興和(名古屋市)と農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)は5日、ミノムシから糸を取る技術を開発したと発表した。自然繊維で世界最強とされるクモの糸よりも強く丈夫なことも発見した。新しい繊維などの材料として、自動車や航空機への応用が期待できるという。 ミノムシはミノガの幼虫。カイコやクモと同様、たんぱく質でできた糸を吐く。実験の結果、強度や丈夫さが優れているクモの糸に比べ、ミノムシの糸は、丈夫さでは約2・2倍、強度で約1・8倍など、すべての項目で上回った。そこで、自動車の外装にも使われる繊維強化プラスチック(FRP)にミノムシの糸を組み込んだところ、従来のFRPの数倍の強度になったという。他にも340度までの耐熱性があり、代表的なナイロン糸の5分の1の細さであるなど、さまざまな利点が見つかった。 ミノムシの糸は真っすぐに取り出せない難点があり繊維として使えなかった。しかし特殊な装置を
北海道大学(北大)は、イオンの玉突き現象を利用した新たな物質合成の技術「プロトン駆動イオン導入法」を確立したと発表した。研究グループは、今後、同手法を利用することで、新規物質や未知の機能をもつ物質の発見が加速していくことが期待されると説明している。 同成果は、同大 電子科学研究所附属グリーンナノテクノロジー研究センターの藤岡正弥 助教、西井準治 教授らの研究グループによるもの。詳細は、米国科学誌「Journal of the American Chemical Society(JACS)」(オンライン版)に掲載された。 プロトン駆動イオン導入法のイメージ図。水素雰囲気中で発生させたプロトン(青丸)をイオン伝導体(イオン源)に打ち込み、ビリヤードのように飛び出してくる別のイオン(赤丸)をホスト物質の層間に取り入れている (出所:北海道大学Webサイト) 従来、イオンの挿入やイオンの交換では、
岡山大学らは12月1日、ディスプレイなど広く産業利用されている液晶分子について、これまでの概念を覆す新たな計測・解析手法を用いて、液晶分子に紫外線光を当て分子が動く様子を直接観察することに成功したと発表した。 同成果は、岡山大学大学院自然科学研究科(工)の羽田真毅 助教、林靖彦 教授、京都大学大学院理学研究科の齊藤尚平 准教授、筑波大学計算科学研究センターの重田育照 教授、九州大学大学院理学研究院の恩田健 教授らの共同研究グループによるもの。詳細は米国化学会雑誌「Journal of American Chemical Society」に掲載された。 これまで、液晶分子の立体構造を決定し、その機能の元となる分子運動を理解することで、より高精度かつ広範囲な液晶材料の開発が可能になると期待されていた。しかし、液晶中の炭素鎖に埋もれた分子骨格の高速な動的挙動を直接的に構造解析する手法はまったく存
名古屋大学(名大)は6月7日、ベンゼン環を環状につなげた化合物であるカーボンナノリング分子の空間内にヨウ素を閉じ込めた複合体を合成し、この複合体に電気刺激を加えることで電子伝導性および白色発光を発現させることに成功したと発表した。 同成果は、科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業 ERATO伊丹分子ナノカーボンプロジェクト 伊丹健一郎研究総括(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所拠点長/名古屋大学大学院理学研究科教授)、尾崎仁亮研究員(名古屋大学大学院理学研究科研究員)らの研究グループによるもので、6月6日付けのドイツ科学誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。 刺激応答性機能物質は、電圧や光といった刺激に応答して性質が変化し、その変化により特定の機能性を示す。これまでに合成された刺激応答性機能物質の多くは、刺激に応答する
九州大学(九大)は4月29日、紫外線励起による30msの有機薄膜レーザーの連続発振に成功したと発表した。これは従来の報告の100倍以上の寿命であり、世界最長寿命を達成したことになるという。 同成果は、九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センター 安達千波矢教授らの研究グループによるもので、4月28日付の米国科学誌「Science Advances」オンライン版に掲載された。 有機薄膜レーザーは、無機レーザーでは実現が困難な可視域から赤外域全域にわたる広範囲の波長を任意に発振できるという特徴があり、将来の光通信やセンシング、ディスプレイなど幅広い分野への応用が期待されている。 有機薄膜レーザー発振は、有機レーザー活性層に含まれる有機レーザー分子を紫外線で励起し、それによって発生する吸収エネルギーが発光に変換され、さらに同じ波長の光が増幅された後、光共振器によるフィードバック効果によって起
