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「銀色」を含む日記 RSS

はてなキーワード: 銀色とは

2025-05-20

AI小説直木賞を受賞

1

 只野天才──この名前を聞いて、まず「本名なのか?」と疑う人が多いだろう。事実、彼は戸籍上もこの名を持つ。28歳。慶應義塾大学環境情報学卒業新卒電通入社し、三年目にはクリエイティブ部門メディアプランナーとして社内の若手表彰を受けた。だが、そこで燃え尽きたのか、あるいは興味が尽きたのか、彼は「どうにも社風が合わない」という理由であっさりと退職してしまう。

 電通を辞したあと、彼は自らの預金父親経営する資産管理会社から分配金を元手に、港区タワーマンション引っ越した。34階、角部屋、東京湾が一望できる2LDK。広すぎず、だが一人暮らしには十二分すぎる贅沢な空間。そこで彼は、一切働くことなく、しかし「暇すぎて死にそう」という感覚とも無縁に暮らしていた。

 起床は午前10時。最初にやることは、顔を洗ってエスプレッソを淹れること。イタリア製マシンで豆から挽いたものだ。音楽Apple Musicクラシックプレイリスト観葉植物に霧吹きをかけ、洗濯機を回し、ルンバを稼働させる。そのあいだにプロテイン入りのヨーグルトバナナを食す。ルーチンは正確で、常に淡々と、綺麗に整っていた。

 午後になると読書。だが、読書といっても文学ではない。フィナンシャル・タイムズWIREDニューズウィーク。彼が目を通すのは常に「未来」の話題だった。哲学テクノロジー経済といったジャンルで、作家の名を語るようなものではなく、「情報としての価値」に重点を置いた読み方だった。

 夕方からジム高輪のパーソナルジムにて、週三回のメニューを欠かさない。体脂肪率12%。夕食はUber Eatsで取り寄せる。コース料理デフォルトで、時には三万円のディナーを平然とオーダーする。

 この生活に、彼は「満足している」と断言していた。

「なんか、もっと面白いことをやりたくなったんですよ」

 只野がそう言ったのは、ある春の日、都内のあるイベントで久々に顔を出した電通の先輩との会話中だった。彼はワインを飲みながら、ふとつぶやいた。

小説って、AIで書けるんじゃないですかね」

 その場にいた誰もが、冗談だと思った。

 だが、彼は本気だった。ChatGPT、Claude、Gemini。あらゆる大規模言語モデル研究し、出力されるプロンプトの精度を上げていく作業を繰り返した。

 構想3日、調整5日。完成稿の初稿が出力されたのは、思いつきからたった1週間後だった。

 タイトルは『石英の肺』。人間の呼吸器を模倣しようとするAIロボットが、なぜか「吸う」動作可能なのに「吐く」動作けができないという矛盾を抱え、それが社会全体の空気感リンクしながら哲学的に展開されていく──という、ポストヒューマンSFとも言える構成だった。

 彼はこの小説を、日本最大の文学である直木賞に応募した。

 出版経験なし。執筆歴なし。そもそも小説家になりたいと考えたこともなかったという。

 だが一次選考を通過した。

 そして、通過の知らせを受けた翌週、彼はツイートした。

プロンプト家、はじめました。」

 この発言が、後に大炎上を引き起こすとは、まだ誰も知らなかった。

 只野はその後、テレビ出演やインタビューほとんど断っていた。理由は、「面倒だから」。それでも『文藝新潮』とだけは特別に対談を設け、こう語った。

小説を“書く”なんて、もう古いんですよ。人間感情衝動に突き動かされて文字を紡ぐなんて、効率悪すぎる。僕がやったのは、論理的構造テーマ性の設計、そして意味抽象度を操作すること。それをAI文章にしてくれる。もはや“書く”ではなく、“指示する”時代です」

 文学関係者からは怒号が飛んだ。

「ふざけるな」

冒涜だ」

テクノロジー悪用

言語に対する冒涜

 X(旧Twitter)では、#文学を返せ #直木賞終わった が数日トレンドに入り続けた。

 ──だが。

 只野天才作品石英の肺』は、最終選考突破した。

 満場一致だったという。

2

授賞式当日。帝国ホテル大広間は、報道陣と関係者でごった返していた。

 壇上に立った只野は、淡々とした表情でこう語った。

「私の作品が、AIによって書かれたことに違和感を抱く方もいらっしゃると思います。ですが、私はプロンプト家です。私が与えた命令が、AIにとっての筆であり、私は設計図を描いたに過ぎません。にもかかわらず、完成された“家”に価値があるのなら、それを建てた大工ではなく設計者にこそ拍手を送るべきだと、私は考えます

 拍手はまばらだった。

 壇上を降りた彼に近づいたのは、某老舗文芸誌編集者だった。灰皿に煙草押し付けながら、皮肉な笑みを浮かべて言った。

「君は小説家じゃないよ、ただのハッカーだ」

 只野は、まったく表情を変えずに答えた。

小説とは、感情を揺さぶものだと誰が決めました?システムを揺さぶってはいけないのですか?」

 それから数日後、渋谷ヒカリエで開催された受賞記念パーティータキシードを着た只野は、会場中央スポットライトの下で挨拶した。

「私は、今日、ここに文学の“終焉”を宣言します。いや、正確には“次の始まり”と言うべきかもしれません。文学感情記述するものから構造を指示するものへと進化すべきです。AIと共に創ることを拒絶することが“純粋”なのではない。拒絶すること自体が、もはや怠慢です」

 このスピーチがまたしてもネット炎上した。

AIに書かせて賞取って天狗になるな」「これでいいのか直木賞」「文化庁は黙ってるのか」

 だが炎上の嵐の中でも、彼は変わらなかった。

 翌週、表参道の某ギャラリーで行われたトークイベントでも、彼は同じスタンスを貫いた。

「僕の仕事は、“いかに指示するか”なんです。言語は、感情の発露ではない。構造の組み替えです。プロンプトは未来の詩だと、僕は本気で思ってます

 その晩、ネット掲示板のあるスレッド書き込みがあった。

只野天才って、なんでこんなに腹立つんだろうな》

《全部正論なのにムカつくって、逆に才能だよな》

あいつ刺されてほしいわ》

 この最後書き込みが、後に一部で問題視されることになるのだが──それはまた、別の話である

3

イベント当日、渋谷ヒカリエステージ上はまばゆく、只野天才の姿もやけに艶やかだった。

タキシードは特注のトム・フォード蝶ネクタイブリオーニ、ポケットに忍ばせた金のペンカルティエ。何もかもが高級で、調和していて、だが過剰だった。

壇上でマイクを持った只野は、まるでプレゼンのようにスライドを切り替えながら語った。

文学とは、“苦悩の排泄物”ではない。“設計された感情”だ。

 AIに語らせれば、魂は不要かもしれない。だがそれでも人は泣く。ならば、魂って、必要か?」

聴衆の一部は拍手したが、半数以上は腕を組み、黙っていた。

その沈黙の中に、不明瞭な不安が流れていた。

客席最後方の非常口そば、ひとりの男が立ち上がった。

スーツは皺だらけ、足取りは重く、しかし確実だった。

壇上に近づく男にスタッフが反応しきれなかったのは、彼の存在感があまりに“薄かった”からだった。

何者にも見えなかった。ただの、通りすがりの観客。

だが──手には、小さな包丁が握られていた。

照明が一瞬揺れ、次の瞬間、只野の胸元に銀色の軌跡が走った。

時間が止まったようだった。彼はほんの少し顔をしかめ、それから、まるで安心たかのように微笑んだ。

「……やっぱり、そうなるのか」

それが彼の最後の言葉だった。

鮮血が胸元に広がり、ステージに膝をつく。彼の影だけが、すっと沈んでいった。

会場が騒然とし、スタッフが男を取り押さえ、緊急搬送サイレンが鳴るなか、ニュース速報が各局に走った。

『速報:作家只野天才氏、刺殺される/逮捕の男は47歳・自称小説家 黒詩影郎』

テロップは正確だった。

年齢、“自称”の二文字、そして“黒詩影郎”という見るに堪えないペンネーム。

ネットはすぐに湧き上がった。

「黒詩影郎って…中二病にもほどがあるだろ」

「47で“自称小説家”ってことはつまり無職”でしょ」

「これは笑ってはいけないけど、名前で2回殴ってくるな」

だが、只野の死に対するネット空気は、驚くほど整っていた。

「正直、清々した」

あいつの顔見るだけでイラっとしてた。なんかムカつくんだよ、完璧風にしてるのが」

文学バカにした報い。因果応報

Xでは #只野天才 で弔いもされていたが、それ以上に #黒詩影郎 がトレンド1位を奪った。

同時に『石英の肺』は飛ぶように売れた。書店からAI小説コーナーが設置され、重版は四度目に突入

「死んだ後で読むと、意味が変わる」というコメントが並んだ。

あるレビューには、こんな一文があった。

只野小説は嫌いだった。でも、今は認める。だって俺、あの瞬間、泣いたんだ。AIが書いたってわかってても、心が動いた。だったら、それでいいじゃんか」

テレビでは元同僚という男が涙ながらに言った。

「彼は、ほんとに変なやつだったけど、天才でしたよ。変な意味じゃなく」

そして、彼を刺した黒詩影郎について、周囲の情報ほとんど出なかった。

知人は「昔、文学賞に投稿していたようだが、何一つ入選しなかった」とだけ語った。

週刊誌には「彼が投稿していた小説の一部」として、奇妙な一文が転載された。

「人は、誰かを刺すことによって、自分を終わらせる。文学もまた然り」

この事件は、文学におけるAI革命象徴として語られ、同時にそれを殺した“魂”の火種としても、永く記憶された。

只野天才は死に、黒詩影郎は閉じられた鉄の扉の中で沈黙した。

だが物語は、生き残った。

物語は人が語るべきだ」という信仰と、

人を動かすなら手段は問わない」という新信仰が、

今もどこかでぶつかりあっている。

いずれにせよ──。

この事件証明されたのは、文学にとって「誰が書いたか」は、

もう最重要ではなくなった、という事実だった。

誰が書いたっていい。

だって、読者は、

最後に泣いた。

それだけで十分だった。

2025-05-15

おすすめノベルゲー曲を古い順に(1999年2008年)

