アランは、パリの名門校などフランス各地の高校で、哲学の1教師として生涯を貫いた人物。本名はエミール・シャルチエ。1高校教師でありながら社会的な事件に対して積極的に発言し、政治活動や講演活動にも参加。新聞への寄稿も精力的に行い、連載した文章は膨大な数に及ぶ。 『幸福論』はそんなアランが、第1次世界大戦前後に執筆した文章のなかから、「幸福」をテーマとしたものを集めて編纂した書だ。プロポ(断章)と呼ばれる、短くて独立したコラム的な形式で書かれているのが特徴で、『幸福論』は93編のプロポから成っている。 形式の斬新さだけではなく、内容も難解で観念的な哲学書とは異なり、一見平易な言葉で書かれた思索の本となっている。日常生活の具体的な事柄を例に幸福になるための指針やヒントが語られていて、日本でも長年多くの読者に親しまれている。 獣医で熱心な読書家だった父親の血筋を引いたアランは、理系が得意な少年だった