「動物の言語」という言い回しを耳にすることは多い。わかりやすくはあるが、どこか釈然としない。本書は、動物たちの鳴き声を「言語」と呼ぶべきか否かという問いに取り組んだ労作である。「動物にも言語があり、私たちはそれに気づいていないだけだ」とする立場がある一方、「言語は人間に固有の能力だ」とする意見もある。前者は後者を人間中心主義と批判し、後者は前者を擬人主義と退ける。著者は、酷寒から熱帯、水中から
「動物の言語」という言い回しを耳にすることは多い。わかりやすくはあるが、どこか釈然としない。本書は、動物たちの鳴き声を「言語」と呼ぶべきか否かという問いに取り組んだ労作である。「動物にも言語があり、私たちはそれに気づいていないだけだ」とする立場がある一方、「言語は人間に固有の能力だ」とする意見もある。前者は後者を人間中心主義と批判し、後者は前者を擬人主義と退ける。著者は、酷寒から熱帯、水中から
長年にわたり医療と研究に従事してきた心臓専門医が書き上げたスケールの大きな著作である。著者の視野は広大だ。本書の記述は心臓に関する科学的・医学的な説明にとどまらない。古今東西の文物を紹介しつつ、古代から現代にいたるまで人間が心臓をどのように認識してきたのかを一大パノラマにして展開してみせる。そこに描き出されるのは、心臓がたどる数奇な運命である。心臓が重要な器官であることは明らかだ。各地に残
なぜ、その解法を思いつくのか?数学ができる人とできない人の差はどこにあるのか? 数学者の芳沢光雄さんが、話題の数学書『いかにして解法を思いつくのか「高校数学」』(上・下)を執筆する背景にあった「数学における13個の考え方」による「発見的問題解決法」という着想をもとに、「数学の土台となる考え方」を身につけるための思考法を紹介します。 この記事では「13個の考え方」から「特殊化して考える」という思考法を、高校数学の問題をもとに考えていきます。 発見的問題解決法とは何か?以前の記事では、大学生から小学生まで「やり方」の暗記による学習法が目立つ一方で、用語の理解や試行錯誤の問題を軽んじる傾向があることを全国規模の学力テストなどの事例をもとに示した。 また、最新刊となる本の中では「新しいものを創造する時代」であることを踏まえ、「試行錯誤の精神」を礎(いしずえ)にして、戦後の高校数学で扱った全項目を例
■私たちを熱愛・冒険・創造・成功に駆り立て、人類の運命をも握るドーパミンとは??■ ドーパミンは、よく言われる「快楽物質」ではない。 脳の2つの回路 ーー「欲求ドーパミン」によって〈期待〉を駆り立て、「制御ドーパミン」によって〈達成への力〉をもたらすのだ。 ・創造力の源 ・先を見越した戦略 ・恋愛が長続きしないわけ ・依存症・精神病のリスク ・飽きっぽさ、充足感の欠乏 ・支配と服従の関係 ・変化に適応できる柔軟さ ・保守・リベラルの気質 ・人類の大いなる進歩と破滅 ・・・ すべて「もっと!」を求めてやまないドーパミンが鍵を握る。 そして、未来志向のドーパミンと「いまここ」志向のH&Nとのバランスこそ、脳の潜在能力をもっとも解き放つ。 第1章 愛―恋愛から友愛へ 第2章 依存症―「欲求ドーパミン」の駆動力 第3章 支配―「制御ドーパミン」の達成力 第4章 創造と狂気―すごい発想が生まれる源
私たちはなぜ眠り、起きるのか? 長い間、生物は「脳を休めるために眠る」と考えられてきたが、本当なのだろうか。 発売即重版が決まった話題のサイエンスミステリー『睡眠の起源』では、「脳をもたない生物ヒドラも眠る」という新発見、さらには自身の経験と睡眠の生物学史を交えながら「睡眠と意識の謎」に迫っている。 (*本記事は金谷啓之『睡眠の起源』から抜粋・再編集したものです) 私たちの本来の姿はどちらか私たち人間は、だいたい1日のうち16時間ほど起きていて、8時間ほどを眠って過ごしている。1日の3分の1を、眠って過ごしているのだ。起きている姿と眠っている姿──どちらも私たちの生きる姿である。はたして、“本来の姿”はどちらだろうか。 生物は眠っている方がデフォルトで、起きている方が特別である。 2021年、ショウジョウバエの睡眠を研究するワシントン大学のポール・ショーは、Science誌の取材に対し、そ