1999年

曲名: Nameless melodies 〜だけどきみにおくるうた〜

リリース年: 1999年

歌手: KOTOKO

曲名: 未来にキスを (または kiss the future)

リリース年: 1999年

歌手: C.G mix

2000年

3. 曲名: Birthday eve

リリース年: 2000年

歌手: KOTOKO

2001年

4. 曲名: thankful (秋桜の空に ED)

リリース年: 2001年

歌手: Marica

5. 曲名: 銀色 (銀色 完全版 挿入歌ED)

リリース年: 2001年

歌手: WHITE-LIPS (佐藤裕美)

6. 曲名: get the regret over

リリース年: 2001年

歌手: 片桐烈火

7. 曲名: 120円の春

リリース年: 2001年

歌手: 不明 (ゲーム楽曲可能性が高い)

8. 曲名: Jast as ir running out/ぎりギリLOVE

リリース年: 2001年

歌手: MAKO

9. 曲名: シナリオ

リリース年: 2001年

歌手: WHITE-LIPS (佐藤裕美)

2002年

10. 曲名: Eternal Love〜光の天使より〜

リリース年: 2002年

歌手: 飯島真理

11. 曲名: 涙尽鈴音響 (るいじんりんねきょう)

リリース年: 2002年

歌手: いとうかなこ

12. 曲名: inliyor

リリース年: 2002年

歌手: Rita

13. 曲名: 青い記憶

リリース年: 2002年

歌手: いとうかなこ

14. 曲名: Especial Friend

リリース年: 2002年

歌手: 崎谷むつみ

15. 曲名: ふたり

リリース年: 2002年

歌手: WHITE-LIPS (佐藤裕美)

16. 曲名: Eternal Night 堕天

リリース年: 2002年

歌手: MASAMI

2003年

17. 曲名: crossing

リリース年: 2003年

歌手: marica

18. 曲名: 選ばれし戦士たち

リリース年: 2003年

歌手: 不明 (BGM可能性が高いです)

19. 曲名: eclipse

リリース年: 2003年

歌手: 川田まみ

2004年

20. 曲名: 咲き誇る季節

リリース年: 2004年

歌手: 佐藤裕美

21. 曲名: ディアノイア (最終試験くじら OP)

リリース年: 2004年

歌手: CooRie

22. 曲名: 熱情

リリース年: 2004年

歌手: ワタナベカズヒロ

23. 曲名: それ行けトーマス

リリース年: 2004年

歌手: 不明 (ゲーム楽曲可能性)

24. 曲名: The Divinity

リリース年: 2004年

歌手: YURIA

2005年

25. 曲名: eternal promise

リリース年: 2005年

歌手: fripSide

26. 曲名: Sleeping pretend

リリース年: 2005年

歌手: KOTOKO

27. 曲名: 孤高之魂魄 (ここうのしこん)

リリース年: 2005年

歌手: いとうかなこ

2006年

28. 曲名: allegretto〜そらときみ〜

リリース年: 2006年

歌手: KOTOKO

29. 曲名: スカーレット (looseスカーレットED)

リリース年: 2006年

歌手: みとせのりこ

30. 曲名: Light colors

リリース年: 2006年

歌手: Lia

31. 曲名: Emphatic REVELLION

リリース年: 2006年

歌手: KOTOKO

32. 曲名: デバッグ練馬戦隊キャリばん

リリース年: 2006年

歌手: 不明 (ゲームキャラクターソング可能性あり)

33. 曲名: 未来への咆哮

リリース年: 2006年

歌手: JAM Project

34. 曲名: 散って、咲いて

リリース年: 2006年

歌手: UR@N (現:AiRI)

2007年

35. 曲名: return to that place

リリース年: 2007年

歌手: 川田まみ

36. 曲名: Brilliant Days

リリース年: 2007年

歌手: riya

37. 曲名: 二つ目の空

リリース年: 2007年

歌手: riya

38. 曲名: memoria! (カタハネ OP)

リリース年: 2007年

歌手: yozuca*

39. 曲名: a song for

リリース年: 2007年

歌手: 第二文芸部

40. 曲名: 硝子のLoneliness

リリース年: 2007年

歌手: KOTOKO

41. 曲名: ナルキッソス

リリース年: 2007年

歌手: eufonius

2008年

42. 曲名: Lunatic tears

リリース年: 2008年

歌手: 彩音

43. 曲名: カンデコ

リリース年: 2008年

歌手: 茶太

2025-05-14

仕事疲れた夜は歩道橋に向かう

仕事疲れた夜、俺は歩道橋に足を向ける。

群青の空に街のネオンが灯り始める七時過ぎ。

駅を出て、コンビニの灯りを横目に階段を登る。

呼吸はゆっくりと落ち着いていき、心のざわめきが夜に溶け始めるころ、橋の真ん中へとたどり着く。

その場で見下ろす。

黒いアスファルトの海。光の群れが流れている。

赤、白、黄、青。

ヘッドライトとテールランプが音もなく駆け、まるで五線譜に書き込んだ符号エンジェル

首元のネクタイをシュルシュルと解く。

首を絞めていた糸がほどけると、呼吸が深くなる。

隣に置いた鞄から銀色タクトを取り出す。

今夜も夜のオーケストラの始まりだ……

かに腕を上げ、ひと振り。

エンジン音が低音を奏で、信号の点滅がリズムを刻む。

クラクションは不意に飛び出すホルンブレーキ音は長く引き伸ばされたヴィオラの嘆き。

そのすべてが、今夜だけは俺の音楽だ。

終わることのない搾取疲弊、反復とルール、それらすべてに捧げる――資本主義のための鎮魂歌レクイエム

俺は演奏する。

車の群れと、街灯と、俺自身疲労をもって、この無名交響曲を完成させていく。

仕事疲れた夜は、歩道橋に向かう。

東京と呼ばれる狂騒のなかで、ただ一夜の美を奏でるために。

2025-05-10

青果部門増田おもしろかったこ

ちょっと黄色っぽかったり薄茶色してたりでプレミアムっぽさを売りにしてる果物に○○ゴールドゴールド○○って名付けるのはよくあるけど、そんな○○○ゴールドリンゴを売り場に並べて入ってた段ボール箱を折りたたんで処分しようとしたら、箱の内側がわざわざ銀色コーティングされてたのに気がついて、そこはシルバーなんだ、っておもったこと。

2025-05-02

宇宙人の姿身長120〜130cmくらい

顔の色は茶色

頭部に髪の毛は生えておらず、仮面かぶっているように見えた

顔一面に深い横ジワが走っていて、目は確認できない

口のあたりに3本の銀色キバが生えていた

耳はウサギのように長く大きく尖っており、真ん中には穴があいていた

手の指は4本で、茶色手袋のようなものをしていたように見えた

足の指は長靴のようで、足袋のように2本に分かれていた

銀色に光る服を着ていて、腰にベル

先端がラッパのように開いた銃らしき物を肩からさげていた

2025-04-23

傘を洗濯した

5年くらい使った折りたたみ傘がある

新卒入社して炎天下での作業があった。

このまま外に居ると死んでしまうと思って3000円くらいで晴雨兼用の折りたたみ傘を買った。

外側は銀色で、内側は紺色の傘は強い日差しから十分に身を守ってくれた。

ただ、5年も経つとそれなりに壊れてくる。

幸い骨組みは壊れていないため、直せる部分は3Dプリンタ部品を出力して直して使ってる。

先日思い立って洗濯をした。

そんなに汚れていなかったが、中性洗剤で洗い、当て布をしてアイロンをかけ、冬用に余っていた防水スプレーを吹きかけた。

新品とは言わないが、それなりにシャキッとしたと思う。

あと5年くらい使えればいいと思う。

2025-04-22

絶望コンマ数秒、あるいは駅前ロータリー狂気

まただ。

バス駅前ロータリー停留所に滑り込む。完璧タイミング、ではない。むしろ最悪のタイミング運転手さんの丁寧な停車アナウンス流れるのと、ホームから聞こえるあの忌まわしい発車メロディーが重なる。シンクロ率100%。ふざけんな。

バスの窓から見える。まさに今、ドアが閉まろうとしている銀色の車体。あれに乗れば、会社ジャストだ。いや、なんなら少し早く着いて、優雅コーヒーでも飲める。しか現実非情であるバスのドアが開く。降車ボタンを押したのが早すぎたのか、俺が先頭に陣取っていたのが間違いだったのか。そんなことを考えている間にも、無情にも電車のドアは完全に閉ざされ、ゆっくりと動き出す。

