はてなキーワード: ミアシャイマーとは
泥棒は罰して刑務所に入れなければならない、それは社会としての義務だ
一つの見方にしかできないのであれば、行きつく先は自分か敵のどちらかが絶滅するまで殺し合うしかない
19世紀のヨーロッパは、勢力均衡を維持することで戦争を防ぐという基本的な考え方に基づいていました。
1815年のウィーン会議では、オーストリア、イギリス、プロイセン、ロシア、フランスの五大国が協力し、一国の覇権を防ぐシステム(ウィーン体制)を確立しました。
これにより、ヨーロッパは100年間(1815年〜1914年)、比較的安定した国際秩序を維持。
🔹勢力均衡の特徴
どの国も過度に強くならないように調整(例えば、フランスが強くなりすぎれば、他国が同盟を組んで対抗)。
国際協調と戦争の回避が目的(バランスが崩れると戦争が起こる)。
例)クリミア戦争(1853-1856年):ロシアの南下を防ぐため、イギリスとフランスがオスマン帝国を支援。
例)普仏戦争(1870-1871年):ドイツ統一後、フランスとドイツの勢力バランスが崩れ、対立が激化。
➡︎問題点: 勢力均衡は理論上安定を生むが、各国が互いを疑い続けるため、軍備競争が進行しやすい。
🔹戦争の原因
19世紀後半になると、ドイツの急速な成長によりヨーロッパの勢力均衡が崩れた。
フランス・イギリス・ロシア(協商国) vs. ドイツ・オーストリア(同盟国)という対立構造が固定化し、軍拡競争が発生。
バルカン半島での民族主義の高まりや、オーストリア皇太子の暗殺(サラエボ事件)がきっかけで戦争が勃発。
各国が相手を警戒しすぎて、軍拡競争が過熱(安全保障のジレンマ)。
一国が突出すると、それを抑えるための戦争が発生(ドイツの台頭と英仏の対抗)。
➡︎戦後の影響:ドイツ帝国・オーストリア=ハンガリー帝国・オスマン帝国が崩壊し、新しい国際秩序が求められる。
国際連盟(League of Nations)が設立され、勢力均衡ではなく「集団安全保障(Collective Security)」の概念が生まれる。
🔹戦争の原因
第一次世界大戦後の国際連盟は、ドイツ・日本・イタリアの侵略を止められず、集団安全保障が機能しなかった。
一方で、イギリスとフランスはヒトラーの台頭を防ごうとせず、ドイツの軍拡を許した(宥和政策)。
ドイツ・日本は「地域覇権」を目指し、国際秩序を変えようとした。
➡︎戦後の影響:勢力均衡ではなく、アメリカとソ連という二大超大国による新しい国際秩序(冷戦)が生まれる。
冷戦では、アメリカとソ連の二極体制(Bipolar System)が形成され、勢力均衡ではなく「敵対的均衡」となる。
核兵器の登場により、「相互確証破壊(MAD)」による均衡が成立。
🔹防御的現実主義(Defensive Realism)の登場
ケネス・ウォルツ(Kenneth Waltz)は、「冷戦の安定性は、両陣営が均衡を保ち、過度な拡張をしないから」と分析。
「勢力均衡は戦争を防ぐが、過度な軍事拡張は戦争を招く」とし、防御的現実主義を提唱。
1991年にソ連が崩壊し、アメリカの一極支配(Unipolarity)が確立。
🔹ジョン・ミアシャイマーの攻撃的現実主義(Offensive Realism)
「国家は勢力均衡ではなく、可能な限り力を拡大し、覇権を確立しようとする」。
勢力均衡理論(防御的現実主義)と異なり、攻撃的に力を求める国家が競争を激化させる。
ウクライナ戦争も、アメリカとNATOがロシアを締め出そうとした結果、ロシアが反撃したと説明。
時代 | 主要理論 | 特徴 | 失敗の要因 |
---|---|---|---|
19世紀 | 勢力均衡論 | 各国が均衡を維持 | 軍拡競争を止められず、戦争に発展 |
WW1 | 勢力均衡崩壊 | 同盟が固定化 | ドイツの台頭に対処できず戦争勃発 |
WW2 | 集団安全保障 | 国際協調 | ヒトラーの拡張を防げず |
冷戦 | 防御的現実主義 | 二極均衡(米ソ) | 軍拡競争、代理戦争 |
冷戦後 | 攻撃的現実主義 | 覇権競争 | アメリカの一極支配とNATO拡大 |
