほど女性が優先的に配置される傾向が強く、そして昇給や昇進とは無縁の雇用が増えている、その結果として女性の採用が増えた、女子学生の就職率が男子学生の就職率を上回るようになったものとは考えられないでしょうか? 不安定雇用ばかりを増やして「雇用を増やした」と小泉一派は踏ん反り返ったものですが、昨今の女子学生の就職率の優位はどう見るべきでしょうね。