たち・りゅうし氏=1976年、静岡県沼津市生まれ。駒澤大大学院博士後期課程修了。博士(仏教学)。専門は曹洞宗学、日本禅宗史、禅と文化。現在、駒澤大専任講師、沼津市・曹洞宗龍音寺住職。著書に『園城寺公胤の研究』(春秋社)、共編『蘭渓道隆禅師全集』第一巻(思文閣)、共著『別冊太陽 禅宗入門』(平凡社)がある。 公暁(1200~19)を「くぎょう」と読まないなど考えたこともなかった。このことを最初に疑問に思ったのが、公暁の師である公胤の研究をしていた時のことであった。道元の参師である園城寺公胤に注目して研究をはじめたのが2005年である。法然の『選択集』に反論書を書き、鎌倉3代将軍の源実朝を殺害した公暁の師でもあるなど、当時の仏教界における公胤の位置づけやその関係性に興味を引かれたのである。 公暁は鎌倉2代将軍の源頼家の遺児であり、幼名を善哉と言った。頼家が伊豆で殺された後、北条政子の計らいで尊