今週は、半導体プロセス連載としてNTV/STVを解説する予定だったのだが、GLOBALFOUNDRIESが4月22日に都内で発表会を開き、ロードマップのアップデートがあったので、予定を急遽変更してその内容をお届けしたい。
GLOBALFOUNDRIESが4月22日に都内で発表会を開催。CTOオフィス アドバンストテクノロジーアーキテクチャ バイスプレジデントのSubramani Kengeri氏が同社の今ロードマップを語った
サムスンが14nm FinFET技術を提供
生産設備や設計を共通化
4月17日、GLOBALFOUNDRIESはプレスリリースを発表し、同社の14nm世代のFinFETプロセスに関し、従来発表されてきた14XMプロセスに代わり、サムスンの開発した14LPE/14LPPと呼ばれるプロセスを提供することを明らかにした。まずは、プレスリリースをベースに全体の話を解説しよう。
下の画像が、今回発表された提携に関する全貌である。サムスンがGLOBALFOUNDRIESに対し、14nm世代のプロセス技術を提供、これに基づいてGLOBALFOUNDRIESはサムスンと同一の14nmプロセスを提供する、というものだ。ちなみに原文(英語版)のプレゼンテーション資料はこちらから入手できる。
当初提供されるのは14nmのDual Gate FinFETを利用した14nm LPEというプロセスであり、20%高い性能、もしくは35%低い消費電力を提供するという。
またTSMCの提供するCLN16FF(16nm FinFETプロセス)は、CLN20SOC(20nmプロセス)と配線層を共用する関係で、ダイサイズそのものはほとんど変わらないのに対し、14nm LPEプロセスでは最大15%のダイサイズ縮小が可能になったとする。
この14nm LPEプロセスと、これに続いて提供される14nm LPPプロセスは、サムスンのFab 1~Fab 3の3拠点と、GLOBALFOUNDRIESのFab 8という、合計4つの工場で提供される予定である。
これにより、複数のメーカー、複数のロケーションで同一のプロセスが提供できることになり、単に供給能力が増すだけでなく、災害などがあった場合でも生産を継続できるメリットが生まれるとしている。これらのFabは完全に同一のプロセスを提供するわけで、原理的には同一の設計でどちらのメーカーにも製造委託できることになる。原理的には、というのはプロセスに依存しないサービス類は当然メーカーごとに違いがあると思われるからだ。
ちなみに、最初に立ち上がるのは14LPEで、次いで14LPPというプロセスが用意される。こちらはやや高速動作するもので、強いて言えば14LPEがローパワー、14LPPがハイパフォーマンスという扱いになると思えばいいだろう。
プレスリリースの中では、AMDのLisa Su氏が「この前例のない協業によって、14nm FinFET技術の製造キャパシティーは大幅に増え、この結果として最先端製造技術を利用したAMD製品の生産能力は増強されることになるだろう」「GLOBALFOUNDRIESとサムスンの協業は、AMDの次世代プロセッシング/グラフィックを搭載した省電力モバイルデバイスから次世代の高密度サーバーやハイパフォーマンス組み込みソリューションまでの製品提供に大いに貢献してくれることになるであろう」というコメントを残している。
実のところこれは中々に面白いコメントである。これだけ読めば、AMDの次世代製品がサムスンで生産される可能性があるように読める。しかし、よく読むとそうしたことをする、とは書いてない。14nm FinFETプロセスの需要が高まっても、その分をサムスンのFabでカバーすることで、GLOBALFOUNDRIESがAMDの生産に支障をきたす心配はない、という意味にも取れるからだ。
すでにAMDは20nm世代製品に加えて14nm世代の設計にも取りかかっているのは間違いないが、極端なことを言えば物理設計が終わってテープアウトしてからどのファウンダリーを利用するかを選択することもできるはずで(実際にこれはないだろうが)、当面はサムスンで生産するかどうかまでは決断していないと考えられる。
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