あるひとつの家のリビング・ルームを定点観測しながら、紀元前から西暦2万年の未来までを自在に行き来するグラフィック・ノベル『Here』。 2014年に発売されると、ニューヨーク・タイムズを始めとするメディアを中心に評判を呼び、現在までに20カ国語以上の言語に翻訳されている。時間と空間、そして媒体の枠組みをも越えるこのユニークな作品がどのようにして生まれたのか──著者のリチャード・マグワイア氏に話を聞いた。 ──『Here』では数百ページにわたり、ひとつの部屋の片隅だけを描いていますが、そこに複数のコマが配置されることで、その場所で異なる時間に起きた出来事が同時に表現されています。この手法にはどのようにして至ったのでしょうか? 同じ場所に複数の時間を表示する物語のアイデアが浮かんだのは、当時新しいアパートに引っ越したばかりで、そこに以前住んでいた人のことをよく考えていたからです。そこで漫画のコ