「ああああああああああああああああああ!!!!!」

声にならない叫びが喉の奥で渦巻く。バスを降り、呆然と走り去る電車を見送る。まるでスローモーション。俺の乗るはずだった電車が、ゆっくりと、しかし確実に俺を置いていく。そして、駅の時計は無情にも次の電車の到着まで「15分」という絶望的な数字を叩き出す。

15分。

この15分がどれだけ無駄か。駅のベンチに座り、スマホを眺める。特に見るものもない。SNSを惰性でスクロールする。みんなキラキラしている。朝活だの、スキルアップだの。こちとら、バス電車の乗り継ぎという、コントロール不能な外的要因によって、毎朝貴重な15分をドブに捨てているというのに。

バスがあと1分早ければ。いや、電車があと30秒待ってくれれば。そもそも、このダイヤを組んだ人間は、実際にこの乗り継ぎを試したことがあるのだろうか。絶対ないだろ。机上の空論数字パズル。そこには、バスが定刻通りに来ない可能性とか、信号に引っかかる可能性とか、そういうリアル変数が入っていない。

たまに奇跡が起こる。バスが少し早く着いて、猛ダッシュすれば間に合うことがある。そういう日は、まるで宝くじに当たったかのような高揚感がある。でも、そんな幸運は稀だ。大抵は、この絶望なすれ違いを繰り返す。

もう慣れた、と言えば嘘になる。毎朝、バスが駅に近づくたびに、心臓が少し早くなる。「今日こそは…!」という淡い期待と、「どうせまた…」という諦めがせめぎ合う。そして、大抵は後者が勝つ。

今日もまた、15分遅刻ギリギリ電車に乗る。ホームには、同じバスから降りてきたであろう、諦めの表情を浮かべた同志たちがいる。俺たちは言葉を交わさない。ただ、互いのやるせない気持ちを共有しているかのように、静かに次の電車を待つ。

駅前ロータリーは、俺にとって希望絶望交錯する場所だ。バスを降りて電車に駆け込む、そのわずか数十メートル距離が、天国と地獄の分かれ道。

ああ、次のダイヤ改正はいつですか? どうか、どうかこの狂気連鎖を断ち切ってください。頼むから

…まあ、どうせ期待しても無駄なんだろうけどな。はぁ。

2025-04-19

お兄ちゃん、大好き

第一章 リビングの陽だまり——幼い誓い

 春一番が吹き抜ける午後、窓際のカーテンがふわりと膨らみ、干したばかりのタオルに淡い日差しが透けた。小学三年生の私・千春は、帰宅した兄・湊にランドセルごと抱え上げられ、ソファへぽすんと降ろされた。「今日も頑張った?」と頭を撫でる手の温かさに、胸の奥がぶわっと熱くなる。母に叱られた算数宿題も、クラスで言い返せなかった悔しさも、兄の笑顔一つで溶けていった。リビングに満ちる石鹸洗濯糊の匂いを深く吸い込みながら——私はこの人を一生守り、一生守られよう、と幼いながら胸に誓う。

第二章 音を立てて開く距離

 兄が中学に入り、部活で遅く帰るようになると、食卓に並ぶ椅子の一つはいつも空いた。母が「冷めないうちに食べなさい」と言うたび、私は味噌汁を啜りながら廊下の先を気にした。深夜、蛍光灯の下で英単語帳をめくる兄の背には、近寄りがたい影が宿っていた。「美緒、静かに」と囁かれるたび、胸の中で小石が転がった。子どもの私は、その小石に名前を付けられず、ただ足元で鳴る兄の成長の足音を数え続けた。

第三章 メール越しの声——市外への進学

 合格発表の日、掲示板に貼られた番号を見つけた兄は空を仰いで笑った。県下一の進学校、通学片道一時間半。私の「行かないで」は、騒ぐクラスメートの声にかき消えた。春の風が吹く玄関先で兄は「千春は強い子だろ」と頭を撫で、あっさりと黒い学生鞄を担いで出て行く。夕方カレー匂いしかない台所で、私は思わず携帯を開く——「今日どうだった?」。既読の横に「部活」「課題」「眠い」の三語。短い返事ほど恋しく、通知音が鳴るたび息を呑む日々が始まった。

第四章 塗り替わる世界地図——私の中学生活

 私も中学生になり、バスケ部で汗を流した。だけど練習後のシャワー室、タイルに落ちる水音を聞きながら、兄のことばかり考える自分に気づく。友達が「今度みんなで遊園地行こう」と誘ってくれても、私は曖昧に笑って断った。帰宅後、母に「お兄ちゃんは夕飯要らないって」と告げられるたび胸が縮む。兄と私の距離物理的なものだけではなく、生活リズム、語彙の選択、夢のスケール——地図全体が塗り替わるように拡がっていった。

第五章 高みを目指す風——兄と同じ大学

 兄の進学一年後、私は「湊の隣がいい」と進路希望欄に一行だけ書いた。担任は「姉妹兄弟で同じ大学は珍しくないさ」と笑ったが、動機の濃さまでは見抜けなかった。深夜、蛍光灯の明滅を睨みながら英単語を暗唱し、机に伏した額の下で涙と鼻水が混ざった。——お兄ちゃんの隣に並ばなきゃ私の世界未完成。そう思うほどに参考書の余白まで兄の横顔で埋まっていく。

第六章 一人暮らしという二人暮らし——ワンルームでの再会

 合格発表掲示板で番号を見つけるより先に、正門前で待ち構えていた兄に抱きついた瞬間、世界は再び等速回転を取り戻した。大学近くの築四十年のワンルーム、押し入れを改造したロフトに布団二枚。「家賃生活費、ちゃん折半だぞ」と兄は念を押したが、私の頭には花火のような歓喜しかなかった。狭い流しでインスタント味噌汁を作り、共有の机でレポートを書く。夜、ロフトの布団で横になり、「お兄ちゃん起きてる?」と囁くと「寝ろ」と小さな声。そのやりとりだけで心臓が跳ね、眠れない夜が続いた。

第七章 亀裂の手触り——兄の新しい世界

 五月の新歓期、兄は同ゼミの先輩・綾瀬沙羅と親しくなっていた。駅前カフェで偶然見かけたとき、兄が笑う横顔には私の知らない柔らかさがあった。帰宅後、狭い玄関で「ただいま」を言う兄の声が少し弾む。その裏にある感情を知らないふりをして「おかえり」を返すと、胸の奥で小さくパチンと弾ける音——それは嫉妬という硝子玉だった。

 夜中、机に伏せながらLINEの通知履歴を追った。画面に浮かぶ「今度のゼミ発表、手伝ってくれてありがとう!」「映画ポップコーンキャラメル派?」。私は震える指で既読もつけずアプリを閉じた。

第八章 病室で交わした本音

 七月、期末試験前の無理がたたり、私は高熱で倒れた。扁桃炎で点滴を受ける私の側で、兄は氷枕を替え、額を冷たいタオルで拭いた。ぼんやりする視界の端で兄の眉間が寄る。「千春、無理し過ぎるな」。私の唇は乾ききってうまく動かない。それでも「お兄ちゃんは……誰と映画に行くの?」とかすれ声で問うと、兄は少し目を見開き、やがて真剣な表情でこう答えた。

「……千春に嘘はつきたくない。沙羅先輩だ。でも、恋人とかじゃない。ただ仲間として誘われて——」

 言い訳のような説明を遮るように咳き込む私を、兄は抱き起こして背を摩った。「なぁ、俺は千春に甘え過ぎてたのかもしれない。けど俺たちは兄妹で、これ以上——」兄は言葉を飲み込む。点滴の機械音が病室に滲む沈黙を裂く。私は熱に浮かされながらも悟った。兄が私の「全世界」ではあっても、兄にとって私は「世界のすべて」ではないのだ、と。

第九章 掌に描く境界線

 退院して帰宅した夜、私は狭いロフトで兄と向き合った。裸電球が二人の影を歪ませる。「私、サークル入る。友達とも遊びに行く。……お兄ちゃん以外の毎日を持つ」。意地で張った声は震えていたが、兄は静かに頷いた。

「俺も就職考えなきゃいけないし、研究室プロジェクト本気出す。千春が自分場所を見つけるのは嬉しいよ」

 その夜初めて、私は兄の背中ではなく、正面から兄の眼を見た。そこには幼い日には見えなかった迷いと覚悟が交差していた。布団に潜り込み、細いロフトの梁越しに聞こえる兄の寝息を聞きながら、私は気づく。この人を一人の男性として愛してしまった気持ちは消えないけれど、同時に私は自分人生ハンドルを握らなければならない、と。

第十章 私の日々、兄の日々

 秋学期、私は文学研究会に入り、週末は古書店を巡るバイトを始めた。分厚い全集を運ぶたび腕が悲鳴を上げるけれど、店主の「助かったよ」の一言が嬉しかった。サークルでは同級生の新と意気投合し、文芸誌編集を任される。帰宅が深夜になり、狭い部屋に残る兄のブラックコーヒー香りが、自分の知らない兄の時間想像させた。

