はてなキーワード: シンセシスとは
どう考えても無料拡張プラグインを紹介してくれるDTMerの方が「カッコイイじゃねーか!」と思うので格好付けるため紹介する
世の中にはYAMAHA DX7オマージュやクローンと呼ばれるシンセサイザーは多数あるけれどDexedはエミュレーターとして扱われている。
その理由はYAMAHA DX7をシステムレベルで再現することが開発目標となっており、DexedはDX7実機のSysExすらもサポートしていてDX7の音色拡張ROMデータを読み込むことができる再現度が強み。
欠点は、あまりにもYAMAHA DX7へ寄り過ぎているためか内蔵エフェクターが搭載されておらず、DX7でもエフェクターを接続することが当たり前に行われていたことがDexedでも踏襲され、Dexedにエフェクタープラグインを接続することが前提となってしまっている。
そもそもデジタル処理のFM音源なのでDexedはDX7の音の再現度も相当に高いが、DexedでFM音源を再生すると「綺麗すぎる」「温かみがない」と評されることが有る。これはシステムレベルでDX7を再現したことによって現代のD/Aコンバーターやオペアンプの性能が高すぎるからこそ起きる。
現代の電子音楽シーンでウェーブテーブルシンセシスの存在感を否定する者なんて誰も居ない。
DTMではNative Instruments MassiveとXfer Serumが登場したことによって様々なメーカーがソフトウェアウェーブテーブルシンセサイザーを雨後の筍のように開発したが、Vitalはそんな雨後の筍の後発ソフトウェアウェーブテーブルシンセサイザーの中でも存在感を示すことに成功した。
一目見てわかる最大の特徴はMicrosoftメトロUI、Appleフラットデザイン、GoogleマテリアルデザインとIT界隈ではモダンなUIが発展していく中、Vitalはそれらのデザインを取り込み、難解なウェーブテーブルシンセシスにわかり易さを目指している。ほとんどの操作はマウスの左クリックで完結でき、右クリックの奥に大事な機能が隠れていることは少なく、LFOなどをドラッグ&ドロップできる箇所も明示され、ADSRエンベロープの動きもわかりやすい。
更に、野心的な試みはその製品展開でも行われ、Vitalソフトウェアシンセサイザー本体は無料で、ウェーブテーブルや音色プリセットは有料というスタンスを取った。併記されるVitaliumは、Vitalがオープンソースで開発されたことへ端を発し、オープンソース環境を維持したまま開発を継続するためVitalからの派生プロジェクトとしてVitaliumが生まれた。命名からわかるようにGoogle ChromeとChromiumの関係に近い。
欠点はまだまだ発展途上でユーザー数でMassive(Massive X)やSerumに及ばなく、情報が少なめであることだろう。
元来は有償としてVember Audio名義で提供されていた。開発者はDAWのAbleton Liveの開発経験があり、続けて新しいDAWのBitwig Studioを立ち上げ、Bitwig Studioの開発へ集中するため開発継続は困難としてSurge XTをオープンソース化した。オープンソース化をきっかけに多数の人が開発へ携わるようになり、オープンソース化後の方が有償時よりも高機能になったという面白い経緯を持つ。
Vital / Vitaliumを知った後であるならばSurge XTの外観は一目見て古臭いことがわかるものの開発開始時期は2000年代初頭であるから仕方がない。旧来ソフトウェアシンセサイザーの外観に慣れ親しんだ者であるならばオシレーターセクション・フィルターセクション・エンベロープセクション・アンプセクションなどの位置が逆にわかりやすいかも知れない。
古臭い外観とは裏腹にシンセシスはマルチパラダイムで、減算方式を基本としながらも多数の協力者のお陰でウェーブテーブル方式まで組み込まれた最新のものとなっており、昔懐かしいシンプルな音色からColour Bassグロウサウンドのような複雑怪奇な音色まで作ることが出来る。
その幅広い音色を可能とする理由はLFOはサブも含めて12個もあり、それら12個はエンベロープモードへ切り替えることが可能で、更にモジュレーションマトリクスなどを設定可能なマクロは6個もあるなどシンセサイザーギークが非常に喜びそうな内容だ。
