私立学校への授業料補助は、「選択の自由」を重視したシカゴ学派経済学の重鎮ミルトン・フリードマンが「教育バウチャー(クーポン)」という名で提唱し、長く論争のあるテーマだ。このアイデアを起源とし、私立学校の授業料の低減は、学校の選択肢を広げ、私立と公立の間での競争や切磋琢磨を促し、教育の多様化と質の向上をもたらすはず、といわれてきた。 しかし、近年多くの実証研究が積み重ねられた結果、教育バウチャー政策は、競争の理念や市場のアナロジーだけで成果が見込まれる政策ではなく、その成否は制度設計の細部に大きく依存するということが学界のコンセンサスになっている(赤林 2007, Epple, Romano, & Urquiola 2017)。 では、現在予定されている私立高校無償化政策は、すべての子どもに学校選択の幅、そして将来の可能性を広げるのだろうか。私立と公立の間の競争は、教育の質を高めるのであろう