 一方兄はロボット制御研究室に配属され、週末は企業コンテストの試作機に没頭。リビングには配線だらけの基板、冷蔵庫には徹夜明けのエナジードリンク。顔を合わせれば「今日ギアが思った角度で回らなくてさ」「文芸誌特集、締切伸びそう」と、互いの話を交わし、笑い、すれ違う。寂しさは濃淡を変えながら残るが、どこか甘やかな痛みだった。

第十一章 再定義される「好き」

 二月、文学研究会合宿で雪深い山荘へ向かうバスの車窓に、私は兄の面影を探していなかった。かわりに隣席の新が差し出したホットココアの湯気を見て、「あ、兄と同じ匂い」とふと笑えて驚く。夜、薪ストーブの前で原稿をチェックしながら、新が真顔で言った。「千春、誰かに遠慮してない? 本当に好きなものを選びなよ」。

 帰路、携帯に兄から風邪ひいてないか?」とメッセージ。私は画面を見つめ、初めて返事を後回しにした。雪解け水のせせらぎのように、私の中の「お兄ちゃん大好き」が形を変え始めていた。

第十二章 卒業式プロポーズ——二つの告白

 春、兄の卒業式体育館ステージガウンを揺らす兄の背を見つめながら私は悟る。かつて追いかけた背中は、今や尊敬すべき一個の人間輪郭をまとっている。記念写真を撮る流れで、沙羅先輩が兄の腕にそっと手を添えた瞬間、胸に尖った痛みは走ったが、私は自然と微笑めた。

 式後、学内並木道で兄に呼び止められた。「千春、就職決まった。都内ロボットベンチャー。……それと、沙羅先輩に告白された」。兄の声が少し震えた。「答えは保留したけど、たぶん——」。私は風に舞う花びらを掴み、そっと指先で千切った。「お兄ちゃん、おめでとう。幸せになって」。驚く兄に背を向け、歩き出す足は震えたが、止まらなかった。

 一方私も、新から卒業まであと一年、俺と付き合わないか」と真剣に告げられた。夕焼けに染まるログハウスカフェで、私は一拍置き、首を縦に振る。ただし「まだ兄のことを特別に思っている自分がいる」と正直に打ち明けた。新は少し考え、「それを含めて、千春だ」と笑い、手を差し伸べた。

十三章 最後の夜——ワンルーム解散

 兄の引っ越し前夜、段ボールが積み上がった部屋でカップ麺を啜る。蛍光灯の明かりが段ボールの影を濃くし、狭いはずの部屋が異様に広く感じられた。「千春、この一年、一緒にいてくれてありがとう」。兄の言葉に私は笑い、「私こそ」と返す。

 夜半、ロフトに上がる梯子を見上げながら、私はそっと尋ねた。「お兄ちゃん、今でも私のこと、守りたいって思う?」。兄は真っ直ぐな目で「妹を守るのは当たり前だろ。でも千春が前に進むのを邪魔したくない。だから、守るってより、応援するかな」。私は梯子を一段上り、振り返り、にこりと笑う。「なら私は、あなたの一番のファンでい続ける。世界一のね」。

第十四章 分岐する二つの線路

 四月。兄は都内シェアハウスに移り、私はキャンパス近くの女性専用アパートへ。ガランとした新居の机に、文学誌の校正紙と、新からもらった栞付きの詩集を並べる。窓を開けると桜吹雪と同時に、遠くで電車の発車ベルが聞こえた。その音に、兄が乗った始発を想像しながらも、今の私は畏れより期待で胸が膨らむ。

 一方兄は新入社員研修に追われ、深夜に帰宅しては泥のように眠る毎日。それでも週末、動画通話を繋ぐと「ロボットアーム、ようやく規格通った!」と少年のように嬉しそうで、画面越しにハイタッチする私たちは、確かに兄妹であり友であった。

第十五章 小さな背中を押す掌

 夏、私はゼミ論集で最優秀賞を受け、教授海外学会への参加を勧められた。喜びと同時に襲ったのは、兄から離れて飛行機に乗るという恐怖だった。夜、通話でその迷いを口にすると、兄は一瞬驚き、そして静かに笑った。

「千春、飛行機の中でも俺のLINEは届くさ。大丈夫、怖くなったらメッセージして。……でもまずは自分が見たい景色を見てこい」

 受話口から聞こえる兄の声に、幼い頃のヒーロー面影と、同じ高さで語りかける同志の温度が重なる。私は涙ぐみながら、「行ってくるね」と告げた。

第十六章 旋回する眼差し——空の果てで

 ヘルシンキ行きの機内、私は窓外の雲海を見下ろし、兄の存在地球の裏側まで伸びる糸のように感じた。学会の壇上で英語発表を終えた夜、フィンランドの森を背にした会場ロビーで新が「よくやった」と抱き寄せる。その温もりの中で、私はようやく己の恋心が兄とは別の場所に芽吹いていることを自覚する。ロビーの片隅で兄にビデオ通話を繋げば、薄暗い日本の夜明けの部屋で、兄が寝癖のまま「誇らしいぞ」と親指を立ててくれた。

第十七章 再会、そして告白

 帰国翌日、私は兄のシェアハウスを訪れた。駅前桜並木はすっかり青葉に変わり、照り返すアスファルト匂いが夏の到来を告げる。兄の部屋に入ると、壁いっぱいに貼られたロボットアームの設計図が、昼下がりの光を浴びて銀色に反射していた。

「千春、どうだった?」という声に、私はスーツケースを置き、深呼吸。「お兄ちゃん、私ね——好きな人ができた」。一瞬、兄の眉が僅かに上がる。「そっか」と短く呟き、柔らかく笑う兄。「で、その人は俺に挨拶しに来るのかな?」。私は肩を竦め、「そのうちね」と笑い返す。手土産フィンランドクッキーテーブルに置き、二人で半分こした甘い味は、初めて兄と分かち合えた「恋の報告」の味だった。

第十八章 エピローグ——それでも「大好き」

 私の卒業式。袴姿の私は、門前で兄と写真を撮った。兄は背広の胸ポケットに小さなチューリップの飾りを挿し、「社会人二年目、少しは板についてきたかな」と照れ笑い。カメラフラッシュを受けた瞬間、私はふと思う。——この人がいなければ、私は空を飛ぶ翼を持てなかった。

 式後のパーティー会場で、新と兄が固い握手を交わす。私の恋人と、かつて世界のすべてだった人。その光景に胸が温かく満たされる。パーティーが終わり、夜風に揺れる街路樹の下で、私は兄に改めて向き合う。

「お兄ちゃん、大好き。だけどそれは、私が私であるための、永遠合言葉

 兄は優しく頷き、子どもの頃と同じ仕草で私の頭をくしゃりと撫でた。私はその手を振りほどかず、ただ目を閉じて春の匂いを胸いっぱいに吸い込む。そうして再び目を開けたとき私たちは同じ高さで未来を見ていた。

——終わり——

2025-04-17

anond:20250417111139

暗黒メガティネオサイタマ──

深夜、腐敗した高層ビル群の谷間に、ネオンが血のように滲む。

路地裏にはネオサイタマクライムシンジケート幹部サンダーヤクザが待機していた。

彼の胸元には不自然金色の護符。高位ニンジャエンチャントの証だ。

そのとき空気が変わった。

静寂──それは死の前兆

ザッ。ザッ。ザッ。

無音のような足音が、闇の中から近づいてくる。

「……まさか貴様……!」

彼が振り返るより速く、それは発動された!

「イアイ・AEDスラッシュッ!!」

背後から突如現れた黒装束の忍者が、銀色装置を抜き放つ!

それはAED──Automated External Defibrillator!心臓蘇生するためのマシンが、いまや死を運ぶ暗殺兵器と化していた!

シュウウウウウ!!

電極パッドがヤクザの胸に貼り付けられるや否や、電流が走る!

カカカカ……!」サンダーヤクザ身体が痙攣する。心臓が、逆に止まる!

「オマエの心臓……止めに来た!」

黒装束の忍者AEDニンジャは呟いた。

ヤクザが地面に崩れ落ちると、AEDは静かに電源を落とす。再使用可能環境にも配慮された最新鋭のニンジャ兵装である

ニンジャ……ナムアミブツ……」

その声を背に、AEDニンジャは再び闇へと姿を消した。

彼の任務は、終わっていない。次なる心臓が、彼を待っている。

2025-04-15

妻が息子をテクウヨチー牛と言い出した

昨日の夜、うちのリビング地獄が始まった。

最初はただの、よくある家庭の雑談だったんだよ。

夕飯のあと、テレビつけたまま団らんしててさ。

そしたら突然、妻がこう言った。

「ねえ、うちの子……テクウヨチー牛になってない?」

息子、VRゴーグル外して「その言い方、古いよ」とか言ってた。

俺も笑いそうになったけど、妻の顔がマジでさ。

人類は肉体を捨てるべきとか言い出したの、あの子だよね?」

「この前なんて“AI家族になる時代母親という機能不要”って言ったのよ?」

その時、息子の目が光った。

本当に、光ったんだよ。

「……そう。いよいよ、来たか

そう呟いた瞬間、息子の体がビリビリ震えて、床に回路みたいな文様が浮かび上がった。

「母さん、あなたアップデートされなかった存在

この家に、人類進化はもう収まらない」

言い終わると同時に、リビングの壁が爆発して、妻の背後から黒い触手無限に伸びてきた。

チチチ、チギュッチチチチギューーー!!!!」

妻の口から、そんな異常な鳴き声が響いた。

目は真っ黒になってて、もう人間じゃなかった。

「お前……いつからだ……!」って俺が言うと、妻は狂ったように笑った。

「この子が生まれときからよ。私はこの肉体に宿るチギュリアン第七世代人類に混ざり、進化の芽を潰す存在——」

意味不明だった。

けど、目の前で触手テレビを粉砕し、ソファを引き裂き、部屋を埋め尽くしていくのを見て、もう現実とか関係なかった。

「父さん、下がって」って息子が言った。

そして自分の額に手を当てた。

「開け……アンチマターゲート」

空間が裂けた。

そこから、紅蓮の炎と共に浮かび上がる、未来兵装“ギア・チー牛Ω”。

彼の背中から光子の翼が展開され、拳に銀色エネルギーが集まってくる。

「これは、僕の“否定された魂”の怒りだ。母さん、あなたアップデートは、ここで終了だ」

そして息子の拳が、触手の核に向かって叩き込まれた。

テクノ・インフェルノパルサー!!!

