私が2024年春に和歌山市に赴任してすぐ、支局にふらりと現れたさる名士がニヤリとしていわく。「和歌山の人はアポら取らんといきなり来るで。そやからおまん油断してたらあかんで」。確かに気さくな方が多いと感じる。それはありがたいのだが私は神戸市出身で、和歌山は同じ関西圏だから言葉は似ているだろうと思い込んでいた。これが甘かった。 最も驚いたのが、別れ際の「お願いしときます」だ。しときます……!? 押しつけがましく、ぞんざいな印象を受けた。楽しくお話をした後なのにヘンなことを言うなあと思った。ところが和歌山では老若男女が口にする。「頼んどきます」も聞いた。電話で県警本部の若い女性職員に「ではお願いしときます」と言われた時に確信した。そう、これは方言なのだ。 グラフィックデザイナーの傍ら「和歌山弁研究家」として活躍する「いぐっちゃん」こと井口博文さん(62)=和歌山市=にお会いした。ゆっくりのほほん