この10年ほどで大后と皇后に関する研究は大幅に進展しました。この分野は女性研究者の活躍が目立ちますが、その最新の例が、 浅野咲「日本古代における皇后の地位と職能」 (『ヒストリア』第307号、2024年12月) 浅野氏は、2024年3月に立命館大学で学位を得たばかりの新進研究者です。 浅野氏は、大后を皇后の前身とする説は見直されつつあるとして、その流れを概説したのち、次期皇位継承ものとなる嫡子の地位創出の必要から皇后という地位が成立したとする遠藤みどり氏の説を妥当なものと評価します。 そして、東アジアにおける皇后・王后の例を先行研究を踏まえつつ検討していきます。初めに古代中国では、皇后は皇帝と一体とされたものの政治的な権限はなく、唯一の支配者である皇帝によって廃立されることもある存在であり、皇帝が後継を決めないまま死去した場合に継承に関与するのであって、皇帝が亡くなって自らが皇太后となった