眩しい光と共に、触手の全てが蒸発たかと思った。

でも——

妻はまだ立ってた。

顔が割れて、中からもうひとつの顔が出てきた。

「甘いわよ、テクウヨチー牛くん」

その声を聞いた瞬間、息子は膝をついた。

「こいつ……旧時代の“母性”の概念武器にしてきた……!」

俺はもう無理だと思った。

でも、息子が立ち上がった。

「父さん……いままでありがと」

「次に目覚めたとき、僕はもう……人間じゃない」

息子の体が粒子になって消えていく。

そのとき、彼の声だけが空間に残った。

テクウヨチー牛であることを、僕は誇るよ」

——そして、世界再起動された。

新しい朝が来た。

でも、あの夜のことは、誰も覚えてなかった。

俺だけが知ってる。

の子は、いまもネットの中で生きてる。

進化象徴として——

2025-03-27

近所のクリニックにて待合室の時計の針が進んでいる件について

仕事の都合上、定期的に予防接種必要になったため、近所のクリニックに通いはじめた。

そのクリニックの待合室の壁には銀色の丸い枠に白い文字盤の大きなアナログ時計が掛かっている。

その時計は、いつも 3 分間だけ針が進んでいる。電波時計ではなさそうだ。

予防接種を受けた後は、アレルギー反応が起こったときに備えるため、待合室で 15 分間ほど様子を見ることになっている。

初めてそのクリニックで予防接種を受け、スマホ時計と比べて待合室の時計が 3 分間進んでいることに気づいたときは、たまたま誰にもズレが気づかれずに放置されていたのだと考えた。

そこで受付に、待合室の時計の針がズレていることについて申し出た。

しかし、次にクリニックに行ったときも、待合室の時計は 3 分間進んだままだった。

二度も指摘するのはしつこい利用者だと思われるかもしれないので、何も言わずにいた。

そして、数か月後にクリニックに行ったときも、待合室の時計は 3 分間進んだままだった。

他のクリニックの利用者だって、この時計の針のズレには気づくはずだ。ズレを指摘する人もいるはずだ。

ただ単にズレを直すのが面倒くさいのか、それとも早めに帰ってもらうために、わざと時計の針を進めたままにしているのか。

2025-03-08

おれ自転車趣味からママチャリなんかでも細部まで目がいったりする

会社自転車通勤している地味子のママチャリなんだけど。

いっつもチェーンがピカピカなんだよね。

普通ママチャリのチェーンってドロドロで真っ黒か、

逆に油がなくてカッサカサになってるかの2択なんだよ。

でもその地味子が乗ってるママチャリのチェーンはいつもほどよく注油されてて、

それでいてしっかりと汚れはついてなくて銀色に輝いている。

それに気づいて以来、どうにも地味子のことが気になって仕方がない。

2025-02-19

駅弁駅ビル半額弁当国際的冷戦

初めての増田なので、思い出を書きなぐりたいだけです。

一応、フィクションということにしてください。

私の住んでいる町に駅弁と呼ばれる大学がある(あまり隠す気はないが、実名を書くのも良くないかと思い名前は出さない)。

私は卒業生ではないが、小学校中学校までは附属校なのでお世話になった。

大学としても駅弁などと言われつつ、そこまでレベルが低いわけではない。

一部の文系学部卒業後の進路で一定の評価を受けていたりもする。

私自身は別の大学に進んだが、サークル活動などで仲良くなった友人もいたので、n=1ではあるが、良い印象を持っている。

その大学があるおかげか、駅前快速が止まらない駅とは思えないほど、牛丼チェーンやラーメン屋などの飲食店居酒屋が充実していた。

潰れたのは大学の門の目の前にあった、まずい家系ラーメンのチェーンくらいである。

私自身、近所に住んでいたこともあり、十二分に恩恵にあずかっていた。

新しいラーメン屋ができれば、Google Mapにすぐ口コミが書かれるし、本屋の品揃えも良いし、カフェなども多い。ないのはクリーニング屋くらいのものだ。

そんな環境新卒2〜3年目を迎えた私は、外食ばかりになってしまった。

しかし、当たり前だが外食し続けると食費がかさむ。牛丼屋でも大盛にしたいし、何なら味噌汁だってつけたい。

新卒2〜3年目でもらえる給料などたかが知れている。困った私はある日、安く腹いっぱい食べる方法を見つけた。

駅ビルに入っているスーパーの半額弁当である

20:00から半額のシールが貼られるのだが、貼り付け後はかつ丼が270円、天丼が300円、鶏の山賊焼きに至っては250円である

おなかが空いていたら2個食べたっていい。これは良い方法を見つけたぞ、とスーパーの横の階段を19:50頃に駆け降りる日々が続いた。

しかし、日々通っていると、だんだん19:50頃にいるメンバーが固定されていることに気づく。

リッピーと鬼殺しの一番小さいパックを持ったカゴを支えるおじいさん。

黒地に紫か黄色ネクタイを使いまわすスーツのおじさん。

フードを毎回かぶって、ほろよいの色々な味を楽しむ大学名入りのスウェットのお兄さん。

ジムなどでトレーニーが仲良くなったり、ドッグラン公園で犬と飼い主が仲良くなる、というのはよく聞く話ではあるが、自分たち場合認識していても、敵でしかなかった。

自分の欲しい弁当他人に取られないように「自分の分として確保とは言えないような距離感を保ちつつ、カゴに入れて所有権を主張したりしない」ことでシールを貼ってもらう、日本で5本指に入るレベルのみみっちい牽制あいを毎晩やっていたのである

また、ポジショニング大事だ。銀色の扉から店員が出てくると、全員が自分の目当ての弁当の前をセットポジションとして陣取る。

セットポジションを取るためには銀色の扉が見える位置にいないと出遅れる。しかし、弁当コーナーにずっと立っているとレジに並ぶ客の邪魔になってしまう。

みっともない争いではあるが、そこには周りのまともな買い物客への気遣いと、半額弁当が欲しくて並んでいるわけではない、という見栄と、店員へのわずかばかりの感謝があったのだ。

この状況に大きな変化があったのは、ほぼ毎晩のように並び始めて2〜3カ月たった時だった。

スーパームスリムの人が買い物に来るようになったのだ。

まり嗅ぎなれない、海外空港で嗅ぐような甘い香水に、色黒で目鼻立ちの通った顔。さらに、女性はヒジャーブを付けていたので、イスラム教圏の人なんだろうな、という理解は容易だった。

大学卒業した友人に聞いたところ、その大学では数年後に留学のほぼ義務化を目指しており、交換留学に非常に今年から力を入れているらしい。

また、その一環で今まであまり来ていなかった中東インドネシアマレーシアなどの国から交換留学生の誘致を行っており、それに伴ってハラルイスラム文化などの周知に力を入れているのだとか。

そんな彼らも日本の半額弁当という文化に気が付いてしまったのである

そこからは早かった。なんといっても彼らは豚肉を食べられない。

毎晩トンカツ弁当カツ丼ハンバーグホイコーロー弁当ばかりが残るようになった。

パック寿司は残るだろうと思っていたが、彼らの中で魚には宗教的禁忌がない。

ただ、彼らが半額弁当バトルに参入してくるにあたって、唯一良かった点は彼らが我々の不文律暗黙の了解を察して、ゲームチェンジャーにならなかったことだ。

彼らは宗教的禁忌はあれど、日本人の「他人迷惑を掛けない」という点のみは守っていた。

ちなみに私はそこから1カ月で2kgちょっと太った。

さらに時がたち、半額弁当最初に買ってから半年が経とうとしていた。

イスラム教圏の学生たちはある程度半額に飽きたのか、1週間に1回ぐらいの参加頻度になっていった。

しかし、私は忘れていた。

大学特に海外9月入学9月転入がある、ということを。

9月になるとまた違ったイスラム教圏の人たちが買いに来た。彼らは、おそらく先に参入していた同級生や先輩から半額弁当がある、という文化を聞いていたのだろう。

スムーズに買いに来てスムーズに溶け込んでいた。

更に時がたち、半額弁当最初に買ってから半年が経とうとしていた。

イスラム教圏の学生たちは、ある程度半額に飽きたのか、1週間に1回くらいの頻度でしか来なくなっていた。

しかし、私は忘れていた。

大学特に海外では9月入学9月転入がある、ということを。

9月になると、また違ったイスラム教圏の学生たちが買いに来た。彼らは、おそらく先に参入していた同級生や先輩から半額弁当文化を聞いていたのだろう。

スムーズに買いに来て、スムーズに溶け込んでいた。

問題はここからだ。

なぜか9月転入生には中国人が多かったのか、4月転入生が今頃になって来るようになったのかはわからないが、中国グループが買いに来るようになった。

缶チューハイをかごに大量に入れた中国人グループが、3〜4人で大騒ぎしながら買っていったのは見たことがある。しかし、その時はそこまで大きな問題になるとは思わなかった。

