「なぜ私が・・」の思い、今はより分かる かつて、「痴呆(ちほう)」と呼ばれて偏見が強かった認知症と、私たちはどう向き合えばいいのか。長谷川和夫さんは半世紀にわたり、専門医として診断の普及などに努めながら、「認知症になっても心は生きている」と、安心して暮らせる社会をめざしてきた。89歳の今、自身もその一人だと公表し、老いという旅路を歩んでいる。 医師 長谷川和夫(はせがわかずお)さん1929年生まれ。認知症介護研究・研修東京センター長などを歴任し、医療やケアの普及、教育にあたった。現在は同名誉センター長。 ――自身の認知症を疑ったきっかけは、どんなことでしたか。 「これはおかしい、と気づいたのは1年くらい前かな。自分が体験したことに、確かさがなくなった。たとえば、散歩に出かけ、『かぎを閉め忘れたんじゃないか』と、いっぺん確かめに戻る。確かに大丈夫だ。普通はそれでおしまい。でも、その確認したこ