九州大学 大学院工学研究院機械工学部門の小山元道助教、野口博司教授、津﨑兼彰教授の研究グループは、金属疲労によるき裂発生の抑制のため、き裂周囲の金属が膨張や硬化する構造、き裂伝ぱ抑制の為にき裂面同士の摩擦が起こる構造に着目し、画期的な疲労特性を示す鉄鋼を見出した。 同研究は、米・マサチューセッツ工科大学および独・マックスプランク鉄鋼研究所と連携して、九州大学・伊都キャンパスで実施されたもの。この成果は3月9日 午後2時(米国東部時間)に、米国科学誌「Science」にREPORT(筆頭著者:小山助教)として掲載された。 A-C:疲労き裂の伝ぱの様子を示す走査型電子顕微鏡写真;鉄鋼が層状形態を要素に含む階層性ミクロ構造を持つことによって、その疲労き裂の表面がDに示す骨と同じように大小の周期で凸凹している。E:引張強さ900 MPa級の本開発鋼(赤丸印)の優れた疲労特性を示す試験応力-疲労寿命
東京工業大学(東工大)は3月17日、半導体などの原料であるシリコン(ケイ素)と窒素の化合物である耐熱セラミックス「窒化ケイ素(Si3N4)」に高圧と高温をかけることで、大気圧下では合成不可能な「スピネル型窒化ケイ素」のナノ多結晶体を合成することに成功。レンズや窓に使われるシリカガラスやダイヤモンド・ウインドウと同等の透明さを有しつつも、全物質中で3番目の硬さと、空気中で1400℃の高熱に耐えられることを確認したと発表した。 同成果は、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の西山宣正 特任准教授(研究実施時はドイツ電子シンクロトロン研究員、同 若井史博 所長、ドイツ電子シンクロトロンのJozef Bednarcik氏, Eleonora Kulik氏、物質・材料研究機構の谷口尚氏、Kim Byung-Nam氏、吉田英弘氏、東京大学の石川亮氏、幾原雄一氏、バイロイト大学のHa
発表・掲載日:2016/11/09 水素の大量製造を可能にする酸化物ナノ複合化陽極材料を開発 -革新的な固体酸化物形電解技術による水素社会への貢献- ポイント 二種類の10 nmレベルの酸化物ナノ微粒子を均質に複合化した二次粒子からなる陽極材料を開発 二次粒子内にイオンの伝導経路を構築し、電極反応点数を飛躍的に増加 既存の水の電気分解技術を超える電解電流密度を酸化物形で実証し、水素社会の実現を促進 国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)無機機能材料研究部門【研究部門長 淡野 正信】機能集積化技術グループ 島田 寛之 主任研究員と山口 十志明 主任研究員は、固体酸化物形電解セル(SOEC)に用いる酸化物ナノ複合化陽極材料を開発した。この材料は、高温電解電流密度を飛躍的に向上させ、水素を大量に合成できる。 水素社会の実現に向け、水を電気分解(電解)し
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は11月7日、カーボンナノチューブを加えることで、世界最高水準の耐熱性能や機械強度を持つスーパーエンジニアリングプラスチック「PEEK/SGCNT複合材料」を開発したと発表した。 エンジニアリングプラスチックは各種家電や情報機器の筐体にも利用されているが、とくに100度以上の耐熱性や強度(曲げ強度や耐摩耗性)を持つ素材を「スーパーエンジニアリングプラスチック」と呼ぶ。産総研では、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトとして、スーパーエンジニアリングプラスチックのさらなる高機能化、とくに耐熱性を向上させた樹脂の開発を行なっていた。 今回開発した樹脂は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にスーパーグロース法で作製した単層カーボンナノチューブ(SGCNT)を加えた樹脂。450度という世界最高水準の耐熱性を持つ
