母を捨てた。家族と呼べるのは奥様をのぞけば、母と弟の二人になるけれども、実家で暮らす母とは昨春から元旦に十五分くらい顔をあわせたきりであり、弟とは三年近く電話もしていない。母と弟が何をしているのか知らない。弟は勝手に生きていくはず。問題は後期高齢者の母である。母は小さな問題を起こしては後始末を僕に押し付けてくる人だった。弟やその他親族から面倒を見るのは長男の僕の役目と言われ、社会的な枠組みも長男が親の面倒をみるのが当然とされているので、仕方なくその役を引き受けてきた。 だが、僕は母を捨てた。僕が抱えている三大ストレス「家族」「こづかい月一万九千円」「ヤクルトスワローズの戦績」のうちひとつがなくなったのだ。ブラボー!「捨てる」は姨捨山への放棄ではなく、「会わない」「連絡取らない」「気にしない」である。日常生活から親を切り捨てるという意味だ。昨春から続けている。「たまに電話を寄こしなさい。あん