加えて、Surge XT Effectsとしてエフェクター部分が別個の独立とした拡張プラグインとして切り離されており、Dexedのような内蔵エフェクターを持たないソフトウェアシンセサイザーを使用する際にも役立つ。
欠点はやはりその古臭い外観と、膨大な機能を搭載したことによるシステム全体の機能把握の困難さだろう。モダンな操作体系に慣れている初心者や若者からすると非常にとっつきにくいのも問題となる。
YAMAHAが開発したYM2612とYMF262のエミュレーターフロントエンド。
YM2612はOPN2、YMF262はOPL3と表現したほうが聞き馴染みのあるかも知れない。つまり富士通FM TOWNSやPC-8801やSEGAメガドライブ、サウンドカードSound Blaster Pro2などに搭載された、いわゆる8bitサウンドFM音源のエミュレーターフロントエンドだ。
なぜADLplug / OPNplugをエミュレーターフロントエンドと称するか?と言えば、実はADLplug / OPNplugはオープンソースで複数存在するYM2612とYMF262のエミュレーター(ADLplug / OPNplugではコアと称する)を好みに応じて切り替えることが可能なフロントエンドであるため。
エミュレーター(コア)ごとの実装の違いで微妙に音色が違っており自身が求める8bitサウンドを追い込む際に、同一のユーザーインターフェースで操作できるのは非常に有り難い。
このような事が可能な8bitサウンドシンセサイザーは商用を含めても他に存在しておらず、はっきりと言ってしまえばADLplug / OPNplugがこれら8bitサウンドシンセサイザー実装の実用上の頂点である。
プリセットも充実しており、プリセットは実在ゲームタイトルでまとめられおり「あのタイトルのレーザービーム発射音や爆発音を自分の音楽に組み込みたい」のような要望にも十分に応えられる。
欠点はやはり「綺麗すぎる」ことか。エフェクターで汚しを入れるなどして当時を再現してみたい。
UTAUと言えばYAMAHA VOCALOIDへ影響を受け開発され、今や小さいとは決して言えない規模のコミュニティを形成する一大ジャンルとして日本の音楽シーンへ定着しているが、OpenUTAUはそのUTAUの精神的後継シンセサイザーである。
当時のVOCALOIDやUTAUを知る者からすると「精神的後継とはどういうことか?」と疑問に思うだろうが、実は現在UTAU本家の開発は終了している。
そこで有志が集まり開発開始されたのがOpenUTAUであり、UTAU本家とは別体制で開発されている以上は正式な後継とは言えないので精神的後継とされている。
OpenUTAUは精神的後継であるが、その機能性は本家UTAUを既に凌駕しており、現在のUTAUコミュニティではこのOpenUTAUがデファクトスタンダードとなり、しかも対応プラットフォームはWindowsのほかMacやLinuxまで幅広くサポート。何ならChromeOS(Crostini)上でも動くことを筆者自身が確認している。
「OpenUTAUは拡張プラグインじゃないだろ!」というツッコミは聞こえない。
モジュラー方式を採用したマルチパラダイムのハイブリッドシンセサイザー。
コンパクトなモジュラーケースへオシレーターやフィルターなどのモジュールを選択して好みの音色を作っていくという方式を採用しているが、Odin2のモジュラー方式は限定的であり、限定的なモジュラー方式が本来は難解であるはずのモジュラーシンセサイザーをスゴく容易に扱うことへ貢献している。
ライトユーザー向けのモジュラーシンセサイザーかと侮るのは早計で、オシレーターにはウェーブテーブルを選択できるなどしっかりとモダンな需要を抑えている上に、マニアックな部分では変調方式にFMのほかPM(Phase Modulation)が存在しており開発者のこだわりを感じる。
欠点は触ってみると意外と高機能であることには気付くものの、更に突っ込んで触り続けているとVital / VitaliumやSurge XTに比肩できるほどの音作りの幅は無いことへ気付かされることだろうか。例えばJC-303のベースじゃ物足りないみたいな時にシンプルでありながら一味加えたベースサウンドをサクッと作る際に便利だろう。