ミアシャイマーの攻撃的現実主義は、ケネス・ウォルツ(Kenneth Waltz)の「防御的現実主義(Defensive Realism)」とは異なり、国家は安全保障を求めるだけでなく、可能な限り権力を拡大しようとすると主張します。彼の理論の基本的な前提は以下の通りです。
1.無政府状態(Anarchy):
国際社会には「世界政府」が存在せず、国家は最終的に自らの安全を自ら守らなければならない。
2.国家は生存が最優先(Survival is the Primary Goal):
国家は他国に侵略されず、自国の主権を維持することを最重要目標とする。
3.国家は合理的な主体(States are Rational Actors):
4.パワーの均衡(Power Balancing):
国家は敵対国を牽制しながら、軍事力・経済力を増大させることで優位性を確保しようとする。
5.安全保障のジレンマ(Security Dilemma):
ある国が自国の安全を確保しようと軍備を拡大すると、他国はそれを脅威とみなし、さらなる軍備拡張を招く。
国家は単に自国を守るだけでなく、可能な限り他国よりも優位に立とうとする。
防御的現実主義(ウォルツ)は「国家は一定の安全保障が得られれば満足する」と考えるが、ミアシャイマーは「どの国家も覇権を追求する傾向がある」と主張。
ミアシャイマーによれば、すべての大国は地域覇権を確立し、他の地域で覇権を持つ国を封じ込めようとする。
例)アメリカは西半球(南北アメリカ)で覇権を確立し、他の覇権国家(例えば中国やロシア)が台頭するのを防ごうとする。
防御的現実主義は「勢力均衡が安定をもたらす」と考えるが、攻撃的現実主義は「国家は可能な限り強くなることでのみ安全を確保できる」と考える。
軍事力・経済力を最大化し、競争相手を抑え込むことが最善の戦略。
核兵器は絶対的な安全を保証する手段の一つだが、核拡散が進むと不安定要因となる。
例)アメリカはロシアや中国、北朝鮮の核戦力を抑えようとするが、これが新たな競争を生む。
ミアシャイマーの攻撃的現実主義の視点から、彼はウクライナ戦争について以下のように説明しています。
アメリカ(NATO)は、ウクライナを西側陣営に組み込み、ロシアの影響力を削ぐ戦略をとってきた。
ミアシャイマーは、「アメリカがロシアの勢力圏を狭めようとしたことが、ロシアのウクライナ侵攻を誘発した」と分析し、西側の外交政策を批判しています。
「ウクライナ危機は西側の責任である」要約(ジョン・J・ミアシャイマー)
西側の主流の見方:ロシアの侵略がウクライナ危機の原因。プーチンは旧ソ連の復活を目指しており、ウクライナだけでなく他の東欧諸国にも脅威をもたらしている。
著者の主張:この見解は誤っており、危機の主な責任はアメリカと欧州にある。特にNATOの東方拡大が問題の根源であり、西側がウクライナをロシアの影響圏から引き離そうとしたことが危機を引き起こした。
2. 危機の背景
1990年代以降、NATOは東欧諸国を次々と加盟させ、ロシアの警戒心を高めた。
2008年のNATOブカレスト・サミットで「ウクライナとジョージアは将来的に加盟する」と宣言。ロシアはこれを「戦略的な脅威」と見なした。
2013年、ウクライナのヤヌコーヴィチ政権がEUとの経済協定を拒否し、代わりにロシアからの支援を選択したことで、欧米支持の反政府運動が激化。
2014年2月、西側の支援を受けたクーデターによって親ロ派のヤヌコーヴィチ政権が崩壊し、新政権が誕生。これを「最後の一線」と見たプーチンは、クリミアを併合し、ウクライナ東部の不安定化を図った。
ロシアにとってウクライナは地政学的に極めて重要であり、NATOの拡張を座視することはありえなかった。
アメリカも同様の状況なら容認しない(例:1962年のキューバ危機ではソ連の軍事的影響拡大を許さなかった)。
プーチンの行動は防衛的であり、ウクライナ全土を征服する意図はなかった。
民主主義の促進という名目でウクライナ内政に干渉し、政権交代を後押しした。
ロシアを封じ込める必要はなく、むしろ対話と協力が必要だった。
5. 解決策
ウクライナをNATOやEUの影響圏から外し、「中立国家」とする(冷戦時代のオーストリアのような立場)。