著者:森田 紘平出版社:名古屋大学出版会装丁:単行本(278ページ)発売日:2024-12-23 ISBN-10:481581175X ISBN-13:978-4815811754 内容紹介: 物理学分野の個々の事例に基づくボトムアップ式議論と、従来の哲学分野におけるトップダウン式議論とを往還しつつ、「創発」の伝統的な捉え方を塗り替える。古典力学と量子力学との関係、熱力学と統計力学との関係をあらためて考え直す、気鋭による力作。 昨年末に出版された科学哲学の新刊『創発と物理』。SNSでの反響も大きく、早くも増刷となりました。今回は著者・森田紘平先生による書き下ろしの自著紹介を特別公開いたします。おそらく多くの方がまず疑問にもつであろう「創発とは何なのか?」というところからかみくだいて解説していただきました。 解像度を“下げる”からこそわかる? 創発とは何か創発とは「部分を無視することであらわ
私たちはなぜ眠り、起きるのか? 長い間、生物は「脳を休めるために眠る」と考えられてきたが、本当なのだろうか。 「脳をもたない生物ヒドラも眠る」という新発見で世界を驚かせた気鋭の研究者がはなつ極上のサイエンスミステリー『睡眠の起源』では、自身の経験と睡眠の生物学史を交えながら「睡眠と意識の謎」に迫っている。 私たちはなぜ眠るのか?眠りとは何だろうか。夜が更けると眠くなり、毎晩寝床に就く。眠っている間には、夢を見ることもある。人間の三大欲求に食欲、性欲、そして睡眠欲がある。食欲は体の維持に必要なエネルギーを得るため、性欲は子孫を残すため、では睡眠欲は何のためだろうか。人間は二晩以上眠らないと精神に異常をきたすようになり、ネズミを2週間にわたって起こし続けると死んでしまう。睡眠には、何か重要な役割があるに違いない。 私たちは、眠りをどう認知し解釈してきたのだろう。 古代ヨーロッパにおいて、眠りは
ダーウィンの進化論はれっきとした科学理論であるのに、それが人間という動物種に一指でも触れるや否や激しい論争を呼び起こす。それは進化論が「二つの顔」すなわち「堅固な科学理論であると同時に哲学的議論を包含してもいる」からである。そのためダーウィンは『種の起源』(1859年)の刊行から『人間の由来』(1871年)の出版を決断するまで、長い「人類学的沈黙」を守った。本書はこの進化論をめぐるダーウィン右
人間は、身体だけでなく、「心」も長い年月をかけて進化を遂げてきた。しかし、「うつ」や「陰謀論」など、人間の心のネガティブな性質は、進化の過程で淘汰されることなく、今現在も私たちを苦しめている。人間の“心のダークサイド”はどのように私たちに影響を及ぼしているのだろうか? ここでは、生物学研究者の小松正氏が、進化心理学の観点から人間の“心のダークサイド”について綴った『なぜヒトは心を病むようになったのか?』(文春新書)より一部を抜粋。近年注目を集めるようになった「サイコパス」とは、どのような人を指す言葉なのだろうか?(全2回の2回目/1回目から続く) ◆◆◆ 「サイコパスは人口の約1%」少数派であることが有利な理由 集団中のサイコパスの頻度は1%程度と言われており、かなりの少数派です。サイコパスにとっては、少数派であることがむしろ有利になるという仮説があります。サイコパスにとって都合がよいのは
