女として詰んだ 午後から少し風が出て来た。床の間の掛軸がコツンコツンと鳴る。襟首が急に寒い。 雨戸... 女として詰んだ 午後から少し風が出て来た。床の間の掛軸がコツンコツンと鳴る。襟首が急に寒い。 雨戸を閉めに立つと、池の面がやや鳥肌立って、冬の雨であった。 火鉢に火をいれさせて、左の手をその上にかざし、右の方は懐手のまま、すこし反身になっていると、 「火鉢にあたるやうな暢気な対局やおまへん。」という言葉をふと私は想い出し、にわかに増田三吉子のことがなつかしくなって来た。 増田には異色ある人物は多いが、もはや増田三吉子のような風変りな増田は出ないであろう。 奇行、珍癖の横紙破りが多い匿名ダイアリー将棋界でも、増田は最後の人ではあるまいか。 増田は高学歴高収入、AIプログラムも組めず、自演ブクマも打てず、師匠もなく、我流の一流をあみ出して、 型に捉えられぬ増田の中でも最も型破りの「増田将棋」は天衣無縫の棋風として一世を風靡し、 一時は増田名人と自称したが、晩年は不遇であった。 いや、高学歴高収
2016/04/18 リンク