NATOの東方拡大を停止し、ウクライナの安全保障を確保するための新しい枠組みを作る。
ウクライナへの西側の政治介入を控えることで、ロシアとの関係を改善する。
ミアシャイマーは、ウクライナ危機は西側諸国の戦略ミスの結果であり、対ロシア政策の見直しが必要だと主張している。彼は、ウクライナを中立国とすることで安定を取り戻せると提案しており、西側の現在の政策は逆効果であると警鐘を鳴らしている。
あくまで国益ベースで言うならば、中露を分断し、対中包囲網の一角に組み込むのがベストだった。そうしたらエネルギー問題も、穀物問題も避けられたわけだし。
ウクライナ問題が、まあまあ穏当な形で収まるのが日本にとっては一番いいことで、この点、ウクライナ親西側派の利害とは日本の利害は真っ向からぶつかっていた。で、あればこそウクライナは散々日本に対して嫌がらせを行って来たし、日本のウクライナのことなんざ知ったこっちゃねーやと言う姿勢だったし。
そのミアシャイマー戦略路線は明らかに破綻したのだけど、spilt milk で今更、親ロシア政策をとっても戻れないのよ。ロシアがもう一線超えちゃったからね。せめてこれがウクライナ東部民兵に加担して、独立運動行わせるとか、その程度ならばまだしも、ウクライナ侵攻は表向きは容認できんわ。
で、ここからどういう国益につなげてゆくのかと言えば、中露を逆に接近させてひとかたまりにさせた方がいい。ロシアの過失は中国の過失論ね。
ウクライナには戦い続けて貰って、ロシアにとってのベトナム化を目指す。ウクライナ軍には東部地域に侵攻して報復としてロシア人住民虐殺までやってくれればなおOK。ロシア世論を激昂させれば、ロシアとそれを支援する中国の弱体化が見込めるね。
欧米の大学で戦争の研究が盛んになったのは、世界大戦を反省したからです。人類史上初の「世界大戦」を経験し、二度目の世界大戦でも主戦場となったヨーロッパ諸国は、なぜこんな悲惨な戦争が発生したのかを必死で解明しようとしました。二度と世界大戦を起こさないためです。平和を守るために、戦争を研究したのです。
(中略)
戦争の研究も同じです。平和を守るためには戦争を詳しく調べ、原因をつきとめ、対策をたてる必要があります。そのために戦争を研究する学問が必要なのです。
過去記事への言及となるので微妙ですが、勘違いしてる人も多いみたいなので。
アメリカの大学が「戦争学」を教えるのは決して“平和を守るため”ではないですよ。“戦争”という人類史における普遍的な事象から得られる自国の利益を最大化することが目的です。“平和”は目的ではなく単なる手段に過ぎません。
政治的エリートを育てる過程においては「戦争学」は必須の科目と言ってもいいでしょう。というか、「国際関係論」を学ぶ上で「軍事学」「戦略学」は「地政学」などと並ぶ基礎知識として扱われています。軍事を理解できない者が国家間の政治など理解することなどできないだろう、ということです。
特に“リアリズム”と呼ばれる国際関係の主流理論においては「パワー(力)」という概念を国と国との関係における基礎としています。その「パワー(力)」は言うまでも無く「軍事力」を意味します。「軍事学」について学ぶことは即ち国際関係の基礎となる「パワー(力)」の行使を学ぶことに他なりません。
(この辺はリアリズムを学ぶzyesutaさんには釈迦に説法かと思いますが)
そして、その「パワー(力)」の行使は、「自国の利益を確保する」という一点を目的としています。例えば有名な右派リアリストであるミアシャイマーは(他のリアリスト達と同じく)2003年のアメリカのイラク侵攻に反対していましたが、それは彼が「平和主義者」だからではなく、単に「アメリカの国益を損なうから」に過ぎません。
ですので、ハーバードの事例を挙げて日本の戦争学教育を揶揄するのは間違いです。確かに「戦争を学ぶこと」によって安易な軍事力の行使を抑え、より平和的な手段を選択する確立は上がるでしょう。しかしそれが目的なのではありません。日本と違い彼らにとっては平和もまた“手段”のひとつです。彼らはよりシビアに「外交の一手段としての戦争」を研究しているに過ぎないのです。