だが、彼らに遠慮という概念はない。

並ぶとか周囲に気を遣うことよりも、自分や自らの近しい人間利益を優先する国民性である(それが悪いとか是非の問題ではない)。

彼らは19:40頃に来ると、残っている弁当を一旦すべて自分のかごに入れる。そして、入れながら友人に電話をする(顔を確認していないが、おそらく当番制で買いに来ているのだろう)。

必要な数量が分かった上で、いらないものを戻す。

そして19:55頃になると友人が合流し、大声で中国語で談笑しながら店員が来るのを待つ。

当然、最初のうちはシールが貼られないと思っていた。

だが、彼らは大声で「交渉」するのである

他の客から見ればクレームしか見えないし、スーパー店員さんからすれば、大声で「交渉」されるくらいなら貼ってしまおう、となったのだろう。

結果として、彼らのかごの中に入っている商品も半額対象となり、我々は中国人グループおこぼれを買うしかなくなった。

その日のシューマイ弁当は妙にしょっぱかった覚えがある。

そうなると、割を食うのは日本人だけではない。

我々が土着させたカス風習を律儀に踏襲していたイスラム教グループも同様だった。

ましてや、彼らは豚肉を食べられない。

中国人が残していった弁当を、店員に「これは豚肉入りですか?」と聞く姿を何度も見た。

我々は激怒した。

必ず邪知暴虐の中国人グループを除かねばならぬ、と決意した。

決意はしたが、所詮勝手ローカルルールを作っているだけだとも思った。

気分だけはメロスだったが、冷静である

だが、イスラム教グループはやはり根底ハムラビ法典根付いているのだろう。

目には目を、歯には歯を」というように、彼らはルール逆用し始めた。

19:30頃にかごに弁当を入れ、店員を呼びに行くようになったのだ。

店員としても若干の罪悪感があったのかもしれない。

19:40の中国人グループが来る前に売ってしまえば、イスラム教圏の学生たちは買って帰る。

結果として、中国人グループトンカツを食べる日が続いた。

ちなみに、このあたりでルールが変わった頃から、鬼殺しじいちゃんはまったく見なくなっていた。

駅ビルではない方の24時間営業スーパーに行っていたのかもしれない。

中国人グループも、大学留学する程度の学力のある人たちである

明らかに数量が減り、しか豚肉ばかりが残る状況を見て、何かを察したのだろう。

彼らも19:30頃に来るようになり、そして何かが起こった。

翌週から、ついに半額弁当販売がなくなった。

というよりも、そもそも半額シール自体がなくなった。

18:30に3割引きシールが貼られたきり、半額にはならなくなったのだ。

イスラム教圏のグループ中国人グループの間で話し合いがあったのか、店側が嫌になってやめたのかはわからない。

関係があるかは不明だが、お店(というよりも駅ビル建物自体改装工事で取り壊された。

しばらくして新しくできたのは全国チェーンのスーパーだった。

綺麗になったし、お弁当の種類も増えた。

しかし、ちょうどコロナ禍の始まりの頃にオープンしてしまたこともあり、私はほとんど行っていない。

ほどなくして、私も引っ越した。

駅ビルで半額弁当を買う生活をやめてしまった。

彼らは国に戻り、立派に卒業したのだろうか。

ふと、残業後に地元スーパーで半額弁当を見かけ、そんなことを思い出したので書いてみた。

2025-02-17

真夏の夜の淫夢一章感想書いていこうと思う

現物はさすがに無理だったかニコニコ動画でみた。若者世代として

パアン(大破)

よく書かれるこれだけど実は全く大破ではない

ていうか音の割に車内の被害なさすぎ

後ろからさぶってるのか?

そしてなぜか運転席に頬に傷がある男がひとり

車の大きさの割に運転してんのあなたひとりか…

カメラが引くと追突した場面…と思いきや

ピッタリ駐車してるようにしか見えない

しかも追突して来た車の後ろになんかい

やべぇよやべぇよ…と言ってるやつに歩いてくる男、銀色スーツなんかかっこいい

朝飯食ったから(聞き取り不可)

それで窓を叩くとかじゃなくてドアを丁寧にあける被害者の人

意外と冷静

「弁償しろ!」とか言うのかな?と思いきや

「おいゴラァ!免許持ってんのか」

免許見せろ!」

いや、警察官か。拒否すればいいのに脅し(?)

に屈っしたのかモタモタ財布から免許証を渡す運転手の人(なぜか日本代表ユニフォーム

財布にはたくさんポイントカード(?)

ためるの楽しいからね、でもギチギチすぎると思うよ…

雑に被害者が免許証を取り上げる

顔写真を指で隠しながらまじまじ眺める

(初めて免許証みたんかな?)

「よし、お前らくるるぁ(車)に付いてこい?」

なにがよしなの

ていうか「弁償しろよぉ!」じゃないんだ

ドアを丁寧にしめて互いに見つめ合う加害者

まるで小学生

ていうかこの時点で逃げられたよね。絶対

事務所(?)のシーン

観葉植物になんかソファーとかあって

暴力団事務所というより風俗の待合室

で、ふんぞり返る被害者に

免許証返してください」と加害者

コイツ誰だ?

さっきの被害者の誰でもないぞ??

ていうか「弁償します」じゃないか普通

「やだよ」と被害

そりゃそうだ

それでも「お願いしますすいませんでした」と

頑なに謝る加害者滑舌が悪くてあまり聞き取れない

長くなるのでまとめ

導入として0点の出来
いらないしはっきり言って
トラックに見られてるし

2025-02-11

孤独カラスが好きすぎる

ハイウェイ工事用の銀色の部分にたった1匹だけ

とまってるカラスかっこいいすき

勝手に孤高くんと呼んでいる

2025-01-19

ウルトラマン全裸?それともスーツ考察してみた

なんか色々調べたんだけどさ、あの銀と赤の肌はスーツなのか、肌なのか、論争が昔からあるみたい。

ウルトラマン制作者に聞いたら「スーツか肌か分からん感じになってる」みたいな回答だったらしく、なんていうか玉虫色の回答なんだよ。

そりゃ特撮的に考えるとスーツなんだけど、あの世界で言えば、スーツではないよね。

他の意見としては、赤い部分が服で、銀色の部分が肌っていう考え方もあるみたい。

でもそうだと下半身銀色で肌丸出しのウルトラマンもいるので、赤が服ってことはないだろうと思う。

俺の考えとしては、赤も銀も全部スーツっぽい肌なんだよ。

から全裸

ウルトラマン全裸なんだ。

でもやらしくない。エロくはない。

股間に何もついてないし、セーフなんだよ。

全裸だけどカッコいいし、不快感がないからセーフってこと。

ただ、疑問に思うのがウルトラマン生殖について。

生殖器がないからどうやって子作りするの??

調べたら、なんか互いの光を合わせると子供ができるみたい。

でも誰と誰の光なんだろ。

男女の違いとかあるの??

ウルトラの母がいるんだから男女の違いがある気もするけど。

ユリアンとか、あと数人「ウルトラウーマン」として

いるみたい。

でもそのウルトラウーマン全裸ってことなのか?

それは良くないな。

ウルトラウーマンは服着てるってことにして、この考察を終える。

2025-01-17

銀色のバッグ、めちゃくちゃ可愛いけど大体小さくて大荷物族にはとても使いこなせそうにない デカくてギラギラのバッグ、どこすか

2025-01-16

anond:20250116185650

ウミガメ藍色がどう関係してるのかちょっとググった程度じゃ出てこなくてもやもやするな

タチウオから銀色塗料に使える成分がとれるけどそういう話?

2025-01-09

anond:20250109123104

うそですか。

私には、あなた「嘘」ではなく「何らか誤りを事実だと思い込まされている」様に見えるのですが。

から生活保護の人たちが無駄延命するのが問題になってる

これはどこから出てきた話でしょうか。他のスレッド

延命治療で生きてる患者の7割ぐらいは生活保護

と主張されていた方でしょうか?