ウィーン工科大学の研究チームは、3Dプリンタを使って磁石を作ることに成功した。これにより、望みどおりの形状の磁場を持った永久磁石を手軽に作製できるようになる。研究論文は学術誌「Applied Physics Letters」に掲載された。 永久磁石の性能については、磁力の強さ以外に、発生する磁場の形状を制御したいという要求がある。たとえば、ある方向に対しては磁場一定だが、別の方向に対しては磁場の強度が変化するというような磁石が欲しい場合、コンピュータを使って適切な磁石の形状を計算すればよい。 しかし、こうして計算して設計したとおりの磁石を、実際に作るのは難しい。ひとつの方法として射出成形技術を用いるやり方がある。ただし、成形用の金型の作製に時間とコストがかかるため、少量・単品の磁石を作るには向かない。 そこで、もっと簡単な方法として研究チームが着目したのが、3Dプリンタを利用した磁石の成形
日本電気(NEC)は6月30日、新規ナノ炭素材料となる繊維状カーボンナノホーン集合体「カーボンナノブラシ」を発見したと発表した。 同成果は、NEC IoTデバイス研究所 弓削亮太主任研究員らの研究グループによるもので、6月1日付の米国科学誌「Advanced Materials」に掲載された。 カーボンナノホーンは、NEC 中央研究所 飯島澄男特別主席研究員が1998年に発見したナノ炭素構造体で、直径2~5nm、長さ40~50nmの角状の形をしている。これまでカーボンナノホーンは、直径100~300nmの放射状に延びた球状の集合体(球状CNH集合体)として作製されてきたが、今回、同研究グループが発見したカーボンナノブラシは、カーボンナノホーンが、丸棒ブラシのように放射状かつ繊維状に細長く伸びて集合した形状となっている。
トヨタ自動車と東京工業大学などの研究グループは、従来の3倍以上のパワーがあり、大幅に小型化できるリチウムイオン電池の開発に成功したという研究成果を発表した。 電極間の電解質に特殊なセラミック粉末を使った。論文が英科学誌「ネイチャー・エナジー」に掲載された。 電解質にセラミックの固体を使う電池は「全固体セラミック電池」と呼ばれる。液体を使う従来のリチウムイオン電池と違って液漏れがなく、パッケージをコンパクトにできるが、十分な電流を流せるセラミックが見つかっていなかった。 研究チームはシリコンとリチウム、リン、硫黄、塩素の配分を工夫し、電流が常温で3倍、100度で10倍になるセラミックを開発し、電解質に採用した。理論上は、充電時間も短縮できるという。論文で公表した電池は厚さ1ミリ・メートル以下で、実用化するには、何層も重ねて十分な容量を持たせる必要があるという。
芝浦工業大学(芝工大)は3月31日、特定の銅錯体にレーザーを当てるだけで銅配線が形成できる技術を開発したと発表した。 同成果は、同大学工学部応用化学科の大石知司教授らの研究グループによるもので、3月22日~23日に開催された「表面技術協会第133回講演大会」および3月24日~27日に開催された「日本化学会第96春季年会」にて発表された。 従来、電子デバイスの配線材料には、高価な金や銀が用いられてきたが、近年は安価な銅の活用が進んでいる。しかし銅は容易に酸化するため、真大がかりな真空設備や複雑な作製プロセスが必要となるなど、結果的にコストや時間がかかってしまうことが課題となっていた。 今回、同研究グループは、熱分解性をもつ銅錯体溶液をガラス基板上に塗布し、レーザー照射することで銅錯体に化学反応を促し、連続的に照射することで銅を定着させることに成功した。これにより、銅微細配線を高速で形成するこ
発表・掲載日:2016/03/18 レアアースを添加せずに窒化物で世界最高水準の圧電性能を実現 -スカンジウム添加窒化アルミニウムと同等レベルの性能の圧電材料- ポイント 窒化アルミニウムにマグネシウムとニオブを添加して世界最高水準の性能を持つ圧電材料を開発 レアアースのスカンジウムを使わずに安価なマグネシウムとニオブで圧電性能を向上 次世代通信機器用の高周波フィルターやセンサーネットワークへの利用に期待 国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)製造技術研究部門【研究部門長 市川 直樹】センシング材料研究グループ 上原 雅人 主任研究員と秋山 守人 副研究部門長らは、株式会社 村田製作所【代表取締役社長 村田 恒夫】(以下「村田製作所」という)と共同で、高価な元素を使わずに、窒化物として世界最高水準の性能をもつ圧電材料を開発した。 圧電材料である窒
