「10年以上昔だ。俺は一人で売り出そうと躍起になってた青二才だった」 では、『カリオストロの城』のルパンはどうか。 宮崎は、制作にあたって記した「ルパン三世・演出覚書」で「バカさわぎをやって笑わせてくれるルパンは彼の光の部分。だが、その側面しか見ないとしたら、ルパンは誇大妄想の精神病者にすぎない。光をささえている影ともいうべきルパンの真情が見えたとき、ルパンをはじめて魅力ある人物として理解できる」と書いている。かつて表層的な行動の裏側に「ハングリー」を代入したのと同じように、『カリオストロの城』のルパンにもそれにふさわしい内面を見つける必要がある。 『カリオストロの城』でそこに代入されたのは「中年」だった。宮崎は『カリオストロの城』制作のスタンスについて「はっきり中年の意識で作っているんですよね」(「アニメージュ」'81年1月号)と発言している。ハングリーな衝動に突き動かされた若き日は去り