そんな事実はありません。


また、念のため嘘だと指摘されたことに根拠を示しておきますが、日本医療場合、標準治療というもの定義されていて、それに沿った形でないと健康保険が支払われません。

身近なのが歯科で、銀色の詰め物は標準治療なのですが、白いものは標準でないため保険がきかないですよね。それと同じで、学会認定した標準的治療を逸脱するような医療いくら患者希望しても、行われません。

もちろん保険外で払うからやってくれと言うことはできるでしょうが、それはこの議論からは外れますね。

2025-01-07

どっかで絶対銀色ハート型のポーチが付いてくるホリデーコフレ福袋あったと思うんだけど思い出せなくて終わった

2025-01-02

理系池澤夏樹世界文学全集をほぼ全部読んだから五段階評価する⑥

【前】anond:20250102211547

3-01「わたし英国王給仕した」ボフミル・フラバ阿部賢一訳★★★

才覚でナチス共産主義の嵐を生きぬいた給仕お話経験から相手本質を見抜き、最高のサービスをする、ってのは序盤だけで、あとは東欧諸国悲惨歴史の中で話が進む……はずなんだが、文章全体にユーモアが漂っていて、ナチス政権下でも結構いい思いをしていて、「歴史をこんな風に扱っていいのか?」とその大胆さに驚かされる。当事者からいいのか? いや、そんなことはないのか? 最近は意外なことで炎上したり叩かれたりするので何もわからん(なんか、アジア人のふりをして小説を書いたらバズって、そのままアジア人のふりをする羽目になる、みたいなキャンセルカルチャーネタにしたアメリカ風刺文学があった気がするんだが、思い出せない。キーワード検索しても新しい価値観についていけないで炎上ちゃう六十代教授の出てくるアベルカンタン「エタンプの預言者」という別の文学しか出てこない。で、pretending to be an Asianでググってやっと見つけた。R. F. KuangのYellowface」。洋書だった。たぶんどっかの文芸評論家が紹介してたんだろう)。

関係ないけど、ナチスが優秀な子孫を作るための女性たちのためのキャンプヌーディスト楽園のような外見を持っていながら(いや、記憶いかも)発想がそもそも家畜改良みたいで、恐ろしすぎて「これは露悪的なSFか?」ってなる。しかし、殺戮こそしていないものの、今では人権意識の高いとされる北欧諸国でも、かつては平気で障害者異民族の断種が行われていたのだ。Whataboutismは建設議論にとっては有害だが、人間原始的感情に訴えかける強い説得力を持つ。「確かに俺も悪かったけど、お前にだけは言われたくねえよ」的なね。結局、政治感情で動く。

話を戻せば、この作品映画にもなっているらしい。というか、このエントリ全体で映像化された作品結構あるらしいのだが、全然見ていない。

3-02「黒檀」リシャルト・カプシチンスキ 工藤幸雄/阿部優子/武井摩利訳★★★

ポーランドアフリカって接点があると普段ほとんど考えないのだけれど、きわめてよいルポタージュ。こうして独立してから何十年経つのに、アフリカ諸国とひとくくりにされがちな国々の個性を伝えてくれる。

しかし、出来事基本的に救いがない。人類史の多くは悲惨連続だが、アフリカで起きたことは桁の振れ幅が一つ違う。世界経済システムとの不幸すぎる出会いから五百年余り、まだ立ち直れていない大陸という印象を持った。とはいえ、暗澹たるルポタージュと言うわけでもなく、人々が村の中心の樹々に集まって生活するところや、市場の活気などは生命力にあふれ、まるでそこで暮らす人々の顔が浮かぶようだ。破綻した国家状態は目を覆うようだが、そこから復興して何とかやっている人々の姿もある。……と、当時の日記に書いてあった。

ところで、ヘミングウェイはよくアフリカ狩猟に出掛けているけれども、それは所詮旅行者の目で、上っ面でしかないと批判しているのがこの本だった。そう思っていたのだが、日記を読み返すとそれはポールセロー「ダーク・スターサファリ」だった。著者はマラウイウガンダで教鞭をとっていただけあって、アフリカに対して遠慮が無く極めて率直だ。時として情のこもった叱責や、人々へのまっすぐな好意も出る。きれいごとのないアフリカを知りたい人にオススメ

遅延する電車、かつての豊かな文化個性を失い広大なスラムと化したそれぞれの国の首都、高い失業率飢餓地元民のやる気を削ぐ支援窃盗強盗犯人へのリンチ放置されて本が残っていない図書館。親切な人や旧友もたくさん出てくるがいささか気が滅入ってくる。……と、当時の日記に書いてあった。

今はスマホも普及していてアフリカの様子も少なくとも都市部では大分違うと思う。ただし高野秀行は今でも地方市場では窃盗が起きると犯人リンチされると書いていた。

3-03「ロードジムジョゼフ・コンラッド 柴田元幸訳★★

沈没事故で船を見捨てた船員が、延々と続く良心の呵責に苦しみもがいて生きる話だったはず。

試練に敗れ、卑怯者のレッテルを貼られた人物独白を、別の語り手を通じて聞くという不思議構成だけれど、緊迫感が良い。最後には西欧世界の手の届かないところに引っ込んでしまうんだけれど、これって著者の中で「闇の奥」をどのように発展させてここに至ったのだろう。「闇の奥」の内容をあまり覚えていないので困る。語り手が「闇の奥」と同一人物だと全然気づかなかった。やはり覚えていないのは心細い。これは、たとえ敵意ある世界から逃れても……、的な話なのだろうか。……と、日記に書いてあった。「黒檀」と違い、こちらは日記を読み返しても当時の気持ちほとんどよみがえってこなかった。

3-04「苦海浄土石牟礼道子 ❗

この全集では最重要作品かもしれないのだが、実はこの作品だけ読めていない(だからこのエントリタイトルは「理系池澤夏樹世界文学全集を全部読んだから五段階評価する」ではない)。何かで水俣病患者が苦しみながら「これを垂れ流した企業の連中にメチル水銀汚染水を飲んでもらいたい」と心の底から呪っていたというのを読み、これほどの憎悪自分の中に受け止めるだけのエネルギーが無いと感じたためだ。もしかしたら社員だけでなく、その家族にも呪詛を向けていたかもしれない。記憶にない。あるいは、これはどこにも書いていないのだが、本当はこうして水俣病にかからなかった全ての人に向いていたのかも。

こういうことを言うと結局自国中心主義なのかと言われるかもしれないが、それをはっきりと自覚したのが石黒達昌「或る一日」を読んだ時だ(伴名練が編集した短編集がある)。戦争事故かはわからないが、強烈な放射能汚染で次々に子どもが死んでいく話で、読んでいて相当しんどかったのだが、特にきつかったのは名前が「美優」とか「翔」みたいに死んでいくのが現代日本の子もの(それとも自分と同世代人間の?)名前だった点だ。おそらく「亀吉」や「トメ子」だともっと冷静に読めただろうし、「サッダーム」とか「ウルスラ」とかだったらかなり距離ができる。

僕がこうして世界文学を読めていたのも、他人の苦しみが言語文化の壁によって希釈できているからでは、という疑念を僕に抱かせるに至った。

3-05「短篇コレクション Ⅰ」コルタサル他★★★★★

今にして振り返れば錚々たる作家ばかりだし、気に入った作家の(あるいは、ドナルド・バーセルミみたいによくわからなかった作家の)短編集を借りて読んだりもした(バーセルミは結局全然からなかった)。一方で、後になって適当に手に取った本の作者だったと後で気づくこともあった。当たりはずれがあるのがアンソロジーの楽しみである

フリオコルタサル南部高速道路東日本大震災の際に、災害時にできるコミュニティに関連して話題になったが、震災を知らない世代にも刺さる普遍性があるコルタサル作品の中で一番面白いものの一つ。金達寿「朴達の裁判は前提となる知識ほとんど知らずに読んだのだが、したたかに生きる庶民の話で、吉四六ばなしとひがみ根性のない「阿Q正伝」を足して割らない印象を受けた。官憲に殴られて卑屈に笑ってみせても、決してへこたれることのない強さがある。アリステア・マクラウド「冬の犬」は悲しいけどいい。この人の作品は何を読んでもカナダ東部の寒さが伝わってくる。新潮クレスト・ブックスで出ているので是非読んでほしい。レイモンド・カーヴァーささやかだけれど、役にたつことはわざとらしいが嫌いじゃない。村上春樹訳だ。最近村上春樹は一つの権威なっちゃってとうとう早稲田名誉博士にまでなって、「俺たちの反体制村上はどこに行っちまったんだ」みたいな気持ちになるが、翻訳は好きで、いまだに村上訳の本をたまに手に取る。それに、村上春樹小説男性中心的でときどきレイモンド・チャンドラーみたいにマッチョとはいえ、「メンヘラ」という言葉が広まるはるか前にもかかわらず、メンタル病気で苦しむ人の描写解像度が、身近にたくさんいたんじゃないかってくらい極めて高い。彼の最大の美点だ。もっとも、今では精神を病んだ当事者文学が出てきたので、「じゃあ当事者が書いた作品を超えるにはどうしたらいい?」ってのが次の文学課題だ。ガーダ・アル=サンマーン「猫の首を刎ねる」は、フランス移住したアラブ系青年が、男にとって都合のいい女がどれほど魅力的かを語ってくる叔母の幻影に悩まされる話で(たとえば恋する女性がもう処女じゃないことに苦しむと、脳内の叔母が「かわいくて素直で恥じらいのある処女を紹介するよ」と延々と語る)、あまりに男の欲望むき出し、即物的で笑っちゃうところもあるんだけれど、その都合のいい幻を切って捨てることもできないあたりがリアルで生々しい。男性向け・女性向けのポルノのぞき見ると、みんな都合のいいことばっかり望んでるよね(だがそれがいい)。

余談だが、自分恋人嫉妬深いので恋愛経験はあまり多くない方が好みだが、フォークナーを勧めてくれた友人は、むしろ経験豊富なほうが面倒くさくなくていいと熱く語っていた。このあたりは好みの問題だ。