「ホラー映画の科学」 [著]ニーナ・ネセス ホラーは苦手、とスキップするのはちょっと待ってほしい。たしかにホラー映画の話だが、人間の恐怖心のしくみがよくわかる本なのだ。 ホラーは好き嫌いがはっきり分かれるジャンルだが、その差をわけるものはなんだろう。人がなにかを「生理的に嫌」というときの「生理」には、たいてい経験や学習の刷り込みも混じっている。それなら恐怖は学習で克服できる? 本書は、ホラー映画の中で危機に瀕(ひん)したり切り刻まれたりする登場人物たちとその状況を見つめる観客、その双方の体のなかでなにが起きているのか、両者の脳や神経のメカニズムを解説しながら、恐怖についてのさまざまな疑問に迫っていく。恐怖体験のトラウマへの対処法は? メディアの暴力シーンは人間を暴力的にする? 私たちはなぜストレスを感じつつ怖いものを楽しむのか?――さまざまな実験結果は、科学による解明よりも、科学のあてにな
市民社会の扉を開けたロックは、最先端の医学を学び、親友ボイルの実験室で研究に励み、ニュートンと手紙を書き合った。科学と社会思想は絡み合って歴史となる。これからの科学技術の真の目的を考えるために、人間が近代以降に築き上げてきた価値観のありようを歴史的背景とともに学ぶ。物理学者による長年のリベラルアーツ講義録。 林 哲介(はやし てつすけ) 1942年生まれ。1966年京都大学理学部物理学科卒業。 1992年より京都大学教養部教授、同総合人間学部及び大学院人間・環境学研究科教授、同高等教育研究開発推進センター教授。この間、総合人間学部長、高等教育研究開発推進センター長、京都大学副学長等を務めた。 2006年より星城大学学長、京都工芸繊維大学副学長、京都三大学教養教育研究・推進機構特任教授を経て、現在、京都大学名誉教授。 専門:物性物理学、大学教育論。京都大学理学博士。光物性研究と基礎物理学教育
あなたが「思っている」と思っていることは、全部でっちあげだった!「心の奥底には何かが隠されている」と、誰もが思いたがる。心理学者や精神分析学者たちは、暗がりに潜むものを暴き出そ… あなたが「思っている」と思っていることは、全部でっちあげだった! 「心の奥底には何かが隠されている」と、誰もが思いたがる。 心理学者や精神分析学者たちは、暗がりに潜むものを暴き出そうと奮闘してきた。 だが、神経科学や行動心理学の驚くべき新発見の数々は、隠された深みなどそもそも存在しないことを明らかにしている。 「無意識の思考」などというのは、神話にすぎなかったのだ。 わたしたちの脳は、思考や感情や欲望を「その瞬間に」生み出している……行動の理由も、政治的信念も、そして恋心さえも。 本書が紹介する数々の驚くべき実験結果を目にしたとき、そのことを疑うことはもはや不可能になる。 世界はどのように存在し、自分はどんな人間
「脳は眠りで大進化する」 [著]上田泰己 現代は不眠社会である。特に多くの日本人は睡眠不足のまま、仕事とネットに時間を奪われている。だが「目覚め」ばかりが政治的・経済的に評価され、眠りが軽んじられる社会はおかしい。今こそ〈睡眠の政治学〉が必要ではないか。 その一方、日本は意欲的な睡眠研究者を輩出してきた。その第一線で活躍中の生命科学者が、最新の動向を語ったのが本書である。専門的な内容を含むので、私もすべて理解できたわけではないが、ざっとブラウズするだけでも有益である。 眠りは死や停滞を思わせるが、実はかなり活動的なものらしい。著者によれば、脳は覚醒時に「探索」し、その集めた情報を睡眠時に間引いて「選択」する(それはダーウィン進化論のモデルに通じる)。加えて、眠りの働きも一様でない。ノンレム睡眠は脳のシナプスを形成し、レム睡眠ではそれが整理されるという新説は興味深い。 さらに、眠りは時間生物
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