書評家・杉江松恋が新鋭作家の注目作をピックアップ。 今回は、跳躍力のある一冊。 『万事快調 オール... 書評家・杉江松恋が新鋭作家の注目作をピックアップ。 今回は、跳躍力のある一冊。 『万事快調 オール・グリーンズ』書評 危なっかしい。だが、それがいい。 波木銅『万事快調 オール・グリーンズ』(文藝春秋)は、第二十八回松本清張賞の受賞作である。作者の波木は1999年生まれで、本作を執筆したときには大学生だったという。 喩えるならばあちこちのバーが抜き去られたジェンガだ。大事な部分がところどころなくて、ぐらぐらしている。登場人物たちの人生も、小説の構造も。今にも崩れ落ちそうだ。その不安定さゆえに目が離せなくなるのである。今にも足場が崩れて誰かが落ちていくのではないかと気になって、ページをめくってしまうのである。 舞台となるのは茨城県東海村の底辺工業高校だ。同じ二年生のクラスに属している三人の女生徒が主たる視点人物となる。三人でクラスの女子全員。そういう男女比率なのである。ある日の教室風景から幕
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