閑話休題しかしこの叔母が独身だってのがミソで、「女の幸せ結婚だ」という社会独身女性は、こうやって世話焼きおばちゃん的な立場サバイブしてきたのだ、という指摘をどこかで読んだ。

目取真俊面影と連れて」は一番面白かった。自分の中では生涯読んだ短編の中の上位十位に入っている。ウチナーグチの語りなのだけれど、ひたすらいじめられ続けて、抵抗もできずにいる女性が、皇太子暗殺事件犯人関係して不幸になって、そのまま死んでいくという虚無の話なのだけれど、心が深く動かされる。世間ではタフになれとか戦って抗えとか言うけれど、抵抗するすべを知らず、その体力も能力もなく抵抗できずにそのままの人だってたくさんいる。弱い人間が弱いまま幸せに生きて死んで行けるようになってほしい。

3-06「短篇コレクション Ⅱ」A・グリーン/G・トマージ・ディ・ランペドゥーサ他★★★

前項は南北アメリカアジアアフリカが中心だったが、こちらはヨーロッパ作品が中心。こちらの巻はやや印象が薄い。

記憶に残っているのはサルマン・ラシュディ(ルシュディ)「無料ラジオで、人口対策で断種されてラジオをもらった男の話。どうもラシュディはこの政策に反対だったらしく、「真夜中の子供たち」でも断種・不妊手術を極めて否定的舞台装置として扱っているし、実行したインディラ・ガンディーを始め、権力を持った女性に対してうっすらとした嫌悪を持っている気がする。「真夜中の子供たち」でもアパート管理人の意地悪な姉妹とか出てきたし。

あとはミシェル・ウエルベックランサローテだけれど、ウエルベックはどの作品人権意識の高まりをはじめとした社会の変化について行けない中年男性の悲哀と愚痴が基本にあって、どれを読んでも感想が大体一緒になる。前にも書いたが要約すると「俺は非モテから思春期の頃には思いっきセックスできなかったし、処女と金銭のやり取りなしでイチャラブできなかった。中年になって女を金で買えるようになったが、ちっとも楽しくない。子供も老人もみんな大っ嫌いだ、バーカ!」「こうなったのもぜーんぶヨーロッパ文明進歩に見せかけた自滅のせいだ! みんなカルトに狂って不幸になっちまえ!」「人類所詮本能には抗えないサル並みの動物なので、あらゆる不幸はポストヒューマン進化しないと解決しないんだよ! アヒヒヒヒ!」。これはひどいもっとも、こういう反動的に見える作品にも賞をあげちゃうフランス文壇の度量の広さはすごいけどね。もしかしたら「セロトニン」はそこから一歩進んだかもしれないが読むのがめんどくさいし、これまた自分にとって輝きを(こんなものを読んでわざわざ憂鬱になりたいという暗黒の吸引力を?)失った作家だ。ウェルベックは悪くない。変わってしまったのは僕だ。

カズオ・イシグロも収録されていたはずなのだ記憶にない。

ところで、最後まで読んでみて見て思うのだけれど、このシリーズって表紙に毎回鳥が銀色印刷されているんだけれど、これってすべてポーズが違うんだろうか。重複したりしていない?

以上。

あとは同じように読んだ人のブログ探して読んでみようっと。

完読総評! 池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 全冊 - ウラジーミルの微笑

池澤夏樹の世界文学全集は、何が読まれているのか? - ボヘミアの海岸線

おまけ

余談だけど日本文学全集は第10巻「能・狂言説経節曾根崎心中女殺油地獄菅原伝授手習鑑/義経千本桜仮名手本忠臣蔵」だけ読んだ。長いがめっちゃ面白い

岡田利規「能・狂言」の訳がかなり砕けていて、特に狂言だとカタカナも多用している。「荷六駄」の「おーい太郎いる?/はーい。/あ、いたのね」には笑ってしまったが(たぶん「太郎冠者、あるか」「御前に」あたりが原文だと思う)、当時の日本人にはこう聞こえていたのだろう。現代語訳したのが演劇の人なので、声に出してそのまま演じられそうなのがいい。カタカナ言葉が今の日本語の生きた要素として使われていることがよくわかる。

同時に収録されている狂言には視覚障害者おちょくるとんでもないネタもあるのだが、盲目であることが当時どのように受け止められていたかがわかる。江戸時代なんかだと視覚障害者団体も作っていたみたいだし、ただの弱者ではない。だから近江絵みたいに風刺対象ともなっているんだろうか。

おしまい

2024-12-21

ワンルームの独り暮らしなのにネコを4匹飼う夢をみていた。水も餌もトイレもどうしていたのかわからない。布団のうえにうんこがころがっていたかもしれない。ロクに世話をしないのにネコたちはどう生きていたのか見当もつかなかったが、それでも彼らは元気にしていて、押し入れのすき間に隠れたり布団を爪とぎ代わりにしてビリビリに引き裂いていた。そのうちの一匹は爪がかなり伸びていて、いつか爪切りで切ってやらないといけないなあと思いながらその鋭く伸びた爪を眺めた。銀色の毛をしたやんちゃ子猫で、僕の足元をくるくる回るのが好きだった。

カーテンレールの端っこには夏に息絶えた小さいハムスターの死骸がぶら下がっていた。ふわふわの綺麗な白い体毛は変な油にまみれてどろどろになっていた。ネコ以外にもハムスターを飼っていた。彼らに対してもまた十分な世話をしていなかった。あるハムスターは壁とベッドのすき間におしつぶされた挙句歩行困難になってとても苦しそうにしながら餌を食べていた。

嫌な夢だ。

2024-12-20

彼と初めて出会ったのは、友人の紹介だった。婚活イベントの一環で開かれた「趣味コン」。テーマは「食べ歩き好きが集まるフレンチディナー会」だった。私は一人で行くのも気が引けたので、気の合う友人と一緒に参加した。会場はオシャレなフレンチビストロ。美味しい料理を楽しみながら、ゆるく会話を楽しむというコンセプトだった。

その彼は、隣の席に座っていた。少し緊張しているのか、どこかぎこちない笑顔を浮かべていたが、話してみると意外と楽しい人だった。「僕、こういうの初めてでさ」と少し照れくさそうに言いながらも、フランス料理について熱心に質問してきた。

フレンチって、やっぱりバケット重要なんだよね?」

最初は聞き間違いかと思った。でも、その後も彼は「バケットってさ、外がパリパリで美味しいよね」と連発する。少し違和感を感じたけど、「まあ、細かいことはいいか」と軽く流すことにした。彼の真剣な目とちょっとしたユーモアに惹かれたのだ。

数回のデートを重ね、彼が「次は家で手料理を振る舞いたい」と提案してくれた。彼の手料理?と驚いたけれど、彼が張り切っている様子に、私も少し期待を抱いた。そして迎えた料理デート当日。彼は玄関先でこう言った。

フランスパン重要だと思ったから、ネットバケットを取り寄せたんだ!」

彼の家に入り、テーブルの上を見た瞬間、私は目を疑った。そこにあったのは、銀色に光るブリキバケツだった。

彼はそれを指差しながら、自信満々に言う。

「これ、すごく評判の良いバケットらしいよ。高評価だった!」

……何を言っているのかわからない。目の前にあるのは、どう見てもパンではなく、庭で土を運ぶためのバケツだ。彼の表情を見ても、冗談を言っている様子ではない。

私は恐る恐る聞いた。「えっと、これ…フランスパンじゃないよね?」

彼は慌ててスマホを取り出し、注文画面を確認し始めた。そして、おもむろに言った。

「いや、これがバケットでしょ?フレンチバケットって書いてあるし!」

画面に映った商品説明には、確かに「French Bucket」と書かれていた。レビューには「頑丈で長持ち!」とか「ガーデニングに最適!」といった文言が並んでいる。彼はしばらく沈黙した後、小さく呟いた。

「……あれ?これ、食べられないの?」

その瞬間、私はすべてを悟った。彼はずっと「バゲット」を「バケット」と呼び続け、さらにそれを心の底から信じていたのだ。オシャレなフレンチディナー会で出会った彼。フランス料理好きな私の期待を背負って、ネット注文までしてくれた彼。そして届いたのが、これだ。

笑うべきか泣くべきか迷ったが、私はブリキバケツを見つめながら言った。

「ねぇ、このバケツ…何かに使おうか。パンは、近くのパン屋さんで買ってこよう?」

彼は真っ赤になりながらも、すぐに「そうだね」と答えてくれた。そして、近所のベーカリーで本物のバゲットを買い、なんとかディナーを無事終えた。でも、心の中には小さなモヤモヤが残った。

愛嬌のある人だし、一生懸命なところも好感が持てる。でも、フランスパンバケツの違いすら気づかない彼と、一緒に未来を描けるのだろうか?そんな疑問が胸をよぎる。

帰り道、彼のことをどうするべきか考えながら、友達LINEした。

「ねぇ、今日デートバケットバケツ問題大事件が起きたんだけど…!」

友達の返信は、「とりあえずそのバケツ植木鉢にでもしておきなよ」だった。

次こそは、本物のバゲットを正しく呼べる人と出会ますように――そう願わずはいられなかった。

2024-12-01

anond:20241201142312

エアープランツいいね 銀色ガチッとしたやつ好き 熱帯エリア最後にたくさんぶらさがってて、下から右斜め下から左斜め下からジャンプして見たよ

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