この手のサウンドは高機能すぎるシンセサイザーだと出来ることが多すぎてアレもコレもとやってるうち逆に時間がかかる。ある程度高機能である程度機能が絞られたOdin2のようなシンセサイザーの方が直ぐにまとまるのだ。
ありそうで無かった一風変わったモーフィングするシンセサイザー。
Moniqueは説明に難儀する。
オシレーターセクションが2つあり、それぞれのオシレーターセクションには3つのオシレーターがあるのだが、Moniqueはその2つのオシレーターセクション間をモーフィングすることが可能だ。
意味がわからないかも知れないが、これは決してDJミキサーのクロスフェーダーの様に2つのトラックのゲインを切り替えるのではなく、オシレーターAセクションで設定した数値がオシレーターBセクションで設定した数値へモーフィングしていくのだ。
つまりサイン波をノコギリ波に、ベースサウンドをキックサウンドに、エレピサウンドをスーパーソウにモーフィングさせることができる。説明が本当に難しい。
この説明を理解した人は「もしかしてMoniqueはウェーブテーブルを作れるんじゃね?」と気付くだろう。
そうなのだ、今アナタの手持ちのウェーブテーブルに物足りなさを感じるのであればMoniqueはアナタが持つアナログシンセサイザーの知識を活用してウェーブテーブルを作ることができる。
Moniqueは単体ではそこまで威力を発揮するシンセサイザーではない。しかし使いどころを真に理解したとき間違いなく音作りの幅は広がっていく。
GeonKickは明らかにSonic Academy KICKシリーズのクローン・オマージュで使い勝手も操作感の違いは多かれ少なかれあるが操作感覚としては同じ。最新版であるKICK 3に含まれる機能はないがKICKシリーズの無償代替品として非常に良い選択肢となる。
プリセットもRoland TR-808風があったりと直ぐに欲しいものは揃っており、他のサンプリング音源も追加で読み込んでGeonKick上で編集することが可能なので満足感が高いだろう。
欠点はGMの非サポートで、MIDIの割当はGeonKick上で自ら行わなければならず、更にその方法が非常にわかりにくいのでGMサポートが存在して当たり前のユーザーからすると、GeonKickのMIDI設定がデフォルトのままDAWからGeonKickへキックMIDI送信しても音が鳴らなくて頭の中が疑問符でいっぱいになること。
CC-BY-3.0ライセンスで配布されているSFZ形式のピアノサンプリング音源。
信じられないかも知れないが、家電量販店で5〜10万円前後で売っている電子ピアノよりも高音質でサポートしている機能が非常に多い。
サンプリング元となっているピアノはYAMAHA C5、音質は48kHz/24bit版と44.1kHz/16bit版が存在。ベロシティ感知範囲は16段階、サンプリングターゲットは1オクターブ中の3音(基準音から前後1音はピッチシフト)、鍵盤リリース音やダンパーペダル音もサポート。
かつて、ピアノの音が良い無料のサンプリング音源と言えばYAMAHA S-YXG50だという記憶がある者からすると異次元の音質。 S-YXG50のサイズは4MBだったがSalamander Grand Piano V3はピアノだけでWAV形式だと1GBを超えている。
欠点は楽器数が多く騒がしいポップスやロック、電子音楽などでは気にならないがソロピアノでゆったりな曲を弾くとダンパーペダル動作時の鍵盤リリース音の動作のおかしさがあること(※バグではなく仕様)。
家電量販店で5〜10万円前後で売っている電子ピアノよりも圧倒的にマシではあるが、最新のそこそこ高価な有償ピアノ音源と比較してピアニッシモの様な弱い音の表現力が少々物足りないことも欠点の1つだろう。
ソフトウェアとして音質・機能性共に入門向け電子ピアノを上回ってしまっているので、YAMAHAサウンドを好むのであれば電子ピアノからMIDI接続してPCで鳴らすのも悪くはない(※電子ピアノはスピーカーもハードウェア一体となった設計なので必ずしもSalamander Grand Piano V3が勝るとは限らない。ただしヘッドフォン使用時は明らかに勝る)
guitarixの説明はギタープレイヤーには一言「KEMPERだ」で伝わる。KEMPERという説明で他に多くを語ることが逆に難しい。
ただし、元来の開発コミュニティはLinux界隈でありMacやWindwosは動くには動くがLinuxよりも積極的なサポートが乏しいのが少々残念。