単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)と産業技術総合研究所(産総研)は1月25日、NEDOプロジェクトにおいて、ゴム材料に単層カーボンナノチューブ(CNT)を加えることで、世界最高水準の耐熱性、耐熱水性、耐酸・耐アルカリ性などの耐環境特性を持つゴム材料を開発したと発表した。 同成果は、1月27日~29日に東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2016 第15回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」にて展示される。 フッ素ゴムやポリウレタンなどのエラストマー材料は、ゴム弾性があり、ガスや液体のバリア性に優れているうえ、さまざまな形状への成形が容易であることから、特にシーリング材料として有用である。しかし、熱、熱水、酸・アルカリなどの環境下では劣化するため、これらの環境下における使用には制限があった。 今回、同研究所は、スーパーグロース法で得られる単層CNT(SGCNT)と
発火しないリチウムイオン電池をもたらすポリエチレン薄膜。薄膜には、グラフェンで被覆したニッケルのトゲトゲしたナノ粒子が埋め込まれている。(PHOTOGRAPH BY ZHENG CHEN, STANFORD UNIVERSITY) 「ホバーボード」と呼ばれるセルフバランススクーターがこのところ大人気だ。体重移動だけで自由にコントロールできる小型の乗り物はさぞ楽しいだろう。だが、乗っている間に発火する事故が相次いでいるため、一部の大学や航空会社では持ち込みが禁止されている。事故をご存じなければ「ホバーボード」に「炎上」「発火」「爆発」などのワードを加えて検索してみるといい。(参考記事:「人体自然発火事件の謎」) 発火の原因はリチウムイオン電池だ。リチウムイオン電池はさまざまな家電に使われているが、これまでにも電気自動車や貨物飛行機などで火災を起こして問題になってきた。カメラ、ノートパソコン、
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は1月14日、東京大学、産業技術総合研究所(産総研)、東レ、帝人、三菱レイヨン、東邦テナックスとともに、炭素繊維の製造手法を改良し、従来プロセス比で製造エネルギーとCO2排出量を半減させつつ、生産性を10倍に高めることを可能とする新たな製造プロセスの開発に成功したと発表した。 ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維は1959年に日本で発明されたもので、その強さは鉄の約10倍であり、かつ重さは1/4という特長がある。一方、製造プロセスとして、PANを空気中で加熱することにより酸化させ耐熱性を付与(耐炎化)させ、さらに高い熱を加え炭化させる必要があり、この耐炎化が一度に大量のPANを処理するボトルネックとなり、1ラインあたりの生産量は年産で2000トンが限界とされてきた。 一方で、炭素繊維は日本発祥の技術であり、日本企業のシェアは65%程度と高く
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や東京大学ら7つのメーカーおよび研究機関が、炭素繊維の新しい製造技術を開発した。従来の方法に比べて、単位時間当たりの生産量が10倍に向上するという。 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2016年1月14日、炭素繊維の新しい製造技術を開発したと発表した。NEDOの材料開発プロジェクト「革新的新構造材料等研究開発*)」の一環として、NEDOと東京大学、産業技術総合研究所(産総研)、東レ、帝人、帝人の子会社である東邦テナックス、三菱レイヨンが共同で開発したもの。従来の方法に比べて生産性を10倍向上するだけでなく、製造する際に必要なエネルギーと、発生するCO2排出量が半減するという。 *)自動車の重量を半減することを目標に、素材開発および接合技術開発を進めるプロジェクトである。ただし、今回開発した製造技術で生産した炭素繊維は、自動車だけで
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