アントニオ猪木さん 吉田豪・評『兄 私だけが知るアントニオ猪木』猪木啓介 アントニオ猪木の末弟・猪木啓介初の著書。変わり者が多い猪木兄弟の中では常識的な人で、この本は身内だから知り得たことをかなり客観的に語っていて素晴らしかった。 なにしろ猪木&倍賞美津子が新宿伊勢丹前でタイガー・ジェット・シンに襲われた伝説の事件に居合わせたりした当事者が、「リング上ではなく路上で事件を創り出すという発想は、プロレス界の常識を超えていた。本当の『狂気』を持っていたのは、シンではなく兄貴のほうだったのだ」「私や美津子さんは一切、事前に襲撃が起きることなど知らされていなかった」と証言していくんだから、そんなの面白いに決まってる。 彼は猪木の事業“アントン・ハイセル”の代表でもあったので、新日本プロレスのクーデター首謀者・山本小鉄について「兄貴はある時期から山本さんを『ジャマモト』と呼ぶなど、先輩でもある小鉄さ