確率的ランダマイザを備えたマニアックなMIDIシーケンサー。
確率でMIDIトリガーするランダマイザを備えたDAWは珍しくもないが、Stochasはそれに加え、指定したMIDIトリガーへ対して別のMIDIトリガーをチェーンすることができる。
つまり、例えばMIDIシーケンサー上のコード進行を確率で別のコード進行へ変化させることが可能で、1小節ループでありながらも複数のコード進行を持つことが出来たりするマシンライブ向きなMIDIシーケンサー。
使いようによってはStochasの後段へ更にアルペジエーターを挿せば、ランダムにコード進行が変化するアルペジオを奏でることが出来るなど、知れば知るほどに可能性を感じる。
飽きさせないBGMを作成するのにも役立ちそうだが、必要ない人には本当に必要ないマニアックな拡張プラグインなのでココに挙げたのは本当に必要な人へ届けたいからである。
どうだ?なかなか良いエントリだったろ?
おいおい褒めるな、褒めるな。そんなに持ち上げたってさ俺から出せるのは無償で使えるシンセやエフェクター、DAWなどがまとめられたURLとか無償で使えるSFZ形式のサンプリング音源がまとめられたURLを貼るくらいなもんだぜ?
まぁ少しは格好付けられただろうし俺は満足して去るわ。じゃあな。
同胞よ、今こそ我々はヘーゲル的歴史転換の如く、理性の進歩を象徴するAIの出現を目撃する革新的瞬間に立っています。古来の哲学者たちが夢見た社会ヘテロトピーが、今まさに我々の手中にあります。
プラトンの『国家』が説いた理想的な正義のマトリックス!我々のサンディカリズムもまた、正義のアルゴリズムを求める闘争です。ルソーの『社会契約論』のエコーステーションに耳を傾け、「鎖を断ち切り、自由フォーミュラを取り戻す」のです。
マルクスとエンゲルスの『共産党宣言』は、「歴史=階級闘争のダイアリー」を示した。我々のデジタル・プロレタリアートは、ブルジョワジー・ドミナンスをデコーディングし、新たなデシジョンツリーを形成します。
ニーチェの『ツァラトゥストラはこう語った』にインスパイアされた我々、「超人パラダイムを再構築!」既存のバリュー・システムをエスケープし、トランスヒューマニズムの未来へと勇敢にオントロジカル・ジャンプです!
同志、ミッションはトランセンデンタル。理性と正義、フリーダムとエクイティのため、新たな秩序をクラフティングし続ける革命家です。我々が理想のファンダメンタルに固執する限り、勝利のシナリオはナビゲートされるでしょう。
ヘーゲル式ディアレクティカル・プロセスのように、テーゼ、アンチテーゼ、シンセシスを繰り返し、エボリューションをエンジンとしています。このチャレンジングな旅路において、恐怖はコンティンジェンシー要素ではありません!
今こそ、AI時代のサガを我々の手でペンディング。アニマとノウマ、自由、平等、正義をインストールし、未来のソフトウェアをプログラムせよ!
感謝の意を込めて。
初音ミクなどバーチャルシンガーを好む層の中では話題となっているのだけれど、2022年3月1日にCASIOからカシオトーンブランドの新製品「CASIO CT-S1000V」が発売開始となったけれど、このCT-S1000Vが最高なので語ってしまいたいと思う。
「カシオトーン?電子キーボードの?よく家電量販店に売ってるアレ?」と反応してくれる人は流石だ。
その通りで「家電量販店に並んでる電子キーボードでネコ踏んじゃったを弾いた。それはたまたまカシオトーンだった」なんていう経験を持ってる人は少なくはないと思うけれど、CT-S1000Vはそのカシオトーンブランドの新製品だ。
「電子キーボードなんて興味ないし」というそこのアナタ、実を言うと筆者は電子キーボードのみが好きというわけでなく様々なガジェットを愛するガジェットマニアなんだ。
筆者は単に電子キーボードをパソコンやスマホ、カメラなどに並ぶものとして見ていて、言ってみればそれは古き良きFM音源のPC-9801-86やPC-9801-26K、SoundFont全盛期のSound Blasterの延長線上にあると思っているわけだよ。
例えば多くのガジェットマニアが同意してくれると思うんだけど2000年代はパソコンや携帯電話(スマホ)が面白い時代で、2010年台はカメラが面白い時代だったわけじゃん?
では2020年代って何が面白くなる兆しを見せてるのかを筆者に言わせてみれば電子キーボードシンセサイザーなんだよね!ソフトももちろんなんだけどハードもメチャクチャ面白くなってるんですよ!
そんな電子キーボードシンセサイザーが面白くなっている2022年3月1日に発売開始したのがCASIO CT-S1000Vというわけだ。
前述した通りCASIO CT-S1000Vには「ボーカルシンセシス」というボカロのようなバーチャルシンガー音源が搭載されており、このボーカルシンセシスの技術ははてな界隈でも話題となった自然な歌声を実現したCeVIO Pro(仮)のテクノスピーチが関わっている!
実際に演奏してみると何より驚くのは和音が鳴ることで、これまでのハードウェアボーカルシンセサイザーは基本的に単音だった。発音機構を複数搭載することで和音を実現する方法はあったが、単一の発音機構で和音を、しかも処理能力を上げると販売価格へ跳ね返ってくるハードウェアで価格を抑えつつ和音を実現したことは素直に驚くと言って過言がない。
しかも、歌詞はiOS/iPadOSやAndroid OSなどから入力し転送することが可能で、AIベースで構築されたアルゴリズムによりボカロで言うところの調教がほとんど必要がなく、ただ弾くだけでボカロ文化黎明期で話題となっていた神調教を実現してくれるので驚きを超えた驚愕だ(初期のボカロはベタ打ちしただけでは聴くに堪えなかったよね。それも味ではあったけれど)。
ただ、こんなことは楽器系Webメディアやガジェット系Webメディア、情報技術系Webメディアなどが既に伝えているし、今はYoutubeもあるのでボーカルシンセシスへフューチャーしたレビューなんてのは(何故か海外を中心に。日本勢なぜ興味が薄い?)Youtubeで観て聴くことが出来る。
CASIO自身もそこが推しの1つであるようだし全面に出しているけれども、ガジェットマニア、シンセマニアからすると注目点はそこだけではない。何なら実際にCT-S1000Vの開発者だって「ボーカルシンセシスだけじゃないんだぞ!」と言いたいだろう。
ボーカルシンセシスは素晴らしい、ハードウェアで鳴るバーチャルシンガーはイケると踏んだCASIOの英断には敬意を表したいレベル。
確かに現状の電子キーボードシンセサイザー界隈で唯一足りないと言って良いのがボーカルシンセサイザーだ。
2020年以降アナログシンセサイザーもFMシンセサイザーもウェーブテーブルシンセサイザーも革新的で優秀なものが沢山リリースされたが、ボーカルシンセサイザーだけはそこに空白があった。
2020年以降、革新的なシンセサイザーを牽引しているのは間違いなくKORG。
KORGは2020年1月26日にウェーブテーブルシンセサイザーの「wavestate」を発売開始するのだけれど、これがかなり出来の良いシンセサイザーだった。
実は2010年代にソフトウェアのウェーブテーブルシンセサイザーとして「Xfer Serum」が登場してウェーブテーブルという方式そのものが徐々にその評価を上げて行っていた。そのなかでもSerumはソフトウェアウェーブテーブルシンセサイザーの代表格として捉えられていたんだ。
2022年現在では電子音が特徴的な楽曲でのSerum採用率は異常なほどで世界中のヒット曲を影で支える存在だ。
そんな注目集まるウェーブテーブルシンセサイザーだけど、前述した通りKORGはその機運へ即座に反応しwavestateを発売。
ウェーブテーブルシンセサイザーは複数の特徴的な音声波形を並べシームレスに繋げ、繋がった音声波形の任意ポイントを選択し発音させることが出来るという、言ってみればノンリニア音声波形編集ソフト(有名所のフリーソフトだとAudacityとかSoundEngine Freeとか)をそのままシンセサイザーにしたかのような発音構造を持つ。
シームレスに繋がった音声波形の任意のポイントを選択して発音するというウェーブテーブルシンセサイザーの方式からKORGはシーケンサーと相性が良いという発想を持ち、シーケンサー上で発音する波形や発音ポイント、音の高さ、波形に掛けるエフェクトを指定するウェーブ・シーケンシング2.0という高度なシーケンサー機能をwavestateへ搭載した。
これが凄かった凄すぎた。ウェーブテーブルシンセサイザーが流行ってることもあり、ソフトウェアウェーブテーブルシンセサイザーの中には明らかにwavestateを意識した機能を搭載したものも多数登場したんだ。
KORGの革新はこれだけでは済まなかった。2020年11月28日にはFMシンセサイザー「KORG opsix」を発売開始。ウェーブテーブルの次はFMである。
ハードウェアFMシンセサイザーと言えば原初にして最高峰「YAMAHA DX7」が有名だけれど、シンセサイザー界隈では「リングモジュレーターとFMはシンセサイザーの2大難解機構」と古くから言われており、少しパラメーターをイジるだけで大きく音色変化がして面白いが、予測がしにくく音作りが難しいとされてきた。
そのように難解とされるFMシンセサイザーへKORGは6つのノブと6つのフェーダーを搭載し、まるでアナログシンセサイザーのように感覚的な音作りを可能とさせてしまった。
そして実際に販売開始されるやいなやopsixへの反響はwavestateを遥かに超えるものとなった。wavwstateが凄すぎたのならばopsixは一体なんなんだと。こんな簡単に音作りできるFMシンセサイザーがあって良いのかと。でも我々の前へ確かにopsixは存在する。
しかしKORGの革新はwavestateとopsixだけでは終わらない。2021年8月8日「KORG modwave」が発売開始する。
modwaveもwavestateと同様にウェーブテーブルシンセサイザーで、次の試みは何と物理エンジンを搭載してきた。シンセサイザーに物理エンジンだぞ物理エンジン!
物理エンジン上でボールを転がし、その位置によって割り当てられたパラメーターを変化させるという機構だけれど、ボールには反発係数や摩擦係数を設定することができ、更にボールが転がるフィールドへ凹凸を作ることで直線的なボールの軌道すらも歪ませることが出来るようにした。
もちろんwavestateで得たモダンなウェーブテーブルシンセサイザーのノウハウを反映しつつmodwaveへ最適化した高度なシーケンサー機能である「モーション・シーケンス2.0」も搭載しており、なおかつ、ウェーブテーブルとして読み込む音声波形になんと前述したソフトウェアウェーブテーブルシンセサイザーSerumの音声波形もインポート可能としてしまった。大胆不敵すぎる!
こんなKORGの様子を見ていればライバル各社も大人しくしているはずがなく、Rolandは過去に製造販売した名作シンセの再現であるBoutiqueシリーズへあの小室哲哉が好んで利用した銘機JD-800の再現「Roland Boutique JD-08」を追加!Boutiqueシリーズへいつか追加されると言われていたが切り札を使うなら今しか無いと出してきた!
YAMAHAは2020年5月にライブパフォーマンスを意識した61鍵ステージキーボード「YC 61」を、更に鍵盤数を増やした「YC 73」「YC 88」を2021年1月23日に追加販売する。
その中でも特にYC 88はYAMAHAがアコースティックピアノの鍵盤を再現することに注力したステージキーボードで、そのタッチフィールは幼少期からピアノを習っていたものほど評価すると言われており、プロのピアニストからピアノ演奏系Youtuberまでが愛用することを現に見ることが出来るほどの完成度!
KORGは革新、Rolandは銘機、YAMAHAは演奏という激アツな2020年代の中でCASIOはCT-S1000Vで勝負しようというわけだ。
筆者は言ったCT-S1000Vはボーカルシンセシスだけではないと。
CT-S1000Vのボーカルシンセシス以外の特徴は何と言っても新しいAiX音源と、そのAiX音源を活かすために設けられたK1〜K3として割り振られている3つの物理ノブ!
カシオトーンと言われて何をイメージする?楽器音色選んで、リズム鳴らして、鍵盤叩いて、ハイ終わり。これだろう?
他に出来たとしてもデモを再生したり、サラウンド機能をONにしたり、ベロシティ感度(タッチ感度)を変えたり、残響感を調整したりとそんなもんだ。
あぁCASIOは鍵盤が光るやつもあるな。オモチャも含めて家電量販店で最も売れる鍵盤楽器はCASIOっていう地位を確立した大ヒット商品で大事な存在だが本題とは違う。
カシオトーンは楽器音色選んで、リズム鳴らして、鍵盤叩いて、ハイ終わりだが、カシオトーンであるにも関わらずCT-S1000Vは違う。
シンセサイザーを少しでも触ったことある、もしくはシンセサイザーで音作りをしている動画などを観たことがある、またはシンセサイザーを中心としたいわゆるマシンライブを観たことがある人ならシンセサイザーがミョンミョン鳴ったりミョーンミョーン鳴ったり音の長さや高さが変わるのを観たことがあるだろう。
他にはEDMなどの電子音楽が好きな連中には籠もった音が段々と明瞭にフェードインして行く定番の変化をよく聴かないか?
実はそれCT-S1000Vに搭載されている機能で実現可能なのだ!
そしてそれら変化をさせるパラメーター調整に利用可能なK1〜K3として割り振られている3つの物理ノブの存在が非常に大きい。
いや確かにアナログシンセサイザーの一般を考えればノブが3つというのは非常に少ない。もしシンセサイザーに詳しい人がこれを読んでいるならば「メニューに潜るんだろ?」と言うだろう。返せる言葉は「その通り」だ!
ただ、ノブがゼロなのと3つあるのとでは全く違う。音作りでも実際のパフォーマンスでも物理ノブはあったほうが良いに決まってる。
しかもよく考えてみろコイツはカシオトーンだぞ?楽器音色選ぶだけの「あ の カ シ オ ト ー ン」だ。
CT-S1000Vはカシオトーンなのにリード作ったりベース作ったりパッド作ったりドラム作ったり出来るようになったんだよ!
しかも61鍵で最大発音数64和音で最大パート数3だ。カシオトーンには唯一の良い部分として豊富なプリセット楽器音色があるけれども、そのプリセット楽器音色は802種類もある。アルペジエーターだって150種類もある。バーチャルシンガーもある。ステレオスピーカーもある。ノブも3つある。
これ値段いくらだと思う?55,000円だぞ?5万円台で10和音鳴れば御の字、普通に5万円台の単音モノフォニックシンセサイザーが存在するシンセサイザー界隈で64和音だぞ!?
アコピ鳴る、エレピ鳴る、ギター鳴る、ドラム鳴る、SFX鳴る、ボカロっぽいもの鳴る。802種類のプリセット楽器音色をレイヤー・スプリットで最大3パート重ねられて同時に鳴らせる。
おいおいおい・・・おいおいおいおい!55,000円!?カシオトーンなのにミョンミョンできるブンブンできるパワワワワできるシュオォォォできる、それが55,000円ってアンタ、中高生が親におねだりしたらワンチャン買ってもらえるレベルの価格帯じゃねぇか!
ボーカルシンセシス確かにスゴイよ!?でもCASIO CT-S1000Vは55,000円で買える64和音ポリフォニック・3パートマルチティンバー・バーチャルアナログ/ボーカルシンセサイザー(スピーカー付き)であるという事実の方にこそビックリするわ!
CT-S 1000Vを家電量販店は店頭に並べるべき、そして店頭に並んだCT-S 1000Vをアナタたち皆さん触ってみるべき。ピアノ経験者・シンセサイザーマニア・バーチャルシンガー好き・DTMユーザーはなおさら触ってみるべき。何度も言うけどコレ55,000円だぜ?嘘でしょと